【STORY × クロスデバイス】「社会貢献となるサービス、ソリューションを」

筆者: 編集部

株式会社クロスデバイスは1998年設立の広告制作会社です。6年前にインターネットでのパノラマ動画配信をスタートし、現在はVRライブ配信や宇宙プロジェクトなど、実写VRという分野の中で幅広くビジネス展開されています。今回は、国内の実写系VRの第一人者ともいえる株式会社クロスデバイスの取り組みや今後のビジョンについて、代表取締役社長 早川達典様にお話を伺いました。

━━まず御社の事業内容についてお聞かせいただけますか?

クロスデバイス 早川様(以下早川):
弊社のもともと広告制作会社で、今年でちょうど20周年になります。組織体制としては広告制作事業部とVR事業部の二つに分かれていて、VR事業部は、実写系VRの企画・撮影から配信までをおこなっています。ゲームやCG分野でなく、実写系のVRにこだわって事業展開をしています。

最近では新たにVRを使った広告に取り組んでいて、制作から配信までワンストップで提供しているのがクロスデバイスの特徴ですね。

━━当初は広告制作をされていた貴社が、VR事業を始めたきっかけはなんだったのでしょうか?

早川:
VR事業に関しては、6年前にパノラマ動画という形で撮影をおこない、インターネットでの配信をスタートしました。当時の撮影には、当時主に測量系の業界で使用されていた「ladybug」というカメラを使っていました。

(画像引用元:FLIR

「ladybug」はGoogleストリートビューで、Google社が一番最初に、初期の頃に車の上に付けていたカメラです。カナダの会社が開発した五角柱の形状が特徴的で、接続したPC側で自動スティッチも可能なパノラマ動画収録用のカメラです。セキュリティや測量などの特殊用途でも使われていました。

当時は、このカメラで作成した映像のインターネットでの配信や、広告やプロモーション分野での使用事例はほとんどなく、本社のある浜松市で、測量会社さんや色々な業種の方が交流する場があり、この360度動画は、広告やプロモーションで使えるのではないかと話したのがきっかけですね。

━━前例がないところからのスタートだったのですね。

早川:
前例はありませんでした。しかし、そのカメラで撮った映像を見たときに、これは間違いなく広告分野での展開が可能だなと思ったんです。それで本格的に取り組みを始めました。

当時のVRはどちらかというと、ゲームやCGで作った仮想現実の世界を指していまして、今でいう実写VRの動画は、「パノラマ動画」とか「360度動画」という言われ方をしていましたね。弊社も、当時は、「idoga(イドーガ)」というサービス名称で360度パノラマ動画のサービスを始めました。動画とインターネットを掛け合わせたサービスでしたが、当時はまだネットで配信するプレーヤーがなかったので、まずは、PC上で動く360度動画で、しかもネット配信ができるプレーヤーの開発から着手しました。

初めて配信した360度動画は、静岡県の新聞社主催のマラソン大会のコース紹介でした。当時、実写系VR動画の配信をおこなっている企業はほとんどなく、実写系VR動画の制作から配信まで可能な企業としては先駆けだったと自負しています。

そこから歌手のMISIAさんなど、徐々にメジャーなナショナルクライアント様の動画制作や配信までを手がけるようになりました。もとが広告制作会社であった弊社は、アプリ制作やWeb制作は得意としていましたので、そういった部分と繋げていきながら、プロモーション効果を上げ実績を積み重ねてきました。

━━先ほど、基本的に実写ベースのVR動画を制作されているというお話がありましたが、実写VR動画を撮影する際のこだわりを教えていただけますか?

