買い物が変わる。VRで香りも体験できる仮装店舗をNECが開発

筆者:阿久津 碧

リアルな映像体験をもたらしてくれるVRですが、一方でその技術には弱点もありました。その一つが香りです。VRショッピングなどのプラットフォームが徐々に育ってきていても、香りという課題から、匂いのあるものの購入はやはり実店舗で行うしかありませんでした。ところが今、VRの数少ない弱点である香りという問題すらも克服されつつあります。

香りを感じられるシステムをNECが開発

2019年の2月4日にNEC(日本電気)が行なった発表によると、VR店舗の中で商品の匂いも体験できるシステムを開発したそうです。

これまでの仮装店舗では実現しなかった試みで、大きな注目を集めています。この技術は元々、ベンチャー企業のVAQSO Incのもので、今回はそれを活用した形でショッピングシステムを開発しました。

1月に開催された「春季フードコンベンション2019」でも出展されており、実用に向けて着実に調整が行われています。

香り付き仮装店舗の仕組み

香り付きVRと聞くと、気になるのはその仕組みです。香りを体験するために、VRヘッドセットにはカートリッジが取り付けられており、API経由でその匂いを発生させています。

ただ闇雲に香りが発生するのではなく、VR上のストアとデバイスが連動しているため、発生する香りもVR世界に忠実です。

「春季フードコンベンション2019」では食べ物の匂いを連動させて伝えましたが、VR世界でリンゴを手に取ればリンゴ、バナナを手に取ればバナナの匂いがしっかりと伝わってきたそうです。

商品情報だけではなく雰囲気を伝える

人間の五感においても、嗅覚が果たす役割はとても大きなものです。そしてその嗅覚をVRがカバーしたことで、商品だけではなく、その場の雰囲気を伝えることも将来的には可能になるかもしれません。

例えば靴屋には靴屋、スーパーにはスーパーの匂いがあると思います。私もお寿司屋に入ったときには、魚や酢の匂いが漂ってきて「寿司屋に来たなぁ」という気持ちになります。

単純にお寿司単体の匂いを伝えるよりも、ずっと没入感が上がりますし、食欲やイメージを刺激すると思います。そういったことも、香り付きデバイスの研究が進んでいけば現実のものとなるでしょう。

靴屋のVRショップを覗いたらゴムや革の香りがして、スーパーのVRショップでは、野菜などの匂いが鼻から入る。そんなリアリティを実現することができれば、VRネットショップでの買い物も盛んになるのではないでしょうか。

同時に、応用できる分野も格段に増えると思うので、買い物だけではなく、アクティビティなどでも活躍すると思います。森の中が舞台のゲームで木々の香りがしたり、海辺の世界では潮の香りがしたりするなどといった具合です。

化粧品業界でカートリッジの提供も?

私がこのニュースを耳にしたとき、真っ先に思い浮かんだのは化粧品業界のことです。百貨店などの化粧品売り場に足を運んだ経験のある方ならご存知だと思いますが、AR技術で化粧品の使用イメージを見ることができるサービスなどは普通に売り場に存在します。

「この化粧品でメイクをしたら、こんな仕上がりになる」というのはこの機能のお陰でなんとなくイメージできますが、それだけでは不十分です。口紅やリップ、シャドウといった化粧品には香りがするものも少なくないからです。

そしてその香りも購入の際の決め手にしている消費者が一定数います。そこで思い付いたのですが、ARで化粧品の使用イメージができることに加えて、VRで香りも試せたら、もっと気軽に化粧品をオンライン上で購入できるのではないでしょうか。

化粧品関連で言えば香水もそうです。リピートならまだしも、使ったことのない、どんな香りかも分からない香水をオンライン上で購入するという人は中々いないでしょう。しかしVRショップで香水の香りも分かれば、わざわざお店まで足を運ぶ必要はありません。

化粧品や香水の香りは複雑で、恐らくバナナやリンゴの香りを再現するよりも難しいでしょう。そこで、化粧品メーカー各社がVRユーザー向けに、香水や化粧品の香りを再現したカートリッジを提供し、ショッピングを後押しする未来が訪れるのではないかと考えました。

これは一つの仮説に過ぎませんが、こういうことをビジネスの一環として行う業界は少なからず出てくると思います。多少の手間はかかるかもしれませんが、売り場の負担を減らしたり、人件費の削減に繋げたりできるのであれば、無駄な労力と割り切ることもできないからです。

IoT化に伴うVRの進化

今回のようなシステムも含め、リアルな体験を提供するとなると、気になるのはその通信方法です。将来的には、進化したVRデバイスの能力を引き出すために、5Gの力が必須になるはずです。

香り付きデバイスが実用化されるのはまだもう少し後になると思いますが、その側には常に通信システムの整備という課題が寄り添っていると思われます。逆に言えば、5Gが実用化されれば、VRの進化も一気に進むかもしれませんね。

そのときには匂いなどの嗅覚だけではなく、他の五感もリアルに再現できるようになるかもしれません。香り付きデバイスは始まりに過ぎず、これからも仮想現実のリアリティは増していく。

そんな時代が訪れたときには、VRは仮想現実ではなく、もう一つの「現実」になっているのかもしれません。

終わりに

正直、VRに関しては「匂い」や「臭い」という問題が相当なネックになると考えていました。それが2019年の初めにこうもあっさりと解決の兆しを見せ、正直とても驚いています。これが実用化されることで、VRの一般化は更に加速するでしょう。

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