老舗メーカー企業RICOH(リコー)のVRビジネスへの挑戦 360°カメラ「THETA」、「THETA 360.biz」に広がる可能性と、成功への戦略

筆者: 編集部

株式会社リコーは7月31日に、THETA360.bizの新販売戦略の一つとして「オフィシャルパートナープログラム」の発表を行いました。THETA 360.bizは360°カメラであるRICOH THETAで撮影した360°写真を、ウェブサイトに簡単にアップできる法人向けのクラウドサービスです。

そして、今回発表されたプログラムは、全国各地の企業を特約店としてパートナーシップを結び、特約店を通じてTHETA 360.bizの販売を促進するものです。特約店は、サービスの販売、クライアントサポート、代理店の開拓などを行います。そしてそれらの特約店に対し、研修・サポートの実施や、料金・報酬の管理を行う運営事務局をLIFESTYLE株式会社が担うことになりました。

今回は株式会社リコー、執行役員 Smart Vision事業本部の大谷渉事業本部長と、LIFESTYLE株式会社代表取締役の永田雅裕に、このオフィシャルパートナープログラムについての対談インタビューを実施しました。

RICOH(リコー)初のデータビジネスへのチャレンジ。360°の先駆け企業へ

大谷 渉氏(以下、大谷):
このパートナープログラムは、THETAを使ったビジネスのソリューションであるTHETA 360.bizの、全国的なサポート体制の構築やビジネスのスケール化のために、全国に特約店となる企業を配置していくというというプログラムです。特約店になっていただくためには、企業規模や事業計画などの項目で審査が必要となります。

そういった特約店となるご希望をいただいた企業様の審査や選定などをパートナープログラムの運営事務局としてライフスタイルさんに担当していただきます。

永田雅裕(以下、永田):
よろしくおねがいします。今日はせっかくの機会ですので、普段なかなかお聞きできないような、根本的な部分のお話を伺いたいと思います。

THETA 360.bizは360°カメラであるRICOH THETAで撮影した360°写真をウェブサイトに簡単にアップできるクラウドサービスですが、このTHETA 360.bizのビジネスは会社戦略としてどういう位置づけのものなのでしょうか?

大谷:
今までRICOHは複写機などのハードウェアを販売してきましたが、21世紀はデータサービスの時代です。私は10年以上新規事業を担当してきましたが、時代の流れを考えると、21世紀にRICOHが生き残っていくためにはデータサイドのビジネスは避けては通れません。RICOHはハードウェアを販売してここまでやってきましたが、「データを使ってサービスを作る」という価値観を持っていかないといけないとおもっています。そういう意味で、THETA 360.bizはRICOHの生き残りを賭けて勝負している事業という位置づけです。

永田:
なるほど、そのような勝負の事業に携わらせていただいてありがとうございます。

「360°カメラ」や「360°写真」というものに着目された経緯はどのようなものがあったのでしょうか?

大谷:
RICOHとしてずっとカメラに関する事業をやってきましたが、携帯電話やスマートフォン、コンパクトデジタルカメラなどによって、カメラがどんどんコモディティ化していきました。

そのような流れを受けて、写真という文脈の中で新しい価値を模索していたんですね。携帯電話が普及してからは、写真を使ったコミュニケーションが増加してきていましたが、写真はフレームで切り取ったその部分しか見えないので、やはり全体の雰囲気も共有したいという想いを抱えていました。その場の空気感、どんな人たちが集まっているのか、どんな場所なのか、などですね。

そういった課題、想いから、場を写して、場を共有する「写場」というコンセプトが生まれました。今後はそういう「場」を写すことが主流になっていくのではないかと考え、それを実現するカメラを開発することになりました。

永田:
2013年にTHETAが発売されるまでは、一般の方が購入して撮影できるような360°カメラはなかったですもんね。一般の人が簡単にポケットから出して撮影できるようになったというところに大きな価値がありますよね。

今後はTHETA、あるいはTHETA 360.bizでどんな新しい価値を提供していこうと考えられていらっしゃるのでしょうか?

大谷:
360°をどう生活の中に取り入れていったら楽しいのか、役に立つのかというのは可能性はとても広いと感じています。まだまだこれから考えていかないといけないですね。

特にいま注目しているのは3Dモデリングです。立体化することで、よりその「場」がイメージできるようになります。写真(イメージング)の持つ力、情報量はテキストと比べて、とてもリッチなコンテンツだと思うんですよね。魅力はまだまだあるとおもいますので、そこの部分はRICOHが先駆けて提供していきたいと考えています。

「360°を通した新しい価値を模索したい」オフィシャルパートナープログラムに込められた想い

永田:
THETA360.bizも、そうした360°写真の新しい可能性を模索したものだと思いますが、どのような企業様に、どのように利用してもらいたいとお考えですか?