早川:
私たちは、お客様には、高品質なVR映像を提供していきたいと考えています。なので企画内容と映像に対する品質は強いこだわりを持って取り組んでいます。

弊社では、「GoPro」を昔からあまり使っていません。他の方々が「簡単に使えていいよ」という時代に、あえて反GoProで実写VRの撮影をしています。当初から全周4K映像で高ビットレートの映像を綺麗に再生したいというニーズにお応えしようとしています。最近では、全周8K以上の映像制作にも取り組んでいます。その動画は用途に合わせ、例えばデバイスに合わせてダウンコンバートしたり、2Kや4Kというレベルで見せてます。ただ、デバイスに関して今後はもっと高性能なものが出てくると思っています。8Kの映像を見ることのできるデバイスが出たら、これまで意図的にレベルを下げていた8Kの映像を、レベルを下げずに提供することができるため、すごく綺麗な映像でVRを体験していただけると思うんです。その時を楽しみにしながら、デバイスの許容量を超えるVR映像を撮影しています。

あとは現場で事故を起こさないよう、安全第一で撮影をおこなっていますね。

━━世の中がVRに注目してきたことで、お問い合わせが増えていると思いますが、どのような場所でのニーズが多いのでしょうか?

早川:
VRコンテンツを制作するにあたって、上流部分から、企画、制作、撮影、配信という4つの行程に分けてご説明します。まず、撮影においては、VR元年と呼ばれた昨年の2016年はエンターテインメント系の案件が非常に多かったです。音楽のライブやプロモーションビデオの撮影、あとはプロモーションが絡むエンタメ系のプロモーション要素が強いコンテンツとか、VR動画のドラマといったものです。エンタメ系に加え、昨年ぐらいから地方創生を目的とした、地方観光でVRを活用したいというニーズが少しずつ増えてきています。今年の初めには浜松市から委託を受けて、今年の大河ドラマ「おんな城主 直虎」の観光VR映像を制作しています。このようにPRを目的とした行政や自治体からの要望が多くなってきました。

配信やシステム開発、プラットフォーム、ビューワーの分野では、高画質配信のニーズが高まってきてると捉えています。現在NTTグループさんといろいろと取り組んでいますが、進行過程でそのことを強く感じます。

━━NTTグループさんのとの取り組みは、具体的にどのようなものなのですか?

早川:
NTTドコモさんが提供するサービスで、弊社と共同開発したキオスク型VRサービスの「みんなのVR」というソリューションがあるのですが、その「みんなのVR」上では、タブレットと連携してヘッドセットが連動して動くようになっています。ヘッドマウントディスプレイがミラーリングされ、タブレットで操作ができVR体験をすることができます。現在、全国のドコモの皆様が、「みんなのVR」を広めようと自治体や商業施設に提案を始めているところです。

この原形になったのは、昨年、沖縄で「みんなのVR」の実証実験です。実際触れてみて、例えばマリンスポーツにどれだけ申し込みが入ったかとか、ホテルのカウンターにおいて、そこのホテルが主催しているアクティビティー、例えばイルカツアーとか、クジラを見に行くツアーで、そこにどれだけの申し込みが入ったのかという観点から、費用対効果を測る実験をしました。そこでの結果に手応えを感じたことが今に繋がっています。

今までVRは体験によって人を楽しませるために使われていましたが、費用対効果やVRの効果測定をおこなうことで、VR体験が具体的にどういう結果をもたらすのかがわかります。そしてその結果を見れば、進むべき方向がわかります。先ほどお話しした「直虎VR」も、毎月の再生数のログを採り、市に報告しています。費用対効果を正確に知る上で必要になってくるデータだと思います。

━━先ほど地方創生のお話がありましたが、お客様や問い合わせは、やはり自治体の分野が多いのですか?

早川:
2、3年前は、広告代理店さんからのご相談が多かったんです。新しいサービスやソリューションを求めてVRの導入を考える広告代理店さんから、いろんな新しい商品プロモーションの一つの手段としてVRを使いたいというお問い合わせをいただいていました。

最近は自治体さんや動画配信などを昔から積極的にやっていらっしゃるエンドユーザーさんですね。テレビ局関連企業さまやネット配信をされている業者様からのお問い合わせがあり、そういった映像制作を弊社と一緒にしたいというお問い合わせも多くいただいています。またこれだけVRが認知されてきているので、体験型イベントや集客ツールのネタとして、普通にホームページを作成するような感覚でご相談をいただくこともあり、最近では、アーケード型VRや課金できるVRサービスなどのご相談を受けるケースも増えてきていますね。

━━例えばWOWOWさんでは、ライブ配信の需要があると思うのですが、ライブ配信の定期的な依頼はあるのですか?

