「VR ZONE SHINJUKUへの布石」大掛かりな実験で見えたVR共感力とは【後編】

筆者:古城 芳明

株式会社バンダイナムコエンターテインメントはアーケードゲームやコンシューマーゲームなどのゲームソフトの制作及び販売を行っている企業です。前回はお台場に展開していたVRエンターテインメント施設「VR ZONE」についてや、VR事業に関するお話を伺いました。
 
後編となる今回は、2017年7月にオープンした「VR ZONE SHINJUKU」に関するお話を、コヤ所長こと小山順一朗様と、タミヤ室長こと田宮幸春様に伺いました。

 
前編はこちらからどうぞ!
「VR ZONE SHINJUKUへの布石」大掛かりな実験で見えたVR共感力とは【前編】
 
LIFE STYLE古城(以下古城):
それでは次に「VR ZONE SHINJUKU」についてお聞かせください。
 
バンダイナムコエンターテインメント 小山様(以下小山):
はい、「VR ZONE SHINJUKU」はお台場にオープンしていた「VR ZONE」のアクティビティやノウハウを受け継いで、2017年7月に新宿で生まれたVRエンターテインメント施設です。お台場の「VR ZONE」には、ガジェットに興味があるというよりも遊園地に来る感覚の人たちも多く来場していたので、今度はきっちりと舵を切り替えて、そういった人たちがVRというものをエンターテインメントとしてストレートに味わえる大型の施設として作りました。コンセプトとしては「みんなで取り乱そう」に定め、場所も含めて一番最適なところとして新宿を選びました。
 
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古城:
新しい事業を開始するのと一緒で、ちゃんと指針やターゲット層を決めて特化したコンテンツ制作をする必要があるということが大事なんだなとわかります。今後御社が取り組みたいと考えているVRのアクティビティをお聞かせいただけますか?
 
バンダイナムコエンターテインメント 田宮様(以下田宮):
多人数でVR空間内を歩き回れるフリーロームは、まだ自分たちとしてはやってないです。今日本でプレイできるものはみんな外国から買ってきているものなので、日本の企業としてもやってないですよね。弊社としては「攻殻機動隊ARISE」のフリーロームVRを開発中です。
 
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小山:
日本の企業としてフリーローム、アクティブVRに取り組むことには大きな可能性があると思っています。
 
古城:
確かにVR空間内を複数人で動き回れるというのは体験の幅が広がりますね。同じ空間の中でVRゴーグルをつけて、お互いにどこにいるのかがわかるということですよね。ぶつかったりはしないのでしょうか?
 
小山:
攻殻機動隊のアクティビティは原作に忠実に、光学迷彩で透明になることができるようにしています。透明になっている間にぶつかったりして怪我をしないように気をつけています 。
 
古城:
先ほどお台場の「VR ZONE」のノウハウを受け継いだとおっしゃっていましたが、「VR ZONE SHINJUKU」では特にどこをこだわったかをお伺いできますか?
 
小山:
中身は結構振り切って作っているので、とにかく人に取り乱してもらうにはどうすればいいんだろうということだけ考えていました。ここまでやっていいのかな、というところまで作り込んでいて。例えば血の表現だったりとか、残虐な表現であったりとか、いわゆる家庭用ゲームだったら規制のある表現。そういったところに関しては結構振り切ってます。
 
そうやって振り切って作っているんですけど、製品として完成した感じで出してないんですよね。例えば家庭用ゲームだったらチュートリアルがあって、遊び方の手順を踏まえて、最後ある程度の確率でゴールできるとか、ある程度の確率でこうなるとかって細かく設計して作ります。VRアクティビティはその部分が荒削りです。チュートリアルも現場で説明して、こういう風なスキーで山を丸々作ったので、どう滑ってもいいけど落ちたら死んじゃうよって伝えることがチュートリアルです。そういう生々しいやりとりが、すごく効くなっていう風にわかって。荒削りな部分が研究そのものですよね。
 
