【VR×教育】VRで教育がイノベートされる!?eラーニングアワード2018フォーラム-VRセッション-レポート

筆者:/一岡洋佑 Discont

教育の現場でますます注目が集まるVR技術。
VRの教育分野での活用を目指して様々な取り組みが行われています。
この記事ではeラーニングアワード2018フォーラムでの講演「VRが変える未来 ~企業が取り組むVR活用事例セッション~」の様子をお伝えします。

教育分野におけるVRの可能性

教育分野におけるVRの活用は今注目のホットなトピック。

教育の在り方について様々な議論が行われている昨今、VRは教育をイノベートする強力なツールの一つとして大きな注目を集めています。

それを示すように、開発者会議「XEDC」のレポート「AR/VR Innovation Report August 2018」に掲載されるアンケートでは、「今最も注力しているVRの分野は何か」という問いに対して約37%の開発者が教育分野(Training/Education)と答えています。
これは、ゲーム・エンタメ分野(約70%)に次いで2番目に大きな数値です。
2017年と比較しても教育分野と答えた割合は27%から37%へと増えており、徐々に熱量が高まってきていることがわかります。

また英国のテクノロジー調査企業「Technav」によると、VR教育の分野は2021年までに現在の9倍の17億ドル規模の市場にまで成長すると予想されており、VR×教育はビジネスとしても大きな可能性を秘めた分野なのです。

そんな流れを受け、11月14日に行われたeラーニングアワード2018フォーラムでは、VR×教育の講演も開かれ、「教育分野でVRをどう活用するか」を軸にセッションが行われました。

未来に向けて進化し続けるVR

セッションではLIFE STYLE株式会社の永田氏が進行を務めて、様々な角度からVR×教育分野の最新事例を紹介していきました。

最初に永田氏より現在のVRを取り巻く状況について語られました。

永田氏はVRを「ある事象が実在しているかのように脳を錯覚させる技術の総称」と定義づけ、VRの特質として、「3次元の空間性」「実時間の相互作用性」「自己投射性」の3つを挙げました。

LIFE STYLEは「VRクリエイターエコシステム」を通じて全国どこでもVRコンテンツを制作できる環境を作っているのだとか。
このことは、VRが普及していくうえで非常に大切なことです。

どんなにVRデバイスが進化し、コンテンツの需要が大きくなったとしても、それを作れるクリエイターがいなければVRの普及はありえません。
「全国どこでも」というのも重要な点で、日本全国の事業者にVR活用の道を開くことは非常に大きな意味があります。
すでに星野リゾートや大学のPR,不動産などでの活用実績があるそうです。

VRが普及するために必要な基盤を作る地道な努力が求められている中、LIFE STYLEは「VRクリエイターエコシステム」によってこれに応えようとしています。

認知症やLGBTの視点をVRで体験!?教育ツールとしてのVR

セッションではVR×教育を軸に、様々な活用事例のほかこれからのコンテンツ作りに対するヒントやアイデアまで紹介されました。
その中でも異彩を放っていたのが株式会社シルバーウッドの下河原氏が紹介した「VR認知症プロジェクト」です。

「VR認知症プロジェクト」はVRで認知症患者の視点で日常の様々なシーンを体験し、認知症患者から世界がどのように見えているのかを追体験する教育コンテンツです。
体験者が認知症患者の視点に立つことにより、介護側の視点では気付かない当事者の苦労や苦悩への気づきを得られます。

「VR認知症プロジェクト」では2017年から体験会が始まり、これまでに延べ20000人以上がVR認知症を体験したそうです。

下河原氏によるとVRを活用した教育コンテンツでは、アングルシフト、すなわち相手の立場に立って物事を見ることが重要だとか。
相手の視点に立って物事を見ることで、相手が抱える苦労や苦悩をまるで自分のことのように体験し、相互理解が深まるというわけです。

下河原氏いわく、VRはアングルシフトとの親和性が高く、「相対の理解」を深めやすい点に他のメディアにはない優位性があるそうです。
この指摘には「なるほど」と頷かされます。

たとえば、VR×教育の活用事例として紹介された「ダイバーシティ推進を目的とするLGBTコンテンツ」がよい例です。

このコンテンツでは、自身がレズビアンであることを職場にカミングアウトしていない主人公と職場にカミングアウトしているパートナーの二人の生活を映像化しており、認知症VRと同様にLGBTを当事者として体験できるように構成されています。

VRの中で体験者は、職場の同僚がLGBTを揶揄するような発言を行った時の悲しみや辛さといったものをダイレクトに感じとることになります。
そういった体験をLGBTの当事者とLGBTではない者が共有することによって、相互理解を深めていけるというわけです。

このVRコンテンツを体験したストレート(LGBTではない者)の人間は「教育用の映像ビデオなどとは重さが違う」とコメントしています。
またLGBTの当事者も「嘘をつかなければならないつらさを良く再現できている」とコメントしており、このコンテンツがリアリティのあるものだと裏付けています。

こういった教育用VRコンテンツは教育用のビデオと異なり、体験者が当事者として認知症やLGBTと向き合うため、体験者は能動的に気づきを得ることができるのです。
実際にVRで当事者になって体験をすることで、その後のレクチャーが良く刺さるそうで、VRとレクチャーを組み合わせた活用にも期待が高まります。

シルバーウッドが手掛けた教育向けVRコンテンツは海外でも大きく評価されており、2017年にはシンガポールで開かれた「アジア太平洋高齢者ケア・イノベーション・アワード」のテクノロジー部門で最優秀賞を受賞しています。
最近では中国でもシルバーウッドの認知症VRが注目されており、来年は中国での撮影も控えているそうです。

「追体験」と「サラウンディングな環境の再現」
教育向けVRコンテンツの魅力とは?

