【STORY × ダブルエムエンタテインメント】「地方にいる者だけがわかる魅力を、VRで発信する」

筆者: 編集部

株式会社ダブルエムエンタテインメントはVRコンテンツの制作やVRアプリの開発、360度動画の撮影・制作などを行っている北海道の企業です。VRを誰でも簡単に楽しめ、最高のエンターテインメントとして提供することを目指しています。今回は同社がVR事業に携わる背景や、今後の業界についてなどのお話をダブルエムエンタテインメント三田健太様に伺いました。

ーー御社の事業内容について教えてください。

ダブルエムエンタテインメント三田様(以下三田):
観光や移住といった地方創生・地方活性化をメインのテーマにして、北海道のコンテンツ制作の企画や運用のサポートを主な事業として取り組んでいます。「データ解析付き店舗パノラマ」と、「賃貸不動産専用パッケージ」と、「自治体向け地方創生プラン」という3つのプランを提供しています。

「データ解析付き店舗内パノラマ」と「賃貸不動産専用パッケージ」というのは、360度のパノラマ写真にアクセス解析などをつけてサポートを出すパッケージです。「自治体向け地方創生プラン」は制作したコンテンツをスマホアプリやYouTubeで配信できる形で提供しています。

ーーこの3つのアプローチ方法に分けて展開されて、どのような業種のお客様が多いでしょうか?

三田:
やはり観光系が一番多いですね。他にも不動産やレジャーパーク、施設などからのお話もあります。

ーーそれは北海道内でのお問い合わせでしょうか?

三田:
そうですね。基本的に北海道の案件だけを取り扱っていますので。その代わり北海道でのVR企業としての一番は絶対に譲るつもりはありません。他にない弊社の強みとしては、数字を持って実際に効果を出している企業ということです。何件実績があるのかの数字が出せるもの、これだけのお客様がこういう風に増えたという効果測定が出せるもの、これが出せるか否かはその後のお客様の獲得に大きく関わってくるので大事にしています。

例えば弊社の事例で言うと、北海道の美唄市という小さな町の観光用VRアプリを2015年に作りましたて。美唄市の職員の方がそれを使ってPRをしたところ、翌年度の結果が前年度比1100%という数値が出ました。今まで20人しか来なかった外国人観光客が、VRを使ってPRをしたところ260人に増えたという数字を持っています。

ーー素晴らしいですね。そのアプリはどのようにして展開したのでしょうか?

三田:
タイで行われる「TIFF」という旅行博へ自治体職員が持っていって、タブレットで見せました。それから旅行のエージェント、旅行代理店の方々にアプリをダウンロードしてもらって、そこから現地の顧客に対してアプリで説明をしたんです。今までのパンフレット、カタログ、DVD、そういった形ではなく、VRで現地の様子をより魅力的に見せることで、ここに行ってみたいな、こういうところあるんだというところをマッチさせたというやり方です。

実はタイには焼き鳥を食べる文化があるんですが、美唄にもローカルグルメとして美唄焼き鳥というのがあります。この文化は間違いなくタイに合致すると踏んだので、360度で焼き場の雰囲気やお客さんが焼き鳥を食べているところを見せたんですね。それを見たタイの方は「なんだか自分たちの食事と似てるな。これは行ってみてもいいんじゃないかな。」というような流れができたのではないかと思います。

ーーこのコンテンツは公開されているのでしょうか?

三田:
美唄のVR観光体験アプリが無料公開されていまして、その中にコンテンツとして含まれています。今後はこのコンテンツもアプリ外に出していこうと思っています。アプリをダウンロードしないとコンテンツが見れないことはそれほどメリットではなくなってきたなという思いもありますし、360度コンテンツはYouTubeなど、場所が増えてきているので、アプリをダウンロードしなければならないというものではなくなってきています。アプリはアプリで別の道があると思っていて、それをちゃんと棲み分けて、時に複合させてということを考えていかなければいけないと思います。


実際のアプリ画面

ーーなるほど。 そうしたこだわりの積み重ねがPR効果にも繋がったのですね。

三田:
そうですね。ちなみにこのコンテンツは5年計画で設計されており、今現在3年目です。その予算で毎年小さくアップデートやコンテンツの差し替え、多言語対応などをしています。タイの顧客が非常に増えたということでアジア圏のマーケットが開かれていると予測し、2年目の時点で日本語、英語、中国語、台湾、タイ語の5ヶ国語に対応しました。

一方、北海道の他の地方でも同じような観光VRがありまして、確かに品質や画質の良いコンテンツで、ガイド役としてアナウンサーさんがオススメの場所をナビゲートするものです。ただコンテンツの解像度がだいたい4Kクラスだったので、地方のネットワーク環境ではうまく運用できませんでした。コンテンツやアプリが重いのでダウンロードができなかったり、バックグラウンドで操作できなかったりといった調子でした。

ーー確かに地方のネットワーク環境に言及してコンテンツ制作を行われている会社はあまり見たことがありません。

三田:
このコンテンツを制作されたのは東京の会社さんなのですが、アプリの検証の時も東京でされたと思うんです。当然しっかり検証されてリリースしたはずですが、実際に釧路ではダウンロードにも再生にも時間がかかり、そうするとあまりダウンロード数は伸びていかない。やはり地方のコンテンツはこの辺りのアフターサポートが難しいのだろうと思います。

ーー御社は美唄市のコンテンツを制作した際にそういった課題をどのように克服したのでしょうか?

