VRで巡る農業ツアー。360度カメラで見える新たな世界

筆者:阿久津 碧

農林水産省の発表によると、日本の農家戸数は68万戸以上減少しており、深刻な問題となっています。そんな農業問題について、多くの人が考えるきっかけとなるイベントが昨年の11月に行われました。「VRで巡るTOKYO農業~360°の驚きの体験~」と銘打たれたこの試みは、人々の意識をどう変えたのでしょうか。

JA共済が開催する最新型農業体験

昨年2018年の11月6日から5日間の間、冒頭にも述べた「VRで巡るTOKYO農業~360°の驚きの体験~」というイベントがJA共済によって開催されました。

このイベントではドローンを使用して撮影された映像をVRで公開するという試みが行われました。日頃農業や畑に縁のない人にリアルな現場の光景を届けることに成功し、大いに意義のある催しとなったのではないでしょうか。

映像内ではクイズなども出題され、正解者にはJA共済のグッズが贈られるなど、後学や知識としてだけではなく、イベントとしても楽しめる内容となりました。

都内の農家の姿を届ける

農家や畑と聞くと、地方の県を想像してしまいがちですが、関東や都内にも様々な農家が存在します。今回のイベントでも、そんな東京の農家にスポットが当てられ、奥多摩や葛飾の畑が映像資料として紹介されました。

日頃都心で過ごしているような人は、電車で30分も移動した場所に畑が存在するということすらも知らないかもしれません。今回のイベントは、そんなある種の当たり前に気付くきっかけになったのではないでしょうか。

公開されたVRコンテンツは主に3つのブロックに分かれていました。

【1】「東京の主な農業」編

葛飾区の農地に焦点を当て、ナスやキュウリの栽培について紹介しています。葛飾区と言えばすぐ近くの墨田区に東京スカイツリーがありますが、畑についてはあまり知られていません。

都会の景色が溢れる中に畑が混じっているという光景は、とてもアンバランスながらも美しい光景です。この他に稲城市の農業についても、映像では紹介されています。

イベントでは「稲城」や「高尾」という名をつけられた梨やブドウの畑が、住宅の間に設けられている映像を見ることができました。産地の名前が食べ物にもしっかりとついており、東京ブランドとしての地位を確立しています。

【2】「東京の農地活用」編

2つ目の映像では、東京の農地活用について説明しています。東大和市と青梅市の様子を見ることができ、実際に農家として生計を立てている人たちが主導となって、体験農園などを開いている様子が紹介されます。

種まきや肥料の塩梅、ネットの設置方法など、実践的なことを講師として教えている姿を見ることができます。家の庭や僅かなスペースでも、小さな畑を始めてみたいという需要は少なからずあると思います。

しかし実際の方法は知らないという人も多く、こういった体験農園などの試みが、農業への間口を広げる運動となるのではないでしょうか。

また、青梅市では休耕地を利用して、JAが大豆などを栽培するなどの土地活用をしていることが紹介されます。限られた土地を眠らせておくのではなく、有効に利用していくことで、土地も鮮度が保たれるのでしょう。

3】「東京にもある自然豊かな農業」編

最後の映像では、東京にある豊かな自然の映像とともに、そこで行われる農業が映し出されました。青梅市で見ることのできる、一面に広がる水田の映像や、奥多摩のワサビ田が舞台です。

美しい水が流れる川のすぐ側にある山の斜面で育つワサビは、栄養もたっぷりです。東京にも、こんなに自然豊かで、新鮮な野菜を育てられる場所があるということに驚いた人も大勢いたと思います。

奥多摩や青梅市について、漠然と「自然や森が多いところ」という認識をしていた人はいるかもしれません。しかしそこで行われている農業活動や、見ることのできる広大な自然について、正確に理解している人はあまりいません。

それは大きな問題であると同時に、とても勿体無いことだとも思います。休日に足を伸ばせば簡単に辿り着ける場所に、こんなにも美しい景色が広がっている。その事実を一人でも多くの人に知ってほしいと私は思いました。

JAによる販売なども

同イベントではVR映像やクイズの他に、パネルを利用した「防災」、「環境」、「食」などの発表も開かれました。

これによって、農業に従事している農家の人々が、どのような想いでその仕事に携わっているのかということ。そして農地が持つ多面的な特徴を、より明確に伝えることに成功しました。

さらにJAが選んだレトルトカレーやドレッシングの展示販売なども行われ、見所が目白押しとなりました。農業について知りたくても、知る機会がなかったという人にとって、今回のイベントは大きな収穫となったでしょう。

日本の農業問題で解決すべきことは沢山ありますが、まずは一人でも多くの人にそのことを知ってもらい、興味を抱いてもらうことが重要です。その上で、正確にイメージを届けられるVRや360度映像というのは、とても心強いツールです。

実際の農地に行けなくとも、そこで起こっている出来事をリアルなものとして体験ができる、こういった取り組みが今後も積極的に開催されるといいですね。

終わりに

農業の問題は我が国が抱える深刻な課題の一つです。改めて強調しますが、農業の現状、農家の減少、食べ物のありがたさなどを知るためには、まず何よりも実際の光景を見るということが重要です。しかし現実的なことを考えると、それは簡単なようで、中々ハードルの高いことなのでしょう。自分たちが住んでいる身近に農家があり、そこで様々なものが育てられている。そんな知っているようで知らなかった事実に目を向けるきっかけを、VRは与えてくれたのかもしれません。

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