「認知症VRプロジェクト」などの“感情に強く働きかける教育コンテンツ”だけがVR×教育分野の可能性のすべてではありません。

VRを利用した共感性が取り上げられている中で、世界初の全天球小型カメラ「RICOH THETA」を開発した株式会社リコーの傳田氏は、VRの「客観視」という面にも価値があると指摘しました。

RICOH THETA開発の立ち上げ時から関わってきた傳田氏によると、VRならではの教育コンテンツの魅力として「追体験」と「サラウンディングな環境の再現」の二つの方向性があるそうです。

「追体験」は「認知症VRプロジェクト」のように誰かの体験を自分の体験として追体験するもので、感情に強く働きかけ相対の理解を促すものです。
これに対し「サラウンディングな環境の再現」とは、写真や映像より情報量の多い記録メディアとしてVRを利用するというものです。

例えばRICOH THETAの教育分野の活用事例として、医療現場における医師の視界を360度動画で撮影し、教育に活用するというものがあります。
これまでも術野(手術部位の視野)を記録した映像は医療教育に活用されてきましたが、実際の手術の現場では周囲のスタッフとの連携やコミュニケーションであったりと、術野外の出来事も重要になってくるのだそうです。
そういった術野外の出来事を客観的に記録し、教育に活用することが目的です。

その他にも、VRが持つ「サラウンディングな環境の再現」という特性を利用すれば、教育の環境が整っていないアフリカの子供たちにVRを利用した社会見学を提供することもできるようになります。
RICOH THETAのような小型で低コストな全天球カメラが登場したことによって、社会見学のような教育コンテンツの作成もより手軽で低コストに行えるようになります。
「学校の先生が自ら映像を撮影して授業に活用する」という未来も、そう遠くはないのかもしれません。

傳田氏はRICOH THETAの貢献として、UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)化の加速を挙げています。
RICOH THETAのような誰でも手軽にVRコンテンツを作成できる機器が登場することで、教育現場でのVRの活用はより現実味を帯びてくるのです。

VRが切り開く教育の未来
大切なのはストーリー

VRが切り開く教育の未来はどこへ通じているのでしょうか。
フジテレビの清水氏はこれからのVRコンテンツの制作で大切なのは「ストーリー」だと語ります。

清水氏によると、少し前のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト/アメリカで行われる、音楽・映画・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模なイベント)ではVRやARは目玉として扱われていましたが、すでに驚きの時代は終わりを迎えつつあるそうです。
これからはVR/ARのどちらも「ストーリー」が大切になっていき、単にモノを作るのではなく体験を作ることが求められていくと清水氏は考えています。

そうなっていったときに、フジテレビがこれまで培ってきた“プロデュース・技術・演出・編集”といった一連のノウハウが、VRコンテンツ作成に大いに役立つと考えているのだとか。
シルバーウッド監修のもと作成した「世代間ギャップ、上から見るか?下から見るか?」というダイバーシティ体験VRコンテンツが「ルミエール・ジャパン・アワード 2018」のVR部門の準グランプリを受賞したことからも、フジテレビのこの分野にかける熱量と思いが伝わってきます。

大切なのは、体験者が「能動的」な姿勢で教育コンテンツを向き合うことで、これを実現するためにストーリーが大切になってくるのです。
それを裏付けるように、シルバーウッドの下河原氏は「教育テレビ的な内容では見る者の関心を得ることができず、逆にどうなるのか展開が読めないようなコンテンツでは体験者が能動的に視聴する」と語ります。

セッションでは会場のオーディエンスの方から、実際の教育現場にてVRの活用がすでに始まっていることも語られました。
他の天体での物体の落下運動の様子であったり、3D空間で立体物から図形を切り取ったり、生物の心臓を観察したりと、生徒たちは教育用VRコンテンツの中で体験を交えて学習するそうです。
まだ実証実験の段階ではあるものの、生徒が熱心かつ能動的に学習に取り組んでおり、これまでの教育のやり方とは大きく異なっていることを実感しているそうです。
アクティブラーニングという視点からも、学校教育でのVRの活用は大いに期待が持てそうです。

さいごに

いかがだったでしょうか。VR×教育という分野の持つ大きな可能性と、その開発に携わる人々の熱意をお伝えできていたら幸いです。

セッションでは多くの質問も飛び出してきており、この分野への熱量が高まっていっているように感じられました。
会場のアンケートでは「職場でVR活用の可能性はあるか」という質問に対し、95%が「ある/ややある」と回答しており、この数値には正直驚きました。
「VRを使用したことがあるか」という質問に対しても95%が「ある」と回答しており、VRがもはや特別な技術ではなくなってきているように感じました。

その一方で、まだ確固たる活用方法が見つかっておらず、普及までにはまだ少し時間がかかるというのもVRの現実です。
これから大切になってくるのは、「どう活用するか」という部分であることは間違いないでしょう。
だからこそ、VR活用の様々な可能性がこれから模索されていき、これまでとは全く異なるアプローチの教育向けコンテンツが生まれていくのです。

まだまだ発展途上の分野だからこそ、大きな可能性が眠っているのがVR×教育という分野なのです。

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