【STORY × 太陽企画】「これまで積み上げた技術を武器に、新たなVR/ARの可能性を探求する」

筆者:手島 理志

太陽企画株式会社は、TVCMを中心に、映像の企画・制作までを手掛ける総合映像制作会社です。映像制作で培った技術や演出力を武器に、新しい表現方法に日々挑戦しています。
 
今回は、そんな太陽企画株式会社がこれまで手掛けてきたコンテンツや今後のビジョンについて、Development Design チーフプロデューサーの大石暉様とR&D ディレクターの伊原亮様にお話を伺ってきました。

━━まず御社の事業内容についてお聞かせいただけますか?

太陽企画Development Design大石様(以下大石):
弊社は、社内に撮影スタジオ、編集室、CGチーム、美術工房を擁し、ナショナルクライアントのTVCMはもちろん、大型展示映像や、プラネタリウム・360度映像などの全天周映像の制作を行っています。
 
その流れから、VR分野の制作も行うようになり、大塚製薬さんのポカリスエットのキャンペーン「LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT DOME Movie」、KDDIさんの「au “Hello, New World” warp cube」、オリジナルのストップモーションアニメーションをベースに制作した「ノーマン・ザ・スノーマンVR」や実写とCGの合成クオリティに挑戦した、演出家東弘明氏(stoicsense Inc.)との共同プロジェクト「NEO ZIPANG」などの制作に取り組んできました。
 
弊社では、2004年から全天周プラネタリウムのコンテンツを作っています。また、2005年に愛知県で開催された「愛・地球博」では360度球体シアターの映像を制作しました。それらを担当する中で、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)型のデバイスを用いて試写をすることが増えていきました。そうした背景もあり、3年ほど前から、シアター型ではなくHMD型のデバイスを用いたVR映像の制作に取り組み始めました。
                                                                                                                                                                                               
イベント用のVR映像以外にも、不動産会社様からのご依頼で、更地に建設予定の建物を合成し、完成後の日照や窓からの眺望をCGで表現した、プレゼンテーション用のVRコンテンツを制作しました。自分たちが得意としているのは、実写に対してCGをどう足していくか、どのようにすれば実写のVR映像が魅力的に見えるかといった点です。撮影も含めて社内のスタッフで行い、実写をベースにCGを合成して、コンテンツを制作しています。
 
━━「ノーマン・ザ・スノーマンVR」についてお聞かせいただけますか?
 
大石:
「ノーマン・ザ・スノーマンVR」は弊社のオリジナルアニメーション「ノーマン・ザ・スノーマン」のVR版です。
 

©TAIYO KIKAKU Co., Ltd. / EXPJ,Ltd

弊社には、クラフトチーム「TECARAT(テカラ)」が、ストップモーションアニメーション、いわゆるコマ撮りアニメの制作に長年取り組んできました。

「ノーマン・ザ・スノーマン」は人形、美術、小道具、全て手作りで製作し、ストーリーはもとより、そのディテールや質感が国内外で高く評価され、プラネタリウムや4K放送他で現在も全国で公開しています。「ノーマン・ザ・スノーマンVR」では「ノーマン・ザ・スノーマン」で作ったキャラクターや美術セットを3Dスキャンし、それぞれのモデルデータをCG上に移して制作しています。

要するにデジタル派生ではなく、まずアナログで作ったものをデジタルに移行して制作したコンテンツなのです。このVR映像では、登場するキャラクターたちと同じ目線になって、その世界に入りこみ、キャラクターと一緒にストーリーの中の景色などを体感することができます。これは、面白い着眼点だったのではと思っています。

━━受託案件で最も成功を感じたものは何ですか?

大石:
「au “Hello, New World” warp cube」ですね。こちらはKDDIのイベント用映像コンテンツで、「通信の力で何か新しい世界、見たこともないような世界を体験できるのだ」ということを伝えるため、内部をLEDディスプレーで囲まれたキューブ型の「warp cube」の中に入り、世界の絶景を飛び回って360度バーチャルトリップを体験するというものでした。

↓↓画像の上でクリック&ドラッグすると、360度コンテンツが楽しめます↓↓

※スマートフォンでご覧になる場合は、YouTubeアプリで再生すると360度動画がお楽しみいただけます

参加者が同時にスマホを振り上げると世界各地の絶景にワープして、鳥瞰視点の絶景を楽しむことができるものです。ドローンにカメラを積んで、世界各地を撮影しました。撮影後はドローンの揺れによる映像のブレを修正したり、撮影時に周辺にいた人たちの姿や足跡を消したりと、撮影時にその場での対処が難しかった部分の修正を細かく行い、美しい状態の観光地を見ることができるよう仕上げています。

こちらのコンテンツは、YouTubeが360度映像への対応を開始した際、TrueView広告として公開されました。映像の長さは1分ほどでしたが、離脱者がほとんどいなかったそうです。結果、すぐに視聴回数が100万回を超え、そういった点から見ても、成功事例といえるのではと思います。

━━撮影はすべて御社で行ったのですか?