田宮:
コンテンツの作り方もそうなんですが、お台場の頃の安全対策も、VRゴーグルを初めてかぶった方が本当にその気になったらどういう行動をとるのかって全くわからない状態で始まっていたので、想定外の行動がいくつも見受けられました。「極限度胸試し高所恐怖SHOW」でいうと、戻ってきた後に「落ちてみてもいいですか」と言う方がいらっしゃって、両足飛ぶくらいでぴょんと落ちたりするのかななんて思っていたら、バンジージャンプするみたいに頭からボンってマットに飛び込んで。
 
小山:
これ板ですからねって。
 
田宮:
スキーロデオでも、開発している時にはそんな反応が全くなかったので大丈夫だと思ってたんですが、岩にぶつかった瞬間に手を離されて、後ろに転ぶように避けた方がいらっしゃいました。
 
古城:
完全に現実のものと錯覚してますね。
 
田宮:
逃げようとして、スピードに対して抵抗しようとして後ろ向きに体が逃げる反応になってると思うんです。極限状態で何かをさせると、人間てこういう行動をしちゃうんだなと思いました。
 
小山:
反射的に行動してしまうんですよね。
 
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田宮:
お台場では毎日のようにケアしながら運用を変えていましたが、しっかり注意すべきところと、ここはむしろ大丈夫と言う部分のケーススタディがだいぶ見えてきたので、割と少しずつ切り分けできるようになっていきました。新宿のアクティビティを作るときに、そこは大丈夫という判断だったりとか、そこは人がついていないとダメだというところも含めて、いろいろ判断がしやすくなっているのは間違いないです。
 
古城:
「極限度胸試し高所恐怖SHOW」の事例など、予想外すぎますね。
 
田宮:
お台場オープンの最初の4月中は忙しかったですね。あれが起きたこれが起きたどうするって。じゃあオペレーションの方法を変えようって毎日閉店後にみんなで話して、これはこういう風に案内しないとダメだよねとか。この運営は変えようとか。いろんなことをやってましたね。
 
古城:
後ろに飛ばれたのは、実際に同じシチュエーションになったら同じ行動をするという現実的な反応ということですよね。
 
小山:
そうです無条件に体が動いちゃったから。
 
田宮:
その点、今回VR ZONE SHINJUKUをオープンして予想外だなと言う出来事はあまりないです。あるとすれば、マリオカートで女性があんなにリアクションしてくれるとは思ってなかったです。あそこまで反応いいのはちょっと想像してなかったです。
 
古城:
予想以上に取り乱してらっしゃったんですね。
 
小山:
話を聞くとやっぱりVRを初めてやった方が多かったです。そういう意味では自分たちはVRを何度も体験しているので、初めて体験する人の目線に立って作ることはうまくいかないことも多々ありました。
 
田宮:
すごくいい景色の空を自転車で飛べるという「ハネチャリ」というアクティビティがありまして、実は最初は度胸試しというテーマではなくて、例えば旅行に行ったらシーカヤックでどこか巡るというイメージで空を飛ぶところに注目していました。ただ、いざ飛べる状態でコースもできて、確かに飛べる、景色もいい感じでできたので気持ちいい、でも何か物足りないんですよ。
 
小山:
空飛んでても面白くないから何かもっと狭い道作ろうかとか、風吹かそうかという案も出たんですが、そうではないなと。
 
田宮:
ギミックに走り出したくなる気持ちがだいぶプロジェクトからから出てきた時に小山の方から、この飛行機は落ちないと思ってるから全然スリルがない、体験がリッチにならないんだという意見が出てきまして。最初にこの飛行機落ちるかもと思わせようという案が出ました。そこでいきなり崖の高いところでスタートさせて、最初に落下させるということを際立たせてやったんですね。そうすると皆さん落ちないように必死にペダルを漕ぐんです。その作業を入れると、そのあとずっと怖がっていただけるんですね。
 

