【STORY × キッズプレート】「利便性の追求だけに捉われず、”使いたい”と思われるサービスを作る」

筆者: 編集部

株式会社キッズプレートはAR・VRを主軸とし、アプリケーションやVRイベントのプロデュースなど、様々なサービスを展開しています。また、2016年には京商株式会社と共同で「Dolly360」を開発しています。今回はキッズプレート社の代表取締役である茂出木謙太郎様に、「Dolly360」やこれまで展開されたサービス、今後のVR業界についてお話を伺ってきました。

──まず御社の事業内容についてお聞かせいただけますか?

キッズプレート茂出木様(以下茂出木):
弊社は設立して11年が経ちますが、当初からずっとWeb系の仕事をしていました。しかし、4年ほど前に本格的にVR業界に参入することを決め、色々なVRのサービスを検討しました。現在はVR事業とWeb事業の2種類を展開しています。VRに関しては、4本の軸で事業を行ってきました。

一つは2015年にリリースした、スマートフォンでVR体験が簡単にできるアプリケーションです。こちらのアプリは、2016年に経産省の海外支援の展示などで利用していただきました。

同じ2016年、弊社がVRの映像撮影に取り組もうとしている時にドローンの規制が始まってしまいました。「ドローンではない、無人でスムーズに撮影ができるカメラがあったらいいな」という発想で、「Dolly360」の開発を始めました。こちらが2つ目の軸となります。共同で開発にあたった京商さんにOEMをお願いし、弊社で販売するという形で現在展開してます。日本国内だけでなく、ヨーロッパや中東など海外の方にもご利用いただいています。

「Dolly360」は撮影者が操作をする前提で設計されていますが、現在はセンサーなどを搭載することで、よりロボットのようなイメージに近づけていくことを想定して開発を進めています。他社から似たような躯体も登場していますが、日本では弊社が最初にプロダクトとして発表し、市場を作ったと思っていますので、引き続き牽引していきたいです。

3つ目は、今年の2017年3月にアメリカで発表したネットワークを利用したVRとARとWebが融合するシステムです。弊社はもともとWeb制作をしていたこともあり、ネットワークコミュニケーションや複数の人で何かをする場を作り出すことに、非常に強い興味を持っていました。海外での発表だったために、国内では認知が薄いようなので、今後は国内にも力を入れていこうと社内で話をしているところです。

最後は、フリーロームVRをデジタルハリウッド大学大学院と共同で開発しています。フリーロームVRでは、一つの場所で複数の人が同時にVR体験をすることができます。ネットワークを介さず、そこにいる人たちが全員で協力して何かしらの体験ができるのです。この開発ではゲームに限らず、被災体験などの社会的に意義があるものなど、様々なシーンで使える技術をご提供できる環境を用意しています。

──VRのサービスを始めたきっかけはなんですか?

茂出木:
きっかけは、私が某社にいた時に行った通産省のeコマースの実験です。1997年当時、eコマースの実験では、「ブラウザベースで買い物ができ、認証カードを使っても買い物できる」ということを確認できれば十分でした。しかし、当時はネットで買い物することは危険だと考えられていたので、それらの確認に加えて安全な環境で買い物ができることを実証しようと考えました。

当時はマルチメディアという言葉がはやっていました。私たちは、マルチメディアのレベルに完全に到達しなくても、同じような感覚で楽しくお買い物できるコンテンツを作ろうと考え、今でいうWebVRにあたる「VRML」でショップを作って実験しました。こちらのショップは、VR空間の中を自由に動き回ることができ、リアルタイムではないながらもインタラクティブ性があるものにしました。これが私が初めて手がけたVRです。

しかし映像がグラフィックでないため、データが重くなるわりには大した映像に仕上がりませんでした。当時は通常回線のない時代でしたし、これでは魅力を感じないなと思い、Webの仕事をメインに行っていました。

──その後、2015年にVRアプリをリリースされたのですね。こちらのアプリはどういった方を対象に作られましたか?

