ANAのVRによる新たな取り組み。客室乗務員に向けたVR訓練

筆者:阿久津 碧

全日本空輸(ANA)は様々な場面でVRを活用した取り組みを行っています。どのような取り組みを行っているのかについて詳しくは後述しますが、今回メインテーマとして取り上げるのは、VRを用いた客室乗務員向けの訓練についてです。最新技術を活用した訓練とは一体どのようなものなのでしょうか。

危険な現場をリアルに体験できるシステム

ANAが導入した客室乗務員向けのVR訓練では、火災などのトラブルを想定して、緊急時にはどのような対応をするべきかをリアルに体験できるシステムが構築されています。このシステムは日本電気(NEC)が開発しました。VR映像を使って訓練するシステムを導入したのは、航空業界でこれが世界初だそうです。

飛行中の火災や急減圧といった緊急事態への対応について、これまでは訓練施設にある模型などを用いて指導を行ってはいたものの、実際に火災や急減圧を再現することは難しく、リアリティに欠けていたことは否めません。

学校や企業などで行われる避難訓練もそうですが、災害が起こった状況を想像するのはなかなかに難しいことです。そうかと言って実際に火事を起こしたり、水害を体験したりすることは当然できませんし、仮に実施するとコスト面での問題が浮上します。

そこでそういった訓練にリアリティや効率化を求める上で、VRを活用するのは非常に効果的です。ANAがこの訓練を導入した結果、得られた効果は十分にあったようでした。最も大きな魅力は、何度でも訓練を体験することができるという点でしょう。

何度も復習ができる

この訓練を導入して得られた最大の効果として、何度も繰り返して訓練を行うことにより、実務の手順が定着しやすくなるということが挙げられます。

この訓練は初め、2018年に入社した新人客室乗務員約800名に向けて試験的に導入されました。先述した結果を踏まえて、2019年4月に新規オープンする客室乗務員の訓練施設「ANA Blue Base(ブルー・ベース)」ではこのVR訓練が本格導入されるそうです。

実物大の模型を使わずとも、限られたスペースでリアルな訓練体験ができるため、今後の訓練生にとって恵まれた環境が整えられたと言っても過言ではないでしょう。ブルー・ベースで本格導入される際は、VRゴーグルに中国レノボの「Mirage Solo(ミラージュ・ソロ)」が採用されるそうです。

受講生が現実世界で起こすアクションも、VR空間に反映できるようになるそうなので、よりリアリティのある訓練体験ができるようになることでしょう。

ANAのVRを使った取り組み

VR訓練だけではなく、ANAはVRを用いた取り組みを数多く行っています。その1つが以前別の記事でもご紹介した「ANA VIRTUAL TRIP」です。これはVRの技術を使うことで、様々な事情で旅行に行けない人も擬似的に旅行が体験できるというものです。

身体に障害があって長距離移動ができない方やお年寄りの方、仕事や介護などがありその場を離れることができない方など、気軽に旅行をすることができない人はたくさんいます。そんな人たちのためにANAは360度カメラで有名なリコーや、ビジネスVRの分野で活躍するナーブと協力し、このサービスを打ち出しました。

実際に旅行に行く人には専用のスマートフォンと360度カメラ「RICOH THETA」を持ってもらい、旅行に参加しない人は専用スマートフォンがセットになったVRゴーグル「CREWL(クルール)」を使ってもらうことで、まるで一緒に旅行に行っているかのような体験ができます。

航空会社ならではのサービスに、VR技術を加えることで、多くの人に役立つサービスを展開できていますね。他にもANAは「ANA AVATAR」という事業も展開しています。

この取り組みは以前ご紹介した凸版印刷とTISが共同開発している、遠隔共有技術に似ているものがあるのではないかと思います。ANA AVATARは、物理的に離れた場所にいても、あたかもその人物がそこにいるかのような感覚をもたらす技術です。

2018年の段階では研究を続けている状態だそうですが、2019年4月以降は早くも何らかの形でサービス化を試みたいと発表しています。ANAが最新技術にかける情熱や興味が強くあることを、このような情報から受け取ることができます。

大手の企業だからこそ他の企業とも協力して、これからも最新技術の進化に貢献してもらえたら、我々の生活にも、また新たなプラスの変化が生じるのではないかと感じます。

既にAVATAR事業は様々なデモ展示も行っており、技術の進歩を垣間見せています。VRヘッドセットにカスタマイズされた釣り竿を使って、遠隔地にある釣り竿にかかる反応を体験することができる「ANA AVATAR FISHING」や、VRヘッドセットとロボットアームを組み合わせて体験する「ANA AVATAR DIVING」など、技術を使って様々な体験が身近でできるようになる研究が盛んに行われています。

上記のようなデモ展示が、身近なサービスとして登場するのがとても待ち遠しいですね。そのままの形でなくとも、違うサービスに流用されて目にする日が遠からず訪れるかもしれません。

終わりに

客室乗務員や訓練生に向けたVR訓練は自社のためのものですが、訓練の効率化ができたことで、消費者もより安心して飛行機に乗ることができそうですよね。自社のためのものだけではなく、ユーザーに向けて多くの研究や実証実験を行っているANA。これからも最新技術を駆使した事業に注目です。

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