大谷:
わかりやすいのは不動産でしたが、それ以外にも観光や建築などの空間を設計するものへ発展していってほしいですし、やらないといけないなと思っています。都市計画や地域計画などに利用してもらいたいですね。

永田:
例えば、警察官に現場のレポート用につかってもらったり、社内コミュニケーションにも活用できますよね。オフィシャルパートナープログラムを通じてやりたいこととして、都道府県それぞれの特色を持った、地場に基づいた企業様に担当していただこうと考えているので、地域ならではの色がでてきたら面白いですよね。

先程大谷さんもおっしゃっていましたが、テキストやいままでの写真と比べて、360°写真は情報量が多いところが重要なので、それをうまく活かせるサービスやコンテンツを持つ企業様は、よりその魅力をうまく伝えられるようになると思います。

大谷:
360°で、社会に対して新しい価値を作っていきたいという強い思いがある方、企業様と組んでいきたいですね。LIFESTYLEさんと組むことになったのも、永田さんとお話して、物事に対して真摯に取り組んでいて、360°の世界をもっと大きく拡大したいという熱意が感じられ、同じゴールを見ている、信頼できると思ったことが理由です。

Google Street View Summitで偶然お会いしましたよね。その時に、LIFESTYLEさんはグーグルストリートビューの営業に関して、中身や顧客ニーズをちゃんと理解した上でお客様に届けていると感じました。

我々RICOHは、メーカーとして顧客理解が欠けている部分があると考えていたので、うまく強みを活かし合うことができればよいなと思いました。
 
パートナー様の企業規模の大小はあまり気にしていないです。むしろ、クイックに動けるところと組んでいくことが重要だと常々思っていましたし、そもそもVRや360°の世界は新しい世界なので、大きい会社がほとんどないですよね。新しい市場を切り開いていくためには、小さくでもエネルギーのある会社と組んでいくことが大切だと考えています。

永田:
ありがとうございます。LIFESTYLEは2014年創業で、いま5期目になりましたが、創業時はGoogleのパートナーとしてグーグルストリートビューで屋内を見れるようにする取り組みを行っていました。LIFESTYLE自体が技術やサービスを持っているわけではないですが、世の中にないサービスを開発している企業様と、ユーザーをつなぐ役割を果たしてきました。

RICOHさんとの取り組みに関しても同様に、ユーザーへ製品やサービスを届ける役割を担っていけると考えています。グーグルストリートビューを全国へ販売できる体制を構築してきた強み、いままで360°でビジネスをやってきたノウハウを活かせると思います。そもそも360°やVRをビジネスとして行っている企業はまだまだ少ないですし、アドバンテージを持てていると考えています。

大谷:
現在は、THETAのアプリやTHETA 360.bizも含め、360°を使って、「表示する」というところに特化したものとなっています。これを、「表示」だけにとどまるのではなく、360°を利用して理解しやすいものにしたり、イメージしているものにかえれるようにしたりと、360°を通した新しい価値を提供していきたいと考えています。例えば、コミュニケーションや保存、記録など、いろいろな用途に応じた形でサービス付け加えていきたいです。

永田:
たしかに、最近リリースされた、THETA360.bizに保存されているデータを使って、360°写真の中に簡単にCGを埋め込むことができるサービスである「ホームステージング」の機能も、「表示」から「イメージできるもの」の価値を付け加えたものですよね。

この機能を使うと、例えば住んでいる感覚をイメージをするのが難しい空き状態の中古物件も、CGで家具を配置することでずいぶんと実際のイメージを持つことができますよね。

大谷:
そうですね、和風にしてみたり、欧風にしてみたり、イメージを先立って体験できる。
      
そこに近い話ですが、360°カメラや360°写真、360°動画が人々の生活に与える影響の一つに、「体験」の共有をもたらすということがあると思います。

例えば体の具合が悪くて外出できない人が、山に登ってみたらどういうふうにみえるのかなどをリアリティをもって疑似体験できますよね。

それ以外にも、実際にはありえないもの、ゲームであるとか、都市計画みたいなものも、眼の前にあるものとして体験できる。

永田:
「時間」の概念を越えることができるのもありますよね。これは本当の話ですが、元々私がこの事業を始めたのは、「どこでもドア」と「タイムマシン」をつくりたいという想いからでした。