三田:
コンテンツのサイズをフルハイビジョンの解像度にすることで対応しました。フルハイビジョンの解像度にすれば1個100MBくらいのサイズですが、4Kの解像度だと下手したら1個300から500MBの動画になってしまうので、それを10個もアプリ内に入れてしまうと地方では運用できません。

こういった地元の環境を理解しているか否かというのはコンテンツを作る上で1つ大事なことだと思います。ただ東京の会社さんだと、交通費や人件費などから何回も北海道に来る機会は取れません。弊社が北海道の企業として1番であると思っているのはそういうところですよね。足取り軽く現地に行って、検証は必ず現地で行うといったところでアドバンテージをとっていることが弊社の強みです。

ーー地方ならではのコンテンツを制作する時にこだわられていることを教えていただけますか?

三田:
その地方ならではの区別化ということは非常に大事にしています。自然が豊かなところをPRしたいと思っても、他の地方でも同じようなところはたくさんあります。そこでその町それぞれの特色を掘り起こして考えなければいけません。そのためにはその街にぴったりくっついて、色合いや季節感を理解する必要があるんです。やはり現地では当たり前のことでも、外から見える魅力の部分があると思うんですよね。そういったものは現地で滞在しないとわかりません。撮影のためために北海道に来て、戻って編集します、ではわからない。必ずその地域にしばらく滞在して、ロケハンをすることなどを重視しています。

ーー制作されたコンテンツのこだわりの部分をしっかりと伝えるのは難しいように感じるのですが、実際に見られた方はどのような反応をされていましたか?

三田:
最初にこのコンテンツをタイに持って行ったときには日本語にしか対応していなかったのですが、見せたいものは絵で通じるわけです。VRのいいところはビジュアルが主体なので、言葉の壁を簡単に超えて行きます。見た人も「わあ焼いてる、うちの国の焼き鳥に近いなこれ」と言いながら、自分で振り返って後ろも見ていました。

説明するというよりも、向こうが興味を持ちそうなものをリサーチしておいてそれを見せるということですね。そうすると好きなように触れて、自分で魅力を発掘していってくれます。こちらからアプローチするのではなく、準備をするという感じですね。

ーーなるほど。ちなみに御社は何名くらいでVR事業に取り組んでらっしゃるのでしょうか?

三田:
一応フリーランスを中心にチームは組んでいますが、撮影、営業、編集は大体私がやっています。それ以外の専門的な部分に関してはチームに頼っていまして、私はCGクリエイトができませんのでチームに専門の人を置いて、アプリのプログラミング、開発などもチームのメンバーにお願いしています。

ーーVR事業を始められたきっかけは何だったのでしょうか?

三田:
もともと弊社は映像制作の会社でした。そこからWeb制作やデザインなども行っていたのですが、これらの事業を行っている会社はどこにでもあるなと感じていました。そんな折に、2014年頃に海外でカードボードが普及してたことをきっかけに、これは絶対来るなと思ってそちらに大きく舵を切って今に至ります。

ーーVRの案件は今どのくらい受けてらっしゃいますか?

三田:
今手掛けているものだけで言うと、網走のものが1件、札幌の隣の北広島市を自転車で観光するサイクルツーリズムというものが1件、それから函館で道南方面のものを1件の、3本抱えているところです。少し前に終わったものでいうと札幌市の水道局の案件、その前が登別市の登別温泉や地獄谷というところの案件などですね。これらを撮影するために私は北海道のいろいろなところをしょっちゅう回っていますね。

あとはそれに並行して素材撮りを行っています。イベントであったり、観光スポットであったり、北海道以外の会社さんに売るためのコンテンツですね。函館の五稜郭、松前城、室内20件桜や芝桜、それから富良野のラベンダーといった人気の高い素材を、どこかの撮影に行くついでなどに撮ってきています。


素材撮影の様子

ーー素材はどういった会社に販売されているのでしょうか?

三田:
旅行会社や海外の会社が多いですね。台湾の会社などが、日本の観光スポットを紹介するときに活用していただいています。品質と長さによって値段をつけており、時期によって変えたりもしています。最初は利用期間というのも設けていたのですが今はもう売り切りで販売しています。

当初は4Kレベルで利用期間を設けていたのですが、一年経たずにもう8Kレベルのものが現れてきました。そのために8Kを基準として、そこからダウンコンバートしたものを販売するという形が今後の主流だろうなと考えています。

ーーなるほど。最後にお聞きしたいのですが、今後VRに関してチャレンジしていきたい部分はありますか?

三田:
北海道だから求められるものというのが必ずあると思うんですよね。 そういったものの制作に挑戦してみたいですね。また今はほぼ1人で動いている状況なので、自分にできない部分のカバーをしてもらえるように横のネットワークを広げていきたいです。その上で北海道でVRについて聞きたいというお客様から相談がもらえたら嬉しいですし、それらに対してオールマイティに対応できればと考えています。

ー三田様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー

株式会社ダブルエムエンタテインメント
〒003-0022 北海道札幌市白石区南郷通7丁目南1-5

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