これからの教育はVRによる遠隔授業。技術で埋める距離という問題
映画『スターウォーズ』シリーズでは、ホログラムで映し出された相手と遠距離で通信を行う技術が登場しますが、VRやARはそれを現実のものとしています。遠隔地にいる相手とも、目の前にいるかのように通話や会話が行えるようになることで、教育にも新しい発展が望めるはずです。今回は、VRやARが教育現場に応用できそうなシチュエーションや、そのメリットについて考えていきます。
本記事の内容
身振り手振り、そして距離感が持つ力
相手の声だけが聞こえる通話と、相手の姿が見える対話では、教育に与える影響は全く異なります。
特に身振り手振りの影響は大きいです。口だけで上手に伝えられないことや、感情面の強弱を表現するのに、身振り手振りは非常に有効だからです。日本人同士の対話でもそうですが、相手が海外の人となれば、その影響は更に大きくなるでしょう。
ボディランゲージが使えない通話では、単純な英語力に依存する部分が大きいですが、体全体を使うことができれば、コミュニケーションのハードルそのものが下がります。また、身振り手振り以外にも、VRやARには距離感という強みも存在します。
現在でもVR、AR技術以外に『Skype』、『zoom』、『LINE』、グーグルの『ハングアウト』など、相手の顔を見ながらコミュニケーションを取れるツールは幾つか存在します。
しかしそれらはいずれもビデオチャット形式で、平面的な画面に過ぎません。それでもコミュニケーションツールとしての力は十分にありますが、どうしても埋められない距離感というものが存在します。
対話や会話において、この距離感というのは想像以上に重要なものとなってきます。相手が目の前にいるかのような体験ができるVR、ARはこの点において、他の追随を許さない突出したものがあるでしょう。
VR、AR教育を実用段階に移そうとする例も
VR、AR教育に関心を示している企業も多く、開発に力を入れているところも存在します。最近の例で言えば、H2L株式会社が、腕に巻くだけで直感的にVR、AR体験ができるデバイスの開発を、2018年の10月に行いました。
出展
[プレスリリース]スマホVR/ARデバイス「FirstVR」で、連携企画による遠隔教育を開始 – FirstVR
上記はまだプレスリリースが発表されて間も無く、今後更に改良が加えられるかもしれませんが、実は5年も前から研究が行われてきた製品だそうです。同社の研究は極秘に進められてきたそうですが、他にも同様の分野に目をつけている企業は沢山あると思います。
やはり身振り手振りがコミュニケーションの一部に加わることを強みとしているらしく、遠隔教育手段の広がりに期待を寄せています。
VR、AR教育が活きる環境
続いて、実際にVR、ARによる教育手段を取り入れた場合、どのようなシチュエーション、業界で役立つのかということを、具体的に考察していきます。
全国に展開している企業
全国、または全世界に広く展開している企業の場合、教育機関が限られているというケースも少なくありません。
「配属先は岐阜県ですが、最初の研修期間は本社がある東京か、関西の支部に通ってください」
上記は一例ですが、求人広告で似たような文言を目にしたことがあるという人も多いのではないでしょうか?サービス業などの、本社と現場が完全に分けられている企業でよく見られる印象です。
他にも、教育指導ができるスタッフが常駐している場所が限られていると、こういったことが起こります。
また、地方の社員を本社に呼び出さなければいけないような場合でも、VR、AR技術で代替できる機会が増えるかもしれません。
海外の危険地域
海外の中でも、紛争地域や危険地域に派遣されているスタッフと対話を行いたい場合、VR、AR技術はとても便利です。安全に対話を行うことができますし、臨場感も損なわないで済みます。
また、そういった地域の子どもたちに学習環境を提供する際にも、この技術は非常に役立つのではないでしょうか。アフリカなど、貧困国の教育に携わりたいけれど、実際に危険地域へ赴くのは家族や恋人が賛成しないという人もいると思います。
そんなときでも、デバイスを向こうの国に送り、遠隔で教育を行うことができれば、リスクもなく、環境も整うので理想的です。同様に医療現場などでも、離れた場所から適切な処置の指示を出すことができます。
このように、VRやARの技術は海外での汎用性が非常に高く、多くの可能性を感じることができます。
国外の人との語学学習
遠隔地にいる人との語学学習においても、VR、AR技術は役立ちます。文中でも述べた通り、身振り手振り、そして距離感がもたらす影響は侮れません。特に、片方が語学初心者である場合には、一層身振り手振りに頼ることになるでしょう。
緊張感を緩和する意味でも、臨場感のある距離感はとても大切です。国内で語学教室に通うという手段もありますが、それではどうしてもお金がかかってしまいます。ですが、インターネットで出会った相手と共に勉強をするのであれば、コストもかかりません。
日本語を学びたいという海外の人も大勢いるので、日本語を教える代わりに英語を教わる、などのギブアンドテイクもネット上であれば成立するでしょう。そんなとき、VR、AR技術は学びのモチベーションになってくれるはずです。
スポーツの指導
最後はスポーツ指導です。身体を実際に使うスポーツでは、口頭だけで技術を伝えきれないという難しさがあります。
例えばボールの握り方や足の向き、力の入れ方や細かいフォームなど、スポーツによって様々なポイントがあると思いますが、その全てを言葉だけで伝えるというのは至難の技です。
しかし身振りや手振りを加えて教えることができるのであれば話は別です。教わる側としてもイメージがしやすいですし、吸収率も格段に上がっていくでしょう。
有名なコーチなどが、遠隔地にいる生徒や、離れた場所に散らばっている複数の生徒を対象に教える場合などに、VR、AR技術は有効です。実際にコーチを呼ぶよりも手間がかからないので、依頼する際のコストも抑えられるかもしれません。
また、この方法であれば天気などの影響を受けないというのも強みです。屋内でも教えることができるので、中止や延期などといったリスクも回避しやすくなるでしょう。
終わりに
遠隔教育は間違いなく、今後多くの分野で取り入れられていくことでしょう。ビデオチャットとは違う、もっとリアルなコミュニケーションツールとして徐々に注目度も増していくのではないかと思います。企業、語学学習、危険地域、スポーツ、様々な分野での活躍が期待できますが、今後もその動きから目を離せません。
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