【STORY × Holoeyes】「医療界のユニットをVRでつなぎ、医療のさらなる発展を目指す」

筆者: 編集部

Holoeyes株式会社は、2016年10月に設立されました。VRやMRといった技術を活用し、医療、医療教育に向けたサービスを提供しています。今回はHoloeyes社がこれまで手がけたサービスや今後の展望をHoloeyes社CEOである谷口直嗣様にお話を伺ってきました。

──まず御社の事業内容についてお聞かせいただけますか?

Holoeyes谷口様(以下谷口):
弊社はVRとMRを活用し医療向けのサービスを展開しています。弊社のビジネスモデルは、CTスキャンやMRIのデータをもとに3DのVRアプリを制作して病院に提供し、そのアプリを術式の検討や術後の記録に使っていただいています。また、そうした記録は弊社でアーカイブしていきます。

弊社のサービスのベースはクラウドに置かれており、それを通じてデータを見ることができます。デバイスはHTC ViveやHoloLens、PC、スマートフォンなどの様々なデバイスを適材適所で使っています。

病院では、モーショントラッキングやコントローラを必要とする場合はHTC Viveを、VR空間だけでなく現実の世界も見る必要がある場合やオペ室での使用にはHoloLensを使っています。こちらのアプリは現在三つの病院で臨床実験をしていて、年末か年始くらいになれば実用的に運用されていくのではないかと思っています。
 
VRアプリでは、複雑に重なり合った臓器を透過させて見たい臓器を見られるようにしたり、解説や指示を出したりできます。弊社では、手術の環境をVRでデジタル化するというところにフォーカスしています。2Dの情報を3Dに変換することは非常に難しい作業で、それは頭の中で行う場合も変わりません。写真や文章の資料を使って学んでも、医療の現場で実際に触れるものは3Dなのですから、その変換の手間をVRでカバーしようと考えました。

──医療の知識はもともとお持ちでしたか?

谷口:
医療の知識はありませんでした。もともとはCGやゲームのR&D、アプリケーション制作をしていました。知識を持っていない分、臓器の配置や症例ごとの術式について、医者に解説してもらったり、ネットの記事を読んだりして自分なりに理解するようにしています。

自分で勉強をしてみて、人間の構造がいかに複雑かを感じました。一般的な図と実物を見比べてみると、臓器の位置が前後していたり、資料の中の図のように綺麗に並んでいるのではなく実際はよじれていたりということがあります。そういった相違をなくすためにも、まずは制作する私たちが人間の体や術式について理解をしなければなりません。そのため最近はコンピューターよりも術式の勉強をしている時間の方が長くなっています。

──医療分野でサービス展開されていこうと考えられたきっかけを教えていただけますか?

谷口:
弊社のメンバーである杉本と4年ぐらい前に知り合ったのがきっかけです。当時、私は家庭の医学という本の電子化された原稿データを使ったサービスを作るという依頼を受けていました。そこで色々とネットで調べていた所、杉本がインタビュー記事の中で、これからの医療では、8Kの映像やモーショントラッキングなどを使っていくべきだと話しているのを見つけ、彼に興味を持ちました。その後、私の方から連絡をして杉本と会いました。

当時、杉本はCTのデータから3Dを作り、3Dプリンターで模型を作っていました。私は以前からUnityを使って3Dアプリケーションを作っていましたし、OculusDK1を持っていましたから、二人の技術を合わせて頭蓋骨の中にVRで入っていけるようなものを制作したら楽しいかなと思い、医療分野に入りました。

実際、とても面白いものができました。その後、杉本から実際に患者のデータでVRアプリを制作してほしいと言われました。そうして制作したアプリが色々なメディアで紹介されたり、VRコンソーシアムのアワードを受賞し、「これは事業化できるんじゃないか」と思いました。ほかにもTokyo VR StartupsというVRに特化したインキュベーションプログラムに応募したところ採択されたことをきっかけに、2人で会社を作ることにしました。

──御社のサービスを活用することで、具体的にどのような医療効果がありますか?