早川:
そうですね。最近は音楽イベント、スポーツイベントのVRライブ配信のご相談も増えてきております。

以前、WOWOWさんでテニスのVRライブ配信をおこないましたが、WOWOWさんの本放送と同時にVR配信を視聴制限をかけずにおこないました。一般の家庭に向けの無制限配信、ニコファーレのイベント会場に向けての同時配信と、とにかく大規模な案件で、2年ほど経ちますが、いまだにあれ以上のVRライブ配信案件は無いですね。弊社としても非常に知見がたまり、おかげさまでそういう形での音楽やスポーツイベントのライブ配信の依頼は、増えてきましたね。

昨年はMTVさんが主催する音楽イベント「Video Music Awards Japan」のVRライブ配信を放送と同時にやらせていただきました。規模が大きいイベントに限らず、小さなイベントでちょっとしたものをライブ配信できないかというお問い合わせもいただいています。

━━例えばプロのスポーツのリーグは、親和性ありそうですね。

早川:
そうですね。先日、360チャンネルさんがJリーグの試合を配信されていましたが、今後はそういうケースも増えてくると思います。

ただ、VRライブ配信の現状の課題としては、マネタイズがまだしっかり確立されていないということが挙げられます。通常の動画配信の帯域だけでも4倍かかるので、VRの映像配信コスト考えると通常の数倍のコストがかかってしまいます。主催者様側がそれに対してペイラインが見えづらいので、思い切って踏み込めないジレンマを感じているのと、あとは音楽イベントで事務所さんとかレーベルさんがVRライブをやりたいけど、どうマネタイズしていいか分からないとお困りの状態かなあというのは思いますね。積極的にご相談いただければ、具体的な解決策もご提示できるんですけど、業界によっては縦割りだったりするので、ある所まではすっと行くんですけど、そこから先は話が止まってしまうこともあります。

弊社も含めた今のVR業界は、やりたいけど実現しない、なかなか形にならないというケースも多いのではと感じています。特にそのライブとか割と難易度が高くなってくるものは、ふたを開けてみるとコストの部分で合わなかったり、技術的にリスクの担保が取り切れずに断念したり。そういう意味では、WOWOWさんでテニスのVRライブ配信は、かなりチャレンジングな取り組みだったと思います。

━━VRは普及している途中の段階ですから、課題も多いですね。

早川:
そうですね。企画的に盛り上がって、盛り下がっての繰り返しなんです。実は弊社は宇宙プロジェクトを立ち上げているのですが、準備が間に合わない。他にも、ある所とライブ中継をやるというお話や、国の機関からもお問い合わせをいただきますが、いざ実行するという段階でタイミングが合わなかったり、足並みがそろわない状態が続いています。

宇宙プロジェクトに関しても、ようやく何となく形はでき始めてきという状態です。このプロジェクロのゴールは、やはり子どもに夢を与えることだと思います。また、現在は日本の科学者離れというか、数学離れ、物理離れが顕著だと思います。少子化で数学離れで理工系大学に行く人が少ないんですね。なのでそういう意味でも、科学に興味を持ってもらえるような方向性で訴えかけていこうという計画でいますけど。そういう意味で、国の機関のバックアップを受けてやっていけたらなと思います。

━━案件を受託される際、今のお話にもあったようにリスクも多いと思うのですが、マネタイズのポイントとしてどのような部分で価格帯の判断されていますか?

