利用意向調査結果から見る、VRビジネス利用への認識と今後の課題

筆者: Drappier

IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社は、「2017年 国内AR/VR市場 企業ユーザー調査」を発表しました。今回は調査結果をもとに、VRをビジネス利用することに対する企業の認識と、今後の課題について紹介します。

VRビジネス利用目的調査


(参照:VRのビジネス利用目的(上位主要項目抜粋))

現在の利用目的

本調査は、18歳以上の正社員ならびに自営業者1,000名を対象にWebアンケート方式で実施しました。単純に企業数、企業割合についての話とは言えないですが、VRを既にビジネスで利用している企業や自営業者の中で、VRをマーケティング用途で利用している割合が25.9%と最も高くなっています。やはり現時点ではVRを一時的にマーケティング(主にプロモーション)として利用している企業が多いです。

次いで多いのが、「VRコンテンツに関するコンサルティング」と「技術研究」で18.5%です。技術研究はイメージしやすく、多くの企業がまだ研究やノウハウ蓄積段階にあるということでしょう。コンサルティングに関しては、個人で活動しているクリエイター(自営業者)が360°カメラの使い方などについて講演したり、VRを始めたい企業に対してアドバイスを行っているケースが多いのではないでしょうか。

今後の利用意向

そして、今後の利用意向に関しては、「技能訓練・トレーニング用」という回答が最も割合が高くなっています。VR利用用途として、トレーニング系の意向が高くなる理由としては

1.VRへの置き換えや利用が、VRに詳しくない利用意向者にもイメージしやすい
2.コストカットという、VRを活用することで即効性のあるメリットが期待しやすい
3.事故やトラブルなど、現実ではなかなか体験できないものもVRであれば再現可能である

など、トレーニング系とVRの相性が良いことが考えられます。

この分野では、株式会社積木制作の安全体感VRトレーニングなど、実例としても多い分野になっています。マーケティング利用が比較的低い数値になっているのは、もうVRでのプロモーションが目新しくなくなり、「VRを利用しているから」という理由だけで集客できていたフェーズが過ぎていることを実感しているのではないかと考えられます。

今後の課題

この調査結果から考えられることの一つとしては、「VRを今後利用しようと考えている人が、VRがどんなことに利用できるのかまだよくわからない状態である」ということがあります。これは、本調査の中でも言及されています。

引用
IDC Japan PC,携帯端末&クライアントソリューションのシニアマーケットアナリストである菅原 啓は「顧客の業務に合わせた簡易体験デモ環境等を提供することを通じて『何ができるか』を明確にアピールしていくことが必要である」と結論しています。

VRは、トレーニング系やマーケティング(プロモーション)以外にも様々な用途に利用できる可能性を持ちます。しかし、利用を検討している、一般の企業からすると、具体的にどう利用できるのかまだわからないという現状があると思います。

また、別の課題としてよくあるのが、「VR利用を検討する企業が求める内容やクオリティが、現在のVRデバイスや技術では実現できない」ということです。

現実での業務や課題をVRで置き換えることを検討する事業者は、VR内でも現実と同じクオリティを求めることが多いです。しかし、それを実現するためには、ハイクオリティな3Dモデルが多数必要になり製作コストが跳ね上がります。そうなると、開発・利用にかかるコストが予算を軽く超えたり、費用対効果に見合わなくなったりとビジネス利用を断念するケースがよくあります。

まとめ

以上より、VRのビジネス利用が促進されるためには、下記が考えられます。

VR事業者側は
●研究開発などで開発ノウハウを貯めることにより、VRでできること、VRでの表現の幅を増やす
●「VRで何ができるか、どんなことができるか」という認知をVR事業者、開発会社が広めていく

VR利用者側としては
●VRで何ができるかを想像しやすくするために、実際にVR体験を増やす
●目的を達成するために、本当に求める高いクオリティが必要なのかを考える

VRを利用者に啓蒙していくことも、VRデバイスの進化によるVRコンテンツのクオリティアップも、一朝一夕では達成できないものです。そのため今後も引き続き、VR事業者の地道な取り組みが必要となります。

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