谷口:
私はこの仕事を始めてから色々な医者と話しましたが、「正直なところどの術式が適切なのかは体の中を見てみないとわからない」という方が多くいました。もちろんみなさん最善は尽くしていますが、やはり細かな部分の状態を把握するのは2Dのデータだけでは難しいものがあります。また手術はチームで行いますが、それにあたっての事前準備をどこまでやるのか医者によって違いが出てくるようです。

弊社のアプリを使えば、手術前に体内の細部まで確認することができますし、VR空間を共有すれば技術の高い医者の手術中の目線で手術を見学することもできます。また事前準備に関してもフォローできる部分はあると思います。それ以外にも、手術中にHoloLensを使うことで常に治療したい箇所が見やすい状態で手術ができるので、手術時間の短縮にもつながります。

また教育面でも弊社のアプリは有効に活用できます。医療関係の授業では単純化された資料が多く、そもそも健康な人のデータが使われています。それが実際病気になった時にどうなるかをアプリで見せることで、医療の現場と教育をつなぐことができるのではないでしょうか。

現在、弊社では医療に関する様々なデータをアーカイブしていて、Web3Dで公開しています。今後は症例ごとにデータをまとめたものなども公開していこうと考えています。

──現在このサービスは日本でしか展開していないのですか?

谷口:
はい。実は国別でみた時、人口100万人に対するCTスキャンの台数は圧倒的に日本が多いのです。また、日本は皆保険制度ですから、国民のほぼ全員が少ない負担でCTスキャンを撮ることができます。そういった理由で、CTスキャンのデータは日本が世界で一番多いのです。弊社のサービスにはデータが欠かせませんから、日本から展開していくことでデータ量という強みが生まれます。

──アーカイブしたデータはやはり医療現場や教育に活用されていくのですか?

谷口:
はい。そのほかでは医療デバイスメーカーともプロジェクトを進めています。医療デバイスメーカーからもCADデータをもらっています。血管の形や骨の形、体の中の細かい部分は人それぞれ異なります。医療デバイスメーカーはそれぞれの特性に合わせて、バリエーションを持っていなければなりません。アーカイブしたデータは、医療デバイスメーカーの開発や製品の型を選ぶ際のシミュレーションに活用することができます。

──今後、医療の世界でVR機器はどのように展開するとお考えですか?

谷口:
教育分野には注目しています。以前、Tokyo VR Startupsのメンバーであるハコスコ社の藤井さんと、学生に勉強でVRを活用してもらえるといいよねというお話をしました。医療をVRで学び、病院での研修にもVRが当たり前のように使われている、という状況が私の理想です。アプリの制作にあたって自分で勉強をしてみてわかりましたが、VRで学んだ方が理解しやすいです。

デバイスに関しては、HoloLensがHTC Vive並みの性能を搭載してくれたら嬉しいです。HoloLensを提供しているMicrosoftとディスカッションさせていただいていますが、今後HoloLensの性能もさらに上がっていくと期待しています。

──最後に、御社の展望をお聞かせいただけますか?

谷口:
アプリの導入については、3月くらいまでに40施設に導入してもらうことを目標にしています。地域は特に絞っていませんが、例えば茨城県つくば市の実証実験プロジェクトのようなものもあるので、そういった機会を活用して地方で展開してくのがよいかもしれませんね。

弊社は医療現場や教育現場、医療品メーカーの制作現場といった様々なユニットをつなぎ、必要な時にユニット同士が通信するためのハブになりたいと思っています。VRに限らず、オープンソースでみんなが技術を底上げできるようになればいいですね。

一緒に開発したい、医療の関係者で興味があるから使ってみたい、医療教育をやってる人で「こういうのを見せることはできないか」というご要望を持った人たちと、医療の可能性を開拓していきたいです。

ー谷口様、貴重なお話を誠にありがとうございましたー

Holoeyes株式会社
〒107-0062 東京都港区南青山2-17-3
モーリンビル303

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