宇多田ヒカルのライブがVRで楽しめる。現実のような厚みを実現

筆者:阿久津 碧

PlayStation4用ソフトウェアとして、宇多田ヒカルさんのライブをVRで楽しめるコンテンツ『Hikaru Utada laughter in the dark tour 2018-“光” & “誓い” – VR』が配信されました。1月18日には渋谷で、開発者によるトークイベントも催されたとのことです。第一線で活躍する一流アーティストとVRの融合によって、どのような科学変化が起こったのでしょうか。

参考:http://www.utadahikaru.jp/news/detail.html?id=502986

難しかったのは映像の厚み

映像ディレクターの竹石渉氏によると、今回はとにかくライブの厚みを表現するのに苦労したそうです。

同氏は「ミュージックビデオはアーティストや曲のメッセージをクリエイティブに表現して視聴者を楽しませますが、今回はツアーのシーンを無垢なままVRで表現しなくてはならず、難しかった」とも語っており、その苦労がうかがえます。

宇多田ヒカルさんが歌っている様子や映像というのは、当然従来のビデオカメラでも表現することが可能です。しかしその映像を立体的に届けるには限界があります。そしてその問題を克服するために選ばれたのが、VRなのです。

目の前で宇多田ヒカルさんが歌っているかのような体感をするために、業務用4Kカメラ、そして映画撮影用の6Kカメラを組み合わせて撮影は行われたそうです。

撮影現場自体も明るい方ではないので、カメラには高い性能と解像度が求められることになります。その上、撮影対象は動き回るわけですから、難易度も上がります。

光の少ない環境だと、カメラによってはノイズが出てしまうこともあるので、今回の撮影現場は難しい条件が沢山揃っていたと思います。それらに気を使いながらも、映像の厚みを徹底的に追求した本作は必見です。

歌手本人もVRで映像チェック

VR用コンテンツの制作なので、当然映像のチェックも普通の動画撮影とは異なります。現場では常にリアルタイムのVR映像を確認できるように、今回のために環境を整えたそうです。

映像チェックをするために複数人のスタッフがヘッドセットを装着しているというのはなんだかシュールですが、未来的でもありますね。

宇多田ヒカルさん本人も、撮影中に自身の映像をヘッドセットで確認する場面があったそうです。今後こういったコンテンツがどんどん増えていくとすると、このような場面も日常的なものになっていくのかもしれませんね。

没入感へのこだわり

映像ディレクターの竹石氏は、今回の制作で没入感にもこだわったのだとか。VRと言えばそもそも没入感を強みとしていますが、音響やカメラワークにも力を入れることで、一層映像に対する入り込み具合を上げたようです。

ライブは特に映像や音が重要になりますから、コンテンツを楽しむ側としては、ここに力が入れられているというのは嬉しいですね。1センチ単位でカメラワークを調整したことで、今までは気付かなかった宇多田ヒカルさんの細かな癖を発見し、圧倒的な臨場感を実現することに成功しました。

実際のライブのように一箇所からしか見ることができないというものではなく、3つのアングルからライブが楽しめるのも見どころです。ライブらしさを残しながら、VR映像の長所も活かした理想的なコンテンツと言えます。

そもそも今回は、事前に8年ぶりとなるツアーを行ったこともあり、ファンの間でもVRライブに対する注目度が高まっています。だからこそ、生のライブと今回のコンテンツが比較される場面も出てくるでしょうし、今後の評価からも目は離せません。

キングダムハーツと宇多田ヒカル

宇多田ヒカルさんと言えば、累計出荷本数2,500万本以上の超大人気ゲーム『キングダムハーツ』シリーズの主題歌を発売当初から担当していることでも有名です。

これには、世界最大のキャラクターコンテンツであるディズニーとタッグを組めた以上、タイアップする曲にも最高のアーティストを起用しなければいけない、という同シリーズのディレクターである野村哲也氏の考えが反映されています。

また、宇多田ヒカルさん自身も大のゲーム好きということもあり、当初難航すると思われた交渉はスムーズに進み、現在に至ります。こうして運命的な出会いを果たした宇多田ヒカルさんとキングダムハーツですが、今回のコンテンツにおいても、両者には深い関係性があります。

『Hikaru Utada laughter in the dark tour 2018-“光” & “誓い” – VR』という名前からお気付きの方も多いと思いますが、今回の作品は過去のツアー『Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018』の中から、キングダムハーツのテーマソング『光』と、『KINGDOM HEARTS III』のエンディングテーマ『誓い』の2曲を収録したものです。

最高のゲームとアーティストがタッグを組んだからこそ、今回のコンテンツが生まれ、完成に至ったと思うと何だか感慨深いものがありますね。彼女の歴史や今回の制作過程、こだわりを知ってから見ると、アーティスト宇多田ヒカルをもっと好きになること間違いなしです。

数々のアーティストがVRライブを導入

宇多田ヒカルさん以外にも、多くのアーティストがVRに注目しています。同様に、音楽配信を行なっているプラットフォームも、この波に続々と乗っています。

大手携帯キャリアでお馴染みのNTTドコモは「dTVVR」というプラットフォームを2016年に立ち上げ、多くのアーティストのVRライブ映像を配信しています。40台ものVR用カメラで撮影されたVRライブ映像は圧巻です。

他にも大手CDショップチェーンの「タワーレコード」が47組にも上るアーティストのライブVRコンテンツを「M∞CARD(エムカード)」と銘打って販売しました。

女性アイドルグループの「ももいろクローバーZ」がVRライブを配信したり、きゃりーぱみゅぱみゅさんがワールドツアーをVRコンテンツとして公開したりと、VRの勢いは止まりません。

更にはボーカロイドや二次元アイドルなども続々とVRコンテンツの作成に乗り出しているので、今後はあちこちでVRライブを見る機会が増えそうです。

終わりに

これまでのような2D映像では再現できないような厚みや立体感、生々しさをVRライブでは味わうことができます。しかしこの技術は全てのアーティストにマッチするというわけでもありません。

ただ単にライブと最新テクノロジーを掛け合わせればいいというのではなく、その背景にあるストーリーや発表のタイミングなども考えながら、現存のものより価値が生まれるようにしなければいけない。今回の作品の制作スタッフの方々は、そこまで深く考えながら作品と向かい合っていました。その想いの中に私は、音楽体験の新たな未来が垣間見えたような気がしました。

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