VRは注目株。VR用揺さぶりイスや歩行装置で大学がリアルを追求

筆者:阿久津 碧

広島市立大学などが、VRゲームやコンテンツなどと合わせて使用できる「揺さぶりイス」の開発を行いました。仮想現実の中で起こっている動きなどを実際に体感できるため、よりリアリティが増すことになります。現在は製品化を目指して改良中ですが、今後は様々な施設で活用されるかもしれません。

揺さぶりイスの構造

揺さぶりイスは、半球と受け皿を合わせたものでイスを支え、それとは別に2本のシリンダーでイス本体を釣り上げるという構造で作られています。

日刊工業新聞によると、「搭乗者といすの重心が低いため、起き上がり小法師のように搭乗者を揺さぶる。体全体を持ち上げて揺するよりも小さな力で済む。いすの回転角度は前後左右いずれも25度で、振れ幅は50度。搭乗者が揺らされると身体がしなるため、頭部の振れ幅は90度近くなる。新たにいすとシリンダーの接続部に回転継ぎ手を採用して、動きの表現を広げた。」とのことです。

出展

「搭乗者を揺さぶるいす、広島市大が開発 VRコンテンツ向け | 科学技術・大学 ニュース | 日刊工業新聞 電子版」

大量製造化とコスト削減のためには、半球の製造方法見直しがネックとなるようで、現在は切削加工(除去加工ともいう)と呼ばれる、対象物を削り出して形を作る加工方法で製造されています。

これではどうしても手間暇がかかってしまうので、金型を用意する方向で製品化を目指しているようです。

将来的にはテーマパークの小型化も可能か

VR揺さぶりイスの販路としては、テーマパークやアミューズメントパークといった施設が候補に挙がっています。

VRゴーグルに映し出されたジェットコースターの搭乗映像を反映してイスを揺らしたり、振動を加えたりすることができるため、揺さぶりイスはアトラクションとの組み合わせが容易です。

実際のジェットコースターと比較して、メンテナンスの手間や危険性も格段に下がる上、スペースを必要としないという特徴があります。

今後更に没入感を高くするために、高低感や風、音響などに力を入れれば、それだけで小さなテーマパークが完成します。

スペースレスの利点は大きく、都会にテーマパークをオープンするなど、従来では不可能だった計画を実現することもできるようになるでしょう。

大型デパートのゲームコーナーにジェットコースターやコーヒーカップがあれば、遊園地よりも気軽に訪れることができますし、とても魅力的ですよね。

広島市立大学のその他の研究

今回VR揺さぶりイスの研究に携わった広島市立大学の脇田助教は、他にもVR関連の設備開発に力を入れています。

その中でも注目したいのが、歩行装置です。これまでのVRゲームでは、専用のゴーグルを装着することでリアルなゲーム世界を体験することは可能でしたが、移動という面では圧倒的にリアリティが欠けていました。

目で見えている世界はリアルなゲーム空間なのに、その中にいる自分の移動は手に持っているコントローラーで行わなければいけないので、どうしても再現性に難があるのは仕方がなかったとも言えます。

そしてこの問題を解決するために、様々な商品が開発されています。以前の記事でご紹介したフットコントローラーもその一つです。

移動を足で行え、ハンディキャップを持つ人でもゲームが楽しめる画期的な商品でしたが、現在脇田助教らが開発しているのは、その大型版といったところです。

荷重センサーを搭載したドーナツ型のクッションの中に入ることで、上げた足や進みたい方向をセンサーが感知します。これによって、ゲーム内でも自由に歩き回れるようになったのです。

装置自体の直径は1メートル程度ですが、実質的にゲーム内での自由な歩行を実現することに成功しました。

前述したフットコントローラーに対して、こちらはある程度スペースを要するため、今後はまず施設を相手に提案していくそうです。

VRベンチャーの立ち上げ

今回ご紹介した揺さぶりイスや歩行装置は、ビジネスに繋げやすい製品だと言うことができます。実際今後は、ベンチャーを立ち上げていき、事業化する計画も進んでいるそうです。

これは一例で、今後は更にVRベンチャーの勢いは増していくのではないかと考えています。特に日本のような狭い国においては、巨大なテーマパークをいくつも作る余裕はありません。

しかしVRアクティビティやアトラクションであれば、限られたスペースでも安定して展開することができますし、コストも抑えられます。また、天気などに左右されることもないので、どのような天候でも安定した集客を見込めるのも強みでしょう。

他の大学でもVR関連開発は盛んです。東京工業大学では、大学院生と教授が協力して「消臭機能付き嗅覚提示ヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)」というものを開発しました。

これはVR世界にリアルな香りを付け足す効果をもったヘッドマウントディスプレーです。4DX映画にも同じような仕掛けがありましたが、この装置もVR映画などでの運用が期待されています。

東京工業大学が今後この製品をどのように展開していくかは未定ですが、大学生や研究者がVRを軸に会社を立ち上げるというのが、今以上に当たり前になる時代がやってくるかもしれませんね。

終わりに

これまでも自宅で利用できるVR関連製品や、アミューズメントパークで使われている様々な設備をご紹介してきましたが、それらを通して改めて実感するのは、振動や、それを伝えるイスの重要性です。USJ(ユニバーサルスタジオジャパン)にあるライドアクションなども、3D映像と乗り物の振動で、見事なリアリティを実現していました。VRも同様でしょう。映像やゲームの中に引き込むためには、外からの衝撃が鍵となります。その課題がクリアされれば、今以上にVRは流行るはずです。今回の開発は、その大きな一歩だと感じました。

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