早川:
弊社は広告ビジネスも展開しているので、やはり採算とか利益、費用対効果を考えます。例えばライブ配信ですと、「ビッグネームでライブ配信をしたいんだけどお金がない、予算がない、バーターでやってくれるならうちのメディアで名前を出します」というご相談もあります。しかし、そういった案件は実情をお話するようにしています。やはりリスクを伴うし、人数も準備もかけなきゃいけないので、ご依頼に対してちゃんとした取り組みができ、なおかつ必要最低限の対価がないと取り組み自体も中途半端になってしまい、結果的にご迷惑をお掛けすることになってしまうと思いますので。

一度デモをやって欲しいというケースもたくさんご相談いただきますが、このケースに関してはリスクが少ないのでどんどん受けています。弊社でデモを用意して出向いています。受託するかどうかの判断はケース・バイ・ケースです。

大きなプロジェクトをお受けする時はそれなりのリスクヘッジを用意できる予算を計上できるかどうかが、一つの判断基準になると思います。しっかりマネタイズしていこうというよりは、しっかりとできる仕事かどうかで判断しています。ともあれ、いろいろな方々からお話を聞いていると、抱えてらっしゃる悩みは皆さん似ているなと感じます。

━━そういうお話が多いですよね。

早川:
日本の場合、VRのマーケットがあまりにも小さいと感じます。最近はハコスコさんのやられているコンテンツの有料化や、アーケードVRのような有料モデルがありますが、課金できるコンテンツは限られていると思います。また、日本は、それを利用する人の数があまりにも少ないので、スケールするためにはそれなりの時間が掛かると感じていますね。

VR業界では、アメリカのコンテンツを日本経由で最終的に中国で展開させるという方法もよく見られます。中国マーケットのほうがはるかにユーザーが多いので、日本のIPを海外、中国に向けて出すという流れもあるんですよね。それに比べ、作品性で見たとき、特に実写のVR単体としてのコンテンツは難しいかなと思います。

尺の長さも、例えば映画では1時間ですが、VRは長くても5分見たら見ている人がつらくなってくるので、作品として捉えた時に「尺」「体験者の疲労」「品質や満足度」といったバランスの取り方や、コンテンツの在り方というのは、実写をやってらっしゃる皆さんの悩みどころじゃないかと思います。

━━国内のみでの展開というのも、なかなか課題が多いですね。

早川:
そう強く感じます。弊社は現在、韓国のMooovrという会社と業務提携を結んでいますが、韓国のVRは韓国の企業が割と国の施策で補助金が入ったりしてるのでビジネス展開しやすい環境が整っています。コンテンツのクオリティーも非常に高く、VRの撮り方もよく分かっています。

社長自身がもともとK-POPアイドルで、エンターテインメント業界にパイプを持っているので、K-POPのコンテンツをたくさん作って展開しています。それは彼ら自身がIPを持っているから成り立つのです。また韓国は、VRコンテンツの著作権は通常の音楽配信とは違うという認識でいち早く動いているので、その点でも日本は遅れをとっていると感じます。

━━なんとか追いついていきたいところですね。最後に、実写系VRのパイオニアでいらっしゃる貴社が、VRの業界の市場が発展した時に目指しているポジションを聞かせていただけますか?

早川:
少し前にARが普及し始めて、どこもかしこもみんなARを取り入れていた時期がありましたね。それが今見直されてきています。そしてARもVRもMRも、全部ミックスされてきていると思います。業界としては全てが統合されていくのではないかと思いますし、市場規模で言うと1500億ドルと、映画産業よりも大きいといわれている市場なので、間違いなく全ての業界を巻き込んでいくと考えてます。

弊社も最初はVR事業ユニットっていう形で、広告制作事業部の中に置いて関連性を持たせながらやっていましたが、現在は、VR/AR/MR事業部として全てを合わせたものを展開していく部署を想定しています。この事業部は言ってみれば、最新のテクノロジーを使って人と人がコミュニケートするためのソリューションを提供する部隊だと思っていまして、チーム名もコミュニケーションテクノロジーユニット、「CTU」と呼んでいます。

VRは、新しいコミュニケーションツールとして発展をしていくんだろうと思っています。なので、弊社も同じ方向に向かっていきたい。仮想現実を通したあらゆる体験や業務の効率化など、さまざまな業界で進化していくと思います。弊社は、今後も主にBtoBをメインにメーカー発信的な企業間取引の中でVR、AR、MRを活用したさまざまなソリューションを提供していきたいなと思っています。

━早川様、貴重なお話を誠にありがとうございました━

株式会社クロスデバイス
〒431-3122 静岡県浜松市東区有玉南町1858 2F

Like@Wrap
Follow@Wrap