大石:
はい。すべて弊社で担当しました。各国でのドローン飛行条件などを鑑みながら、リサーチチーム「Creative Tank」の協力のもと、スタッフ全員で検討して、中国、アイスランド、オーストラリアで撮影することに決めました。

本番撮影に入る前に入念にテスト撮影を行い、その映像を360度に繋ぎ合せるステッチ作業をしながら、現地での最適な撮影方法を検証していきました。また、「au “Hello, New World” warp cube」では、映像の中の人物から電話がかかってくる演出があるので、視聴者が映像に登場する人物と同じ目線、同じ感覚で景色を見ることができるように、対象物との距離感や動きなどを設計する必要がありました。

こちらの案件は作業期間が4か月ほどしかなかったため、国ごとにチームを作り、複数の国で同時に撮影をしています。

━━4か月というのは期間としてとても短いように感じますが。

大石:
短いです。国によっては外国人である私たちがドローンを飛ばすのはハードルが高い場合もあり、そういった交渉や対策にも苦労しました。4か月で完成させることができたのは、この案件の半年ほど前から取り組んでいた「NEO ZIPANG(stoicsense Inc.との共同プロジェクト)」での経験値があったからです。

「NEO ZIPANG」の制作の中で、実写撮影に対してどのようにCGを合成していくか、どうステッチをしていくかという経験を積んでいました。撮影、制作に関して自分たちがやらなければならないことが見えている状態で「au “Hello, New World” warp cube」の制作に入れたことは大きなポイントです。

この「NEO ZIPANG」での経験がなければ、4か月で完成させることはできなかったと思いますし、仮に形式上は出来上がったとしても、コンテンツ体験者がVR酔いを起こすことなく、没入感を感じられ、かつ美しい映像に仕上げることは難しかったと思います。

━━「NEO ZIPANG」について詳しく教えていただけますか?

大石:
「NEO ZIPANG」は弊社CGセクションを基盤に発足したデザインスタジオ「+Ring(リング)」と、「攻殻機動隊VR」やポカリスエット「LUNAR DREAM CAPSULE PROJECT DOME Movie」というイベント用ドーム映像で演出をされた東弘明氏で共同制作しているVRコンテンツです。

↓↓画像の上でクリック&ドラッグすると、360度コンテンツが楽しめます↓↓

※スマートフォンでご覧になる場合は、YouTubeアプリで再生すると360度動画がお楽しみいただけます

現時点では短いストーリーしかありませんが、今後、脚本をつけて、長編制作に取り組んでいきたいと思っています。本編の長さは40~50分にしたいのですが、HMDで見るVR映画の尺として考えると現実的ではありません。そのため、話を区切って、5分ずつ配信するなどの方法を考えています。そうすれば、視聴者がどこまで見るかを自ら決めることができますから。

━━「NEO ZIPANG」の制作を始めたきっかけはなんですか?

大石:
まだ誰も到達できていない実写VRの映像を制作したいという思いから始めました。以前、東監督とお会いした際に、我々には実写とCG合成のノウハウがあり、実力のあるスタッフもいるのだから、他の会社ができないようなことをやろうという話になったのです。そうして、1年ほど前に「NEO ZIPANG」のプロジェクトが始まりました。

弊社では、新しいことにどこよりも先に取り組む姿勢を大切にしています。経験を積み、知識を得た分野で自分たちにできるVRを作りたかったのです。我々にとってのゴールは、新しいことに挑戦し、それをしっかりと形作ることです。

━━映像に関して知識と技術、挑戦する姿勢を兼ね備えた御社ならではの強みですね。

太陽企画 R&D 伊原様(以下伊原):
そうですね。弊社は実写の撮影はもちろん、ストップモーションやCGなど、映像制作においてあらゆる分野のスペシャリストがいます。社内ワンストップで制作できる範囲が広いこと、それが強みだと思います。社内のリソースを掛け合せて実験的な手法にトライして、その経験を基に、お客さまへ新しい提案をすることができます。

クライアントワークに重心を置きつつ、新しいことに挑戦し、テスト制作を行っている会社はまだあまり多くないのではと思います。目の前の仕事に真摯に取り組みながら、これまで培ってきた技術を活かし、面白いものを作っていこうとする姿勢は、弊社の最大の魅力ではないでしょうか。

━━VRの案件は増えていますか?