茂出木:
VR動画を見たい人と、見せたい人です。VR動画は当時から現在に至るまで、スマートフォンでVR動画を見る時は何かしらアプリを立ち上げ、操作をして再生します。その手順をもっと簡単にできないかと考え、マーカーレスのARの仕組みを使い、スマートフォンが印刷されたものを認識するとVRの動画が始まるアプリを作りました。

昨年は海外の方向けに日本を紹介するアプリとして、たくさん使っていただきました。来場者に入り口でアプリケーションを入れたスマートフォンを渡し、それを会場に表示された日本のパネルにかざしてもらうことで、各パネルと連動したVR動画を見せることができるのです。非常に簡単な上、パネルが並んでいることでみなさん順番に回ってくれますから、来場者は誰に案内されなくても、自発的にたくさんのVR動画を見てくれます。

現在は改修中で一時的にサービスを止めています。あまり大きくプロモーションせずに、ピンポイントで使ってもらおうと考えています。VRでの映画のプロモーションをスキャンするだけですぐに視聴ができる、雑誌を見ながらその撮影シーンを視聴できる、パッケージと連動できるなど、様々なシーンで使われることを想定しています。

思想として、VRに対するハードルや使用に関する心のハードルも含め、解消できることがあるのではないかと思っています。スタンドアローンの機械や技術が増えるのにしたがい、弊社のアプリももっとリッチなコンテンツと連動させられるようにしたいですね。

──アメリカで発表されたシステムについて詳しく聞かせていただけますか?

茂出木:
このシステムに関して、私たちがデモで作ったのは、好きな場所の空にUFOを出し攻撃できるというものです。VRとARとWebが融合していますから、VRではUFOのいる場所に戦闘機で出撃して攻撃ができ、ARではその場に赴くことで攻撃ができます。また、WebベースでUFOをどんな場所でも自由に出現させることができます。ユーザーは自分の好きな方法で楽しめるのです。

以上の三つの関係性を作ってみたものの、私たちとしてはまだハードルが高かったというのが正直なところです。現在は、VRとARとWebをそれぞれどう使うかを分解して一つずつ見直しています。そして、一度VRの部分だけを切り出して楽しめるようにしようかと思っています。

──「Dolly360」について詳しくお聞かせいただけますか?

茂出木:
現在の基本的な撮影方法は定点での撮影ですが、この方法は人の目の高さで撮影をすることが非常に難しいのです。ヘルメットにカメラを取り付けそれをかぶって歩いたり、三脚を使って動かしながら撮影することもできますが、これはこれで大変です。もっとスムーズで自由度が高い撮影ができたらいいなと考え、完成したのが「Dolly360」です。

「Dolly360」での撮影では人間の体が映りこまないので、自由にその空間を撮影できます。万一写り込んでしまっても、撮影者の体は非常に小さくなるので、あとから消すのも簡単です。また移動はタイヤで平面では揺れずに撮影ができ、少しの修正でスムーズな映像に仕上げることができます。

以上の利点により、室内や工場など特定の場所を紹介する場合に、紹介する場所に行く過程も含めて撮影し提供できます。「Dolly360」は不動産のご案内はもちろん、日によって稼働しない機械が動いている様子を前もって撮影しておき、いつでも好きな時に、実際に目の前で機械が動いているように見せるなど、色々な用途で使っていただけると思います。

──「Dolly360」はこれまでバージョンアップをされてきたのですか?

茂出木:
発売以降、メジャーなバージョンアップは行っていません。しかし現在、後付けで色々な機能を搭載させるための開発を進めています。順調に仕上がってきていますよ。「Dolly360」はベースがとてもシンプルなので、ベースを変えるだけで使い方の幅がぐんと広がります。実際に撮影で悩んでいる方は、そういった部分が「Dolly360」を見てすぐにわかるようです。

現在はロットが少なく、値段が上がってしまっています。また、センサーや他の機能を加えても同様です。今年はそれらに関連したお問い合わせを多くいただいており、慌ただしいですね。

──フリーロームVRはすでにどこかに導入されていますか?

茂出木:
導入はまだです。フリーロームVRはもともと中国の深圳にある会社と一緒にやっていました。まずは皆さんに実際に体験していただくことで、コンテンツの要望や購入のご希望がある方と連携して仕事ができるようになるのではと考え、9月の「東京ゲームショウ2017」に展示しました。

フリーロームVRに関しては中国で発売しているものを日本に持ってくる形になるので、弊社がどこか他の会社との導入線を持っているわけではありません。しかし、導入のノウハウについては弊社が中国語などを翻訳したり、ビデオを撮ったりしています。そういう意味では、他社にはあまりないノウハウだと思います。

──サービス全体に持っているこだわりを教えていただけますか?

