オーダーメイドの防災訓練。家選びも安全も、VRで見通す

筆者:阿久津 碧

2018年の漢字が「災」であったことからも分かるように、ここ数年は異常気象や災害が全世界で頻発しています。東日本大震災、熊本地震、大阪北部地震、北海道胆振東部地震など、近年日本で起きた地震だけでも相当な回数発生していることが分かります。プレートなどの関係上、日本が地震から逃れられないのは仕方のないことなのかもしれません。しかしだからこそ、いざ災害が発生した際に、どれだけ迅速に対応できるかが重要になります。

VRによる住宅情報の充実

東京都住宅供給公社(JKK東京)が360度VRコンテンツの導入を決定し、成約率の向上を狙っています。同社の場合、申し込みの半数はホームページ経由なので、ウェブ上のコンテンツ充実には大きな意味があります。

高齢化も進んでいる昨今、実際に物件まで足を運んで内見をすることができないという層も増えてきており、そういう人たちからの需要も期待できるサービスなのではないでしょうか。

不動産とVRは相性の良い組み合わせなので、他の不動産会社やトランクルーム運営企業でも同様のサービスを行なっています。しかしJKK東京の場合、このこと以外にも注目すべき点があります。

防災訓練コンテンツとVRの融合

前述した360度VRを応用して、防災訓練用コンテンツを制作できるソフトウェアの開発が、クラウドソフト「スペースリー」をベースにして行われています。最大の特徴は、個々の物件に合わせた訓練コンテンツの作成が可能という点です。

マンションやアパートの形状、近隣の立地などに合わせてコンテンツを展開することができるので、より実践的な内容に仕上げることができるようになっています。

内容は通常のウェブブラウザで閲覧できるため、パソコンやスマートフォンがあればすぐに見ることができます。特別な機器などを必要としないので、通勤の合間や、ちょっとした隙間時間に目を通すことができるのが魅力です。

実際の防災訓練に参加するのは億劫だけれど、避難経路や方法自体は把握しておきたいという人にとってもありがたいサービスだと思います。

従来の防災訓練の場合、参加を拒否したり、何らかの事情で参加できなかったりする住民が少なからずいました。集合住宅において、こういった参加者の偏りを不安視する声もあり、住民同士のトラブルに発展するケースも過去には存在しています。

しかしVR防災訓練であれば、オンラインからコンテンツの視聴、実際の訓練への出欠の送信・確認などができるので、そのようなトラブルも緩和されるのではないかと思われます。

VRというと、ゲームなどの娯楽と結びつける人もいますが、実際にはそれ以外にも多方面での活躍が期待されています。防災訓練もその一つですが、防災関連から別のシチュエーションでも応用が利くのではないかと私は考えています。

防災関連で応用できそうなVRの利用案

実際に運用している施設や企業があるかは分からないのですが、VRと防災を絡めた利用案をいくつか挙げていきます。

ホテルなどの緊急避難ルートの共有

ホテルや旅館といった宿泊施設に泊まった際、避難経路を実際に確認しているという人の割合はどれくらいでしょう。旅館業法に定めがあるので、廊下の目立つ場所や、客室のドアに経路を貼っている施設が大半ですが、目を通していないという人も多いと思います。

しかしそれでは、いざ火災や災害が起こったときに適切な判断ができないかもしれません。そんな事態を防ぐために、宿泊施設の予約サイトや、公式ホームページに館内のVR画像や避難データを掲載することで、緊急時の避難ルートを周知しやすくなるのではないでしょうか。

予約後、チェックイン後などに、登録していたメールアドレスに向けてVRデータを送信するというのも良いかもしれません。避難経路だけではなく客室画像、施設外観画像なども360度掲載することで、より多くの情報を顧客に届けられるのもポイントです。

教育機関での利用

小学校や中学校における避難訓練でも、VR防災コンテンツは役立つと思います。避難訓練や防災訓練を面倒に思う生徒や、意味を十分に理解していない低学年の生徒であっても、VRという現代的なアイテムを通して発信することで、関心を高められるかもしれません。

VRゴーグルなども必要に応じて利用すれば、より立体的、実践的な訓練を行うことができると思います。ゲームのようなイメージを持たせることで入り口は広く設けつつ、中身は真剣な防災コンテンツにすることで、関心を高められるのではないでしょうか。

消防や警察での訓練

市民だけではなく、消防や警察といった公的機関においてもVRコンテンツは大きな力を発揮できるのではないかと考えています。災害が起きた際の避難誘導ルートをVRで事前共有したり、不測の事態を想定した対策練習を行ったりできると思います。

医療機関などでもVRを取り入れた研修や手術練習が行われている例もありますし、既に現在のVR技術は、我々が思っている以上に高度なシチュエーションでも対応できるのだと思います。

公益財団法人もVR技術を支援

公益財団法人としても防災技術の発展、向上は重要課題だと考えており、東京都中小企業振興公社では、「先進的防災技術実用化支援事業」という事業を実施しています。

この事業に関する説明は以下の通りです。

都内事業者が自社で開発した、都市防災力を高める優れた技術・製品・試作品の改良・実用化に要する費用の一部を助成するほか、その後の普及促進も支援します。

先進的防災技術実用化支援事業|東京都中小企業振興公社」(最終閲覧日:2018年12月27日)

VR防災訓練システムはこの支援事業の後押しを受けている開発の一つです。つまり、VRを用いた防災訓練システムは、都市防災力を高める優れた技術であると認められたことになります。現状ではまだまだ認知度の低いサービスかもしれません。しかしこれから先、暮らしの安全にVRが関わってくる未来が訪れる可能性は、決して低くはないでしょう。

終わりに

災害に対する防災意識というのは、どうしても時間の経過と共に薄れていってしまいがちです。だからこそ、VRという身近なコンテンツを土台に警鐘を鳴らし続けることが重要なのではないかと考えさせられました。防災に関する冊子や写真といった二次元的な情報だけではなく、よりリアルな映像体験で災害というものを把握するということにも、高い効果が期待できます。

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