戦争の凄惨さをVRで伝える。兵士の視点で見る戦場のリアル

筆者:阿久津 碧

私たちは平和な毎日を過ごす一方、世界では争いや戦争が絶えません。ですが「海の向こうでは人々が苦しんでいる」とか、「争いが絶えない」と言われても、それを慮るというのは簡単ではありません。だからといって、そういう問題を全く考えないのも問題です。案外そんなふうに思っている人は少なくないのか、歴史理解や体験の手段として、今VRへの注目が集まっています。

リアルな兵士の体験ができるVR

実際にアフガニスタンやイラクに従軍したScott England氏の体験を元に、リアルな兵士体験ができるVRコンテンツが話題となっています。

映画やドラマとは違う、本物の兵士視点から見た戦争の様子や、残酷な現場を体験できるこのコンテンツは、VR映像スタジオのRYOTと、VRアーティストのタッグで実現しました。

戦争体験というとFPSのようなものをイメージする人が多いと思います。実際VRの没入感を活かした、FPSコンテンツは数多く存在し、多くの人々の人気を集めています。

しかしそれらはあくまでゲームであって、エンターテイメントです。今回の試みはそういったものとは全く異なる、歴史理解に力を入れた作品となっています。RYOTは元々VRの没入感を活かしてジャーナリズム作品を多く手がけてきました。今回もその得意分野を活かしたコンテンツで、人々の心に気付きを与える映像を製作したのです。

このVR映像の特徴は、戦場以外の「その後」もしっかりと伝えているところです。具体的には、帰還兵が患うPTSD(心的外傷後ストレス障害)などの精神的病や、その他のストレスについての解説です。戦地で戦った兵士の戦争は、帰還してもまだ続いているのです。

その戦いや、苦しみを支える家族の苦悩など、通常では中々知り得ない部分まで学ぶことができるコンテンツは、世界でもそれほど多くはないでしょう。

このVR映像は360度画面で体験することができます。時間にしておよそ20分ほどですが、イラクやアフガニスタンで起こった事実やPTSDを患う経緯などを、実際戦地に赴いたScott England氏のナレーション付きで体験できます。

当サイトの別の記事では、VRを用いたPTSDの治療についても触れています。治療方法の一つとしてVRが注目されており、その研究が進んでいることについてご紹介していますが、そちらも合わせてお読みいただくと、この問題をより深く理解できるかもしれません。

VRとジャーナリズム

VRで歴史や戦争を学べるということから、VRの報道ツールとしてのポテンシャルについても考えることができます。ジャーナリズムとの相性もいいでしょうし、表現手段の一つとして大きな力を持っているのではないでしょうか。

VR映像による資料は、文章やドキュメンタリー映像、映画などとも異なる体験をもたらしてくれます。平面的に眺めるのとも、文字として読むのとも違うVRは、文字通り出来事を体験することができます。

高い没入感は戦地のリアルをダイレクトに届けますし、心に呼びかけるものがあります。人々に気付きを与え、世界で起こっていることについて考えてもらうという意味では、大きな効果を発揮するでしょう。

そういった信念をもって、YouTubeなどの動画サイトに戦争動画や、VR関連の映像をアップロードしている例もあります。今回ご紹介したRYOTの動画もYouTubeで観ることができます。

RYOTの動画はコチラ

こういったものも含め、今は気軽に情報を入手できる時代です。ですがそれらを能動的に吸収している人はまだ多くありません。正直私もその一人です。しかし、VRという勢いのあるデバイスが、そのきっかけになれば世の中は少しずつでも変わっていくのではないでしょうか。

教育などでも役立つ可能性も

こういったVR動画は、教育現場などでも活躍する可能性を秘めています。歴史を学ぶ上で、リアリティは興味の動機になるはずです。ただし刺激に対する耐性もあるので、段階的に試みることも重要だと思います。

私が小学生の頃は「はだしのゲン」のアニメを授業中に見せられ、そこで初めて戦争というものを知りました。以来図書室で同作の漫画を読み漁ったり、社会の教科書を読んだりしました。

中学に上がってからは、NHKが製作した「映像の世紀」という歴史ドラマが授業中に流されました。恐らくこの順番が逆だったら、小学生の頃の私はショックを受けていたでしょうし、社会の授業が嫌いになっていたと思います。

リアルな映像だから見せればいいというわけではなく、適切なタイミングで見せることが重要だと、自らの経験から痛感しました。VR映像も同じです。興味と耐性のバランスを上手に見極められれば、VRは瞬く間に教育現場に浸透していくでしょう。

教科書や写真だけで見ていると限界があったり、伝わりきらなかったりするかもしれません。そのための補助として、映像やVR体験というものが役立つはずです。

入り口は「面白そう」でも構いません。それが考えるきっかけになれば、人々の意識は確実に変わります。技術を活かした教育というのは、私たちの平和に大きく関連するものなのかもしれません。

終わりに

VR技術の発展で、これまでとは異なるVRの役立て方が続々と出てきている印象を受けます。本文でも述べた通り、教育の面でも今後はこういったリアルなコンテンツが役立つ部分は必ず出てくると思います。世界唯一の被爆国の国民として、「VRと戦争」というテーマは意義のある内容だと感じました。

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