【STORY × フォレストキャニオン】「愛媛発地方創生プランナーが語る、地方創生におけるVRの真価とは」

筆者: 編集部

株式会社フォレストキャニオンは2011年7月に創業され、愛媛県を拠点にアウトドアツアーを運営する会社です。2017年から、ストリートビューを中心に360度写真の撮影を開始し、地方創生のプロジェクトを手掛けています。今回は、スタッフ兼ガイドを務める石川雄一様にお話を伺いました。

ーー愛媛を拠点に活動されているようですが、どのような背景で創業に至ったのでしょうか?

株式会社フォレストキャニオン 石川様(以下石川):
私たちが拠点にしているのは、愛媛でも一番小さい松野町という場所です。私自身がこの町の出身なのですが、愛媛と高知の県境に位置しており、森林面積が8割、深い深い森に囲まれた盆地に四万十川の支流も流れている素晴らしい日本の田舎です。

そんな松野町の魅力的な風景を知ってもらうために、農家民泊という制度を利用して、民泊事業を始めた農家さんの勉強会がこの会社の始まりです。

町内には国立公園に指定されている「滑床渓谷」という場所があり、そこでは昔から地元の子どもたちが滑らかな斜面を利用して滝を滑って遊んでいました。ある時、この滝を滑ったりする遊びがキャニオニングというアウトドアツアーとして確立されていて、ビジネスとして成り立っている事を知りました。

今ある「民泊」に「体験」が加わる事で、お客様の滞在時間がさらに増えて、地域の事を深く知って頂けるのではないか。本気で力を入れるのであればビジネスとしてしっかり進めていく必要性があると感じて、この勉強会から派生する形で創業に至りました。

ーー現在はどのような活動を行っているのでしょうか?

石川:
今はアウトドアツアーの運営が主幹事業で、滑床渓谷でのキャニオニングや、四万十川でのラフティングを中心に展開しているのですが、この事業を展開する中で地方の課題がよりはっきりと見えてきました。

例えば、地方で体験できるアウトドア情報をインターネットで調べると、見つかる記事のほとんどは都市部で運営されるメディアのものです。ほとんどの都市部のメディアはネットの記事のために全国を飛び回って、詳細でより深い情報を載せているわけではありません。私達のようなツアー会社に一斉にメールとエクセルのテンプレートを送ってリプライされてきた情報を掲載するだけです。もちろん、都市部のメディアが多額の経費を割いてまで深い内容に踏み込む必要もないですし、私たち地方の事業者も、お客様にとって有益な情報の提供に最大限努めなければならないと思います。しかし、全ての事業者がそこまで本気で考えて深い情報を提供している訳ではありません。結果として、その多くは残念ながら“標準化されたありふれた情報”になってしまっています。

今、インターネットに掲載されている多くの旅に関する情報には“見えない壁”があって、ほとんどのメディアの情報はそこで一直線にストップしてしまっています。そしてユーザーはそこより深い所まで行くことが出来ていません。地方の良さは住んでいる本人たちが一番理解しています。私たちのように地方で活動しながら、自分たち地方のことを消費者に直接発信する力を持つことができれば、もっとユーザーにとって価値のある情報を届けられると思います。

だからこそ、私たちはツアー運営において、楽しさの追求はもちろんですが、その発信の仕方、魅せ方にもこだわる必要がありました。暮らす人にしか提供できない情報や発信の仕方を探そうと思ったのです。

ーーそこでVRコンテンツだと。

石川:
はい。ストリートビューをはじめとした360度コンテンツの撮影・制作に今年から取り組んでいるのですが、それはこれらのコンテンツがユーザーにとって「より身近で価値のある情報」になると考えてのことです。
その場所の様子を360度見渡すことで、親しみやすく、安心感のある情報としてユーザーに届けられます。私たちはアウトドアツアーの運営だけをしているわけではなく地方を盛り上げたいという気持ちで会社を経営しているので、この技術を使ってまず何かできないかと思い、さっそく九島Hopping、鬼北Hoppingという企画を運営させていただきました。


(360度ツアー:九島Hopping)


(360度ツアー:鬼北Hopping)

ーーそれぞれどういった企画内容なのでしょうか?

石川:
それぞれほぼ同時期に走り出した企画なのですが、簡単に説明すると、360度のツアーで島全体を観光できるようにした「感じられる」観光マップの制作です。また九島Hoppingでは、QRコードを読み込むことで360度ツアーを体験していただけるように、名刺サイズのカードを作成してPRに繋げるところまでプロデュースしました。
やはり地方観光ということもあって、手渡しで繋がっていくような温もりも大事にしたいなと思い、あえて紙を活用してみました。この紙媒体は九島住民の方、宇和島市役所の方、その他自分たちの関係者向けにあえて200枚だけ配布しました。この200枚がどれだけの人の手に渡っていくか見て見たかったからです。すると驚いたことに、実際に兵庫県から弊社のアウトドアツアーに来てくださったお客様の中にそのカードを持っていた方がいました。その方は今回が初めての四国旅行で、九島に遊びに行った地元の知人からカードを頂いたそうです。改めてこのカードの効果を実感できる事例となりました。


(写真は実際に配布したカード)

ーー兵庫からですか。紙だと効果の実感にもまた温もりを感じますね。

石川:
私たちは、“暮らす人にしかできないコト”を大事にしたいと思っています。ビッグデータの運用やMAのような業務は資本力や技術を持ったメディアが担うべきだと思いますし、実際に地方観光もそうしたサポートを受けながら成長していくべきだと思います。しかし、私達はこの紙媒体のようなアイディアを創出しながら、その地域にいるからこそ、伝えたい魅力をいろいろな角度で発信する必要があると考えています。

今回は島全体のツアーという切り口で企画を行いましたが、一定のテーマに絞って360度のツアーを作ることも面白いと思います。例えば四万十川には、沈下橋という増水時に川に沈んでしまうように設計された欄干のない橋がたくさんあるのですが、この橋は四万十観光における“訪れる理由”にもなっていて、インスタ映えポイントや川遊びポイントなどもたくさんあります。これらをめぐるツアーであったり、愛媛の松山といえば俳句の町なので、俳人が巡ったスポットをツアーとしてまとめていくのも面白いと思います。

こういった自分たちだからこそわかる魅力を、ユーザーにもっと身近に思ってもらえるように360度コンテンツで発信していくことにはとても価値を感じています。

ーーそれは面白そうですね。観光客の誘致以外での活用などは考えられていないのでしょうか?

石川:
観光以外だと、地方の人口増加にも貢献できると考えています。最近、田舎の空き家に移住してくる方が増えていますが、もちろんそういった方にも不安はあると思うので、家内を360度で見ていただくことで安心感をもって住む場所を選んでもらえます。

人が増えるということは素直に嬉しく思いますし、地方経済も良くなります。内見に使うVRとイメージは同じですが、これも地方にいるからこそのアイデアかなと思っています。

ーーありがとうございます。最後に、愛媛発の地方創生プランナーとして何か伝えたいことはございますか?

石川:
私たちは行政の方とお付き合いすることが多いのですが、自分たちが住む場所をもっといろいろな人に知ってもらいたいという共通の気持ちを持っていますので、是非一緒に協働して、地方を盛り上げて行きたいと思っています。

VRもアウトドアも手段でしかなく、大事なのは何を為すかという目的です。それを共有している人たちと私たちにできることを掛け合わせることで、もっと地方に貢献していきたいです。

ーー貴重なお話ありがとうございました。

株式会社フォレストキャニオン
〒798-2106 愛媛県北宇和郡松野町目黒796-1

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