大石:
お問合せは増えましたが、案件自体はそんなに多くはありません。今現在は工場見学やイベントのプロモーション、車の販売店さんからの広告案件をお受けしています。弊社は広告を扱っているため、広告代理店さんからお問合せいただくことが多いです。

みなさんVRを使うことによって生まれる話題性を期待されています。しかし広告としてVRを使うとなると、イベント会場での運用方法や対象年齢が13歳以上に限られてしまうなどの課題や条件があり、まだまだ実現ハードルが高いのも現状です。

最近では「明確なビジョンはないけれどVRでなにかやってみたい」というケースが非常に多いです。そういう場合、事例をご紹介しながら費用面の説明をして、ご要望を聞き、クライアントの最終目的に到達するためにはどのようなコンテンツが最適なのかを一緒に話し合って決めています。映像の内容だけではなく、どこから発信するのかも相談しながら、目的に適した内容をご提案しています。

ただ、個人的には広告業界にはVRよりもARやMRの方が適しているように思います。ARやMRであれば、GPSやBeaconなどとHoloLensのようなデバイスを連動させ、テキストや画像情報をデバイス上に表現できます。

情報だけに関して言えば、ARやMRのほうがVRでプロモーションするよりもはるかにわかりやすく、更新性も容易に行えます。HoloLensのようなデバイスも徐々に小型化されていくでしょうし、表現できることはテキスト情報のようなデータ容量の軽いものにはなりますが、広告メディアとしての可能性が高いので、弊社はARやMRにも注目しています。

━━VRチームがARも手掛けられているのですか?

大石:
そうですね。まだ本格的に取り組んでいるわけではないのですが、ARを扱っている人間は伊原を中心に数人います。

実は太陽企画では、10年ほど前に一度ARチームを立ち上げています。その時はCGクリエイター中心で構成され、映像に合成されるARのクオリティを上げられるか試していたのですが、ARには技術的な限界があると感じていました。コンテンツ制作において踏み込むことのできる範囲が限られていて、「制限の中で制作したもので誰かを感動させることができるか?」という観点から検討し、一度ARから離れました。

ただ、技術的な検証は続けていました。現在のARでは、制作したキャラクターをスマホなどで見た時、立体的には見えても、実際その場に存在しているようには表現できていません。ARのモデルには、現実にいる場所の照明の当たり方が反映されないので、暗いところにいても、明るいところにいても、キャラクターは同じ色のキャラクターでしかなく、現実味が削がれてしまうのです。

それを回避する方法を検証した結果、カメラのデータから撮影した空間の色情報、光情報を認識し、キャラクターに色を反映させることができる、というところまで実証できました。

このように、時間の合間を見ながら少しずつ弊社のAR技術もバージョンアップしてきましたが、今年、HoloLensが登場したことで再びARに本腰を入れて取り組み始め、また今はARにきちんと取り組むことのできる専任のメンバーがいるので、過去のデータをもとにHoloLensを使って新しい表現を目指しています。

━━今後はHoloLensを使ったコンテンツにも注力していかれるのですか?

伊原:
弊社ではテクニカルな作業を行うことができます。そういった技術をどんどん活かしてコンテンツを作っていきたいです。弊社だけでなく、違うリソースを持った他の会社さんとタッグを組むことができればもっと面白いものができると思います。

これまで広告を制作する中で培ってきたエンターテインメントの要素とHoloLensを組み合せて、新しいコンテンツを作ってみたいと考え、コンテンツ東京展示用にエンターテインメントに特化した「HOLOBUILDER」というHoloLensコンテンツを制作・出展しました。「HOLOBUILDER」は、無数の小さな作業員が出現し、みんなで協力して建設を進め、モノが出来上がっていく様子をHoloLensで見ることができるというものでした。

大石:
それを見たある建設会社さんから、保存価値の高い建造物を博物館に展示する際、この建造物が当時どういった流れで作られていたかを、HoloLensを使って見せることはできないかというご相談を受けました。その建設会社さんは、古い時代の建造物の建て方や構造を、CADや3Dデータとしてお持ちで、そうした資産をどのように活用できるかというご相談もいただきました。

ARやMRには多くの可能性があると思っています。今後はデバイスも小型化され、また5Gなど通信インフラも飛躍的に変わるので、ARやMRのコンテンツ表現も様々なことが出来ると思います。また情報の更新性もマスメディアに比べれば容易に行えるので、広告ビジネスも含めて、非常に期待している分野です。

伊原:
それ以外に、個人的には「今まで触れていないもの、世の中に出ていないものを制作したいのだけど、どうしたらいいですか?」という新しいものを作る相談をいただけると嬉しいです。VRとAIなど、技術と技術をミックスした新しいものを考えていきたいと思います。

まだ世の中にないものを作り出すことに関して、弊社にはクオリティの高い表現が出る「+Ring」というCGチームがあり、また企画チームもいます。太陽企画は「企画力×制作力×技術力」を武器として来年2月で50周年を迎えます。50年間受け継がれてきたことを更に自分たちの世代で昇華させ、新しく入社してきた次世代へ継いでいけるよう、「今できる新しいこと」に積極的にチャレンジしていきます。

ー大石様、伊原様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー

太陽企画株式会社
〒105-0004 東京都港区新橋5-21-1

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