VR技術で交通意識を変える。VRによる交通安全体験動画

筆者:阿久津 碧

2004年以降、自動車による交通事故は減少傾向にあります。しかし依然としてその件数は40万件を切らず、深刻な問題となっています。自動車事故を減らすためには、人々の意識改革が不可欠となりますが、今回そのことで、VRを用いた取り組みが大分県で行われました。

カーメイトと大分県警察本部が動画をアップ

カー用品メーカーとして有名な株式会社カーメイトと大分県警察本部が共同で【VR交通安全動画】という名前のVR動画を、動画投稿サイトのYouTubeにアップロードしました。

【大分県警】あおり運転【VR交通安全動画】

大分県警察の公式チャンネルで公開された上記の動画はVRに対応しており、リアルな交通事故の疑似体験をすることが可能です。今回の動画撮影では「ダクション360S」というドライブレーコーダーが利用されました。

ダクション360Sについては過去の記事でもご紹介したので、そちらも良かったらご覧ください。

動画はモバイル端末からも視聴可能

今回公開された動画は、スマートフォンなどのモバイル端末からも視聴することが可能となっています。

・自転車

・横断歩道

・車対車

上記の3つのテーマから動画は作成されており、様々な交通事故シチュエーションを想定しています。目線に関してもリアリティを追求しており、歩行者や自転車、ドライバーなど、様々な角度のものが用意されています。

少しでもリアルな目線になるよう、カメラの配置についても気を遣っているので、VRゴーグルを用いた際のリアリティも中々のものです。

車を運転しない子どもには歩行者目線。自転車によく乗る人には自転車目線など、その人の移動手段に合わせた動画を用意しているので、自分に当てはめながら動画を見ることができるようになっています。

動画の作成元はカーメイトと大分県警ですが、YouTubeにアップロードされている動画なので、勿論全国の人が気軽に視聴できます。県内の交通安全教育だけではなく、全国に対してもプラスの影響を与えてくれるかもしれませんね。

スケアードストレートに代わる安全教育になるか

元々大分県では中高生の自転車事故を問題視しており、中学生は平成29年度で92件、高校生では140件以上の自転車事故が年間で発生していました。

出典

交通統計 – 大分県ホームページ

これに対して、従来であれば一部の学校をターゲットに、スケアードストレートと呼ばれる、スタントマンを呼んでの事故再現を通して交通安全教育を行ってきました。

この方法は、1970年代のアメリカで青少年犯罪を抑止する考えで生まれた安全教育方法で、元を辿れば刑務所訪問ツアーでした。ただ日本においてこの方法は「サーカスやエンターテイメントと変わらない」、「恐怖で縛り付けても意味がない」とする考え方もあります。

スケアードストレートで見せる事故の再現は印象的ではありますが、どこか見世物っぽかったり、断片的な角度からのものになってしまったりするのかもしれません。

対してVRを用いた交通安全動画は、ヘッドゴーグルを着用すれば没入感が増しますし、実際車内にいるかのような疑似体験をすることができます。

勿論この方法でも、結局アトラクション感覚で見てしまうという人もいるので、最後は視聴者の意識に委ねられる部分はあります。しかしスケアードストレートのような俯瞰的視点ではない、一人称の視点で事故を体験できることの意義は少なくないと、私は思っています。

結論としては、スケアードストレートにはスケアードストレートの良い部分があり、VR動画でカバーできない領域もあるので、どちらが優れているかという見方ではなく、どちらも違った交通事故抑止の効果があると考えた方が良いのかもしれません。

免許センターなどでも導入するべきか

私は個人的に、今回のような動画は免許センターなどの場所でも積極的に見せていくべきだと考えています。例えば車の免許取得時の座学などでもそうですが、それ以外の場面でもタイミングはあります。

免許の更新時などもその一つです。現在は免許の更新時に、ドラマ仕立てのビデオなどを見せて安全意識や事故時の対応などを伝えています。この方法も非常に有効だと考えているからこそ、VR安全動画も導入してみてはどうかと思うのです。

全国の免許センターにVRゴーグルなどを導入するコストはどうしてもかかってしまいますが、事故減少や抑止という観点ではとても意味があるのではないでしょうか。

その他にも人命救助のテストや、災害時の対応など、VRが安全意識の働きかけに対してできることは沢山あるでしょう。エンタメ分野ではスポットを浴びているVRですが、こういったシリアスな場面ではまだまだ注目度が薄い気がします。

VRだからこそ生み出せるリアリティが、今後は今以上に多くの場面で活躍すると思います。そういったスタンダードの先駆けとしても、この記事でご紹介したVR交通安全動画は、興味深いものでした。

終わりに

VRと組み合わせた交通安全動画は、全国でも初の試みだったそうです。動画の完成度なども素晴らしいですが、交通事故を取り締まるだけではなく、根幹からなくしていこうとする動きを民間と警察が協力して行なったということが何よりも大きな動きだと思います。交通事故は誰にとっても他人事ではありません。自分だけは大丈夫だと思うのではなく、常に気を引き締めて行動しよう。今回の動画は、そんな気持ちにさせられました。

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