ハネチャリPV
 
田宮:
そうすると気持ちよく飛べてってなるんですけど、気持ちよさの中にちょっと不安があるんですよね。コースは最初のものと全く一緒なんですけど、体験のリッチさがもう格段に上がりました。この経験をもとに、どのコンテンツも最初に、この世界が本物かもって思わせる魔法をかけることに苦心しています。マリオカートもスタート地点が台になっていまして、スタートで何回かガタンガタンって落ちることで自重とカートの重さを実感してもらって、これはちゃんと物理法則で動いてるものなんだと思ってもらったり。そのあたりはお台場でだいぶわかっていたので、システムの設計に少しずつ組み入れたりしています。
 
古城:
今あるアクティビティを選ばれた際のそれぞれのテーマってございますか?
 
小山:
IPに関しては、多くの人たちが好きでいてくれるというのが大事だなと思いますね。VR ZONEとはまた別の場所でやった『ドラえもんVR「どこでもドア」』は本当に凄かったですよね。
 
田宮:
『ドラえもんVR「どこでもドア」』の時は女性の方が本当に多かったですね。あとは、アジア系の旅行客の方もたくさんいらっしゃって。どうやって予約取ってきたんだろうって思うくらい、一枠ほとんど海外の方だった回もあって。
 
小山:
あれを見ていると、やっぱり日本が持っているIPの強さ、愛してくれるところが大事だなと思います。なので、マリオカートも男女含めて大好きですし、エヴァンゲリオンだってそうですよね。
 
田宮:
エヴァンゲリオンは女性にしっかり響いているんだなというのを、今回自分達でやって改めて思いましたね。彼氏がエヴァンゲリオンが好きだからついてきてるのかなと思いきや、嬉々としながら「私がアスカのに乗るの!」って言う方もいて、本当に好きな人たちなんだなと。
 
古城:
確かにどれもこれも広く愛されている作品ばかりですね。それでは最後に、VR ZONE SHINJUKUを運営する上で大切にされていることを教えてください。
 
小山:
やっぱり、取り乱さないものと、取り乱すものとで人気がはっきりしたっていうことがお台場でわかったんですね。「さあ、取り乱せ。」と書いてあって、VRを使ったら本当にこんな風になるの?という疑いを持ってきた人たちが「ぎゃー」「うおー」って取り乱すという仕組みになってるじゃないですか。新宿がお台場と違う部分は、みんなで取り乱せるというテーマにしようねということでした。皆でできる内容にするということと、もともと有名なアニメやゲームのアクティビティでも、取り乱すテーマに即したような内容に抽出して一個に伝えるということに心を砕きました。
 
表現の新しい切り口として、面白いVRでいろいろとできるんですよという伝え方にも価値があるのかもしれませんが、私たちはどういう体験ができるのかを一個のメッセージにすることを大事にしています。何が一番の価値なのかをストレートに、そして誰に伝えるのかということをはっきりさせています。
 
田宮:
やっぱりお客様にとってこの施設はなんなのかと考えた時に、あの珍しいVRの機器が体験できる場所、にはしたくなかったんです。それだと一回で終わる提供価値になってしまうので。そうではなくて、ここに友達と一緒に来ると、今までの取り繕った自分たちじゃなくて、我を忘れてはめを外せて「ぎゃー」って言える。終わった後にもっと仲良くなってるかもねという、そういう場所としてお客様に価値を提供したかったんです。なので今回は取り乱させるために何があるべきかを考えて、VRという手段にはこだわらずに、巨大風船爆発のルームを作ったり、7mの垂直落下の滑り台作ったりとか、もはやVRじゃないじゃんってつっこまれながら、いやこれでいいんですっていうコンテンツを揃えました。
 

ー小山様、田宮様 貴重なお話を誠にありがとうございましたー
 
 

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