いま大谷さんがおっしゃった「体験」の共有や、別の場所を体験できるというのは、どこでもドアにあたるとおもっています。加えて、「時間」も越えることができますよね。過去の街並みや、気候などのデータを忠実に再現できれば、まるで過去の世界の中にいるような感覚を味わうことができる。これはタイムマシンにあたるとおもっています。

大谷:
そうですね、例えば10年間、連続で同じ場所のデータとってたらタイムマシンになりますね。

物事を同時に動かせるRICOHの強さを活かし、360度ビジネスの「ハブ」を目指す

大谷:
RICOHは光学系の製品を作ってきたメーカーです。THETAには、それまで培ってきたノウハウを活かし、たくさんの工夫を凝らしています。「持ち運べてポケットから出して、すぐにとれる」というコンセプトですが、RICOHだから360°カメラで薄型のものがつくれました。

屈曲光学系と呼ばれる、プリズムを使って光路を直角に折り曲げる方式を採用しているためレンズとレンズの距離が近く、「スティッチング」と呼ばれる、画像を球体にするときのつなぎ合わせの精度が高いです。精度の高い写真を撮影する時にはTHETAが中心に使用されています。
   
永田:
やはりそのあたりの技術は歴史の重みがありますよね。ハードウェアのスタートアップはたくさんでてきていますが、実際に製造して販売、そして成功しているところはほとんどないことを考えると、さすがというか、高い技術とノウハウと大企業の貫禄を感じます。

THETAやTHETA 360.bizは世界に広げていきたいという想いはあるんですか?

大谷:
それはもちろんです。実際にTHETAは海外で販売していますし、THETA 360.bizも広げていきたいです。どんな使い方があって、どう使っていくのかなどは、パートナープログラムを通じて新しい使い方がでてくることを期待しています。良い使い方や良いアイデアがあれば、パッケージ化して販売していきたいですね。

360°の価値は我々だけでは掘り起こしきれないです。価値を感じている人が、新しい価値を作っていくことが大事だと考えています。今回のパートナープログラムもその一環で、クローズドにやるのではなく、オープンにしていきたい。

そして、360°で何か新しいものをつくっていくときのハブの役割になれれば良いなと思っています。

永田:
大谷さんとしても、やはりこのTHETAやTHETA 360.bizの事業は力をいれている事業なのでしょうか?

大谷:
もちろんです。一番力をいれているし、ワクワクしているものです。THETA 360.bizはデータサービスを扱うため、ビジネスモデルとしても面白いです。

また、360°の持っている可能性は非常に大きいと感じています。これだけいろいろな可能性がある事業、領域はなかなかでてこないです。いままで10年程新規事業を行ってきた経験では、新しい事業は選択肢がなくなっていくのが常でしたが、360°の領域はどこから手を付けようか迷うほどに可能性が広い。

実際、360°の領域でいろいろな提携をやりはじめています。RICOHとして360°の領域の一角を占めたいですね。そうすれば、RICOHが世の中に対して新しい価値をつくった、カテゴリをつくったことになります。チャレンジし甲斐のある仕事で本当にワクワクしています。

永田:
たしかに、新しいサービスをどんどん出していっているイメージがあります。
オフィシャルパートナープログラムの魅力の一つとして、RICOHさんだからこそできるスピード感のある展開とサービスの多さがあると思っています。ベンチャーだと、一つ一つ着手するので精一杯ですが、様々なことを一気にやれるという強さを感じています。

大谷:
そうですね、一つ一つのサービスで考えると、どうしてもベンチャーやスタートアップにはスピードで追いつけないと思っていますが、いろんなサービスを一気に展開するとか、広い地域に広めていくなどダイナミックに事業を推進できることはRICOHならではの強みだと思います。

一方で、360°やWEBの領域といった、新しい文脈におけるセールスやマーケティングは、メーカーである我々RICOHは弱いと感じています。
こういった部分に関して、パートナープログラムにご参加いただける企業様や、LIFESTYLEさんには新しいやり方を提供してほしいですね。

せっかくの機会なのでお話しますと、LIFESTYLEさんに対して期待していることは、RICOHとLIFESTYLEさんが本当に一つのチームとして組んでいくということです。 

LIFESTYLEさんは、遠慮せずにどんどん新しいやり方を持ち込んでほしいし、RICOHももちろん良いところ、強い部分があるのでお互いに良い部分を取り入れて相乗効果を生んでいきたいです。とくにLIFESTYLEさんには、新しいものをつくる文化的素養を持ち込んで欲しいですね。衝突なしで本当の調和はありえませんから、衝突の先の融合を期待しています。ぶつかった後に新しい価値が生まれるので、それを期待しています。

永田:
ご期待に添えるように頑張ります!よろしくお願い致します。
 

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