ARアプリで自然災害を擬似体験。安全意識の強化に技術が貢献

筆者:阿久津 碧

ARアプリで浸水被害を擬似的に体験することができる教育が、岐阜県で行われました。地震大国として有名な日本は、様々な災害と隣り合わせです。そして何かが起きた際に迅速な行動を取れるようにするためには、我々一般市民の意識がとても重要になります。今回はそんな防犯意識に関連したニュースをご紹介します。

ARで浸水体験

今回は岐阜県岐阜市の中学校で、生徒たちがARアプリを用いて擬似的に浸水被害を体験するという教育が行われました。参加者は舞台となった本荘中学校の1年生生徒100名と、地域住民の方です。

ARとは拡張現実のことで、簡単に言ってしまえば、実際に存在する風景に、バーチャルな映像を重ねた映像体験のことを指します。今回は学校の体育館が舞台になったので、生徒たちの目線では実際の体育館が浸水しているように見えたのではないでしょうか。

AR体験をする際には専用のゴーグルを着用する必要があり、そのゴーグルを見ている人だけがAR体験をできるので、周りで見学している人からしたら不思議な光景だったかもしれません。

今回は実際の光景に1.3メートルの高さまで水が入ってしまったことを想定したAR画像が表示されました。また、それに加えて地面にはパイロンなどの障害物を配置しています。

生徒たちは浸水映像で見えなくなっている足元に注意しながら、障害物を避けて進む体験をしました。実際に水害が発生した場合、このレベルの冠水や浸水が発生するということは十分にあり得ます。

水に流されて、日頃はそこに存在しない様々なものが道路や歩道に転がっている可能性も考えられます。映画などの出来事ではなく、リアルに起こりうるシチュエーションだからこそ、体験した生徒たちにとっても貴重な経験となったでしょう。

水害時の危険性について生徒も実感

教育を通して、実際に浸水体験をした生徒たちも災害に対して関心を示していたようです。浸水して水かさが上がると、日頃自分たちが目にしている町並みとは全く違うものになり、その危険性は一気に増します。

側溝に足を取られたり、蓋がなくなったマンホールに落ちたりする危険性もあるので、とにかく水かさが高いところに近づかず、早めに避難をすることが大切です。

岐阜新聞のインタビューを受けた本荘中学校1年生の川尻侑那さんは「障害物が見えにくく進みづらかった。水害時はすぐに逃げられるよう準備したい」と話していました。

生徒によって感じたことは異なると思いますが、危険性や避難の重要性を伝える上では、とても効果的な教育だったのではないでしょうか。

アプリは愛知工科大教授と研究グループが開発

ARを用いた災害擬似体験アプリは、愛知県蒲郡市にある愛知工科大の板宮朋基教授と、その研究グループが行いました。

以前当サイトで執筆した別の記事では、広島大学などがVR用の歩行装置やゆさぶり椅子を開発したという話をご紹介しましたが、今回のARアプリも大学主導の開発です。

教育の最先端である大学という機関も、VRやARという技術に対して強い関心を抱いているということが分かります。

ちなみに前述した広島大学のケースでは、ベンチャー企業の立ち上げという事業化計画も視野に入れており、大学発信のVR研究が、ビジネス方向でも活躍できる可能性が十二分にあることを感じ取ることができました。

ARアプリが今回の自然災害擬似体験実習に漕ぎ着けた経緯としては、ドコモCS東海(名古屋市)との連携協定や、同社の岐阜支店が災害教育に協力してくれたことなどがありました。

二つのケースは方向性としては異なりますが、共通して言えるのは、両方とも世間が強い関心を示していて、様々な分野における可能性があるということです。

災害前、災害後のARやVR

災害が起こる前、起こった後の両方において、VR技術やAR技術が活躍する場面があり、それは今後の災害との付き合い方を大きく変えてくれるものだと私は考えています。

例えば、これも別の記事で触れることになりますが、福岡県では360度カメラの「THETA」を、管内の21事務所に配備しました。これによって災害が起こった際の情報を、一早く近県や他の組織に共有するという狙いがあります。

この取り組みは災害発生初期でのVR技術、並びに360度カメラの活躍。本稿でご紹介している擬似災害体験は、災害発生前におけるAR技術の活躍です。

どちらもアプローチの方法は異なりますが、人々の災害に対する意識や、発生時の対処に大きく影響するものとなっています。

大切なのは技術に依存するのではなく、自分で正しい判断をして行動に移すことです。しかしその決断を助ける上で、技術が人々に与えてくれる影響というのも計り知れないものです。

災害と隣り合わせの国だからこそ、技術とも二人三脚で歩み、知識や意識といったものを上手に育んでいきたいと強く思いました。

終わりに

防災意識や安全意識を育む上で、ARやVR、360度カメラにできることは無限にあります。今回の試みもその一つでしたが、教育機関などで行う防災訓練でも、こういったイベントをどんどん取り入れていくべきではないでしょうか。何かを知ったり、それを実際に体験したりすることには、大きな価値があります。中学生だけではなく、小学生などにも早い段階からこういった災害時の光景を教え伝えることはとても大切だと思いました。

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