茂出木:
長年のテーマとして、「メーカーやクライアント」と「ユーザー」にどうやって楽しくコミュニケーションを取ってもらうかを掲げています。。そしてその中でVRを活用した時、どんなコミュニケーションが生まれるかを想定し、ものごとの開発を進めています。発信する人と受信する人の間を楽しくつなげるものを開発したいというのが基本の考え方ですね。

先ほどお話ししたUFOのシステムは、実は広告業界での展開も考えていました。何かの製品をVRやARで見られるようになり、製品をどこに配置するのかを消費者の方々がWeb上で自由に決められるようになったら面白いじゃないですか。360度に対する切り口は幅広く持っています。

──今後、VRやARはどのように発展していくと思われますか?

茂出木:
まず現在の問題として、技術の進歩とコンテンツの進歩、人間の気持ち、マインドがどれも不整合だと思います。それぞれの要素がなかなか同じ方向に歩み出していかない状態ですね。このような状態になってしまう原因は、技術的、表現的な部分がどんどん進んでいく一方で、表現的な部分のアプローチが一般の人のところまできちんと届いていないことです。届いてないから、両者の間にいる人がマネタイズができず、制作ができないのです。

現在はVRを体験できる場所が増えましたし、グラフィックの負荷がより軽くなるシステムでVRを体験できるようになります。開発する側も、ユーザーが実際に使える環境を目指すようになっていて、ユーザーも「もう少し便利なものがあれば使いたいな」と思ってきている印象を受けます。

VRもARも機械がより精度を増してきているので、5年後ぐらいにはバーチャルオフィスで仕事ができるような状況になるのではないかと思っています。例えば会議に参加できない人をARで出現させ、全員が対面している状況で会議ができる、といった具合です。5年後には5Gも出ますから、それによってこれまで抱えていた色々な問題が解決されるのではないでしょうか。

肝はおそらくゲームではなく、仕事です。VRで仕事ができると分かればみなさん使いたがるでしょうし、会社が導入する意味が出てくると思います。開発途中の製品の完成品が見られる、シミュレーションができるということは確かに魅力的ですが、既存のサービスはごく限られた人がごく限られたシチュエーションでしか使わないものが多い。最低限ワープロとして使える、など一般的に多くの人が仕事で使用する機能が必要だと思います。

仕事でVRを活用するにあたり、課題となるのは指のトラッキング、キーボードの仕組み、大きさです。要するにトラッキングシステムの性能と画面の解像度が高くなれば少なくともワープロとして使うことができます。そういった問題が解決されるのに5年とかからないのではないでしょうか。

ARに関しては、スマホベースで簡単に体験できるようになると思います。3年後のオリンピックでは、一般の人に向けてARのサービスがさらに公開されているでしょう。例えば、スマートフォンと単語ベースといったARアプリが導入されていて、日常の中でスマートフォンをかざして情報を得る機会が増えてくると思います。

──最後に、今後の展望をお聞かせいただけますか?

茂出木:
今は、WebサイトをVR上で展開する時の最適な方法を考えています。ネットワークがこれほど普及したのは、ハイパーテキストリンクが使いやすかったからです。VRの中にハイパーリンクの仕組みはないので、もしそれを取り入れたらとても便利になると思います。文章同士、映像同士を簡単に繋げられるVR環境を再定義したとき、どうするのがよいかをまずは見出さなければなりません。

既存のVR空間でWebの環境が見られるサービスは、使いやすさと見やすさ、エモーショナルな部分のバランスが悪いと思います。WebのデータをVRやARの中で使いやすく再定義できたら仕事に使えますし、生活の中でも便利に使えるだろうということを、長い期間ずっと考えていて、色々な人に相談したりしています。しかし、最善といえるモデルがまだ見えていないので、来年ぐらいまでにサンプルモデルが作れたらいいなと思っています。

弊社はもともとWebの仕事をしていたので、HTML5やスタイルシートの仕様などはきちんと理解しています。拡張しないベースのHTMLでは、データを拾いやすいじゃないですか。ブラウザーベースでどのように出したいのかはわかっているので、あとはどのようにVRを取り入れるかが課題ですね。

便利なだけでなく、使いたいと思わせるようなものを作りたいです。人には「明らかに使いにくいのにそれが好き」という感覚がありますよね。何がよいデザインかは理屈だけでは決められません。それはすごく面白いことですよね。便利さや機能性だけを追求すればするほど、そうして作られたものを好きになれない人たちも出てきます。便利なだけでは満足できない人たちにも、もっとアプローチできることがあるのではないでしょうか。

ー茂出木様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー

株式会社キッズプレート
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町1-5-10
日庄第2ビル3F
 
撮影場所 デジタルハリウッド大学大学院

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