「THETA Z1」発売が5月へ延期。その理由と驚きの性能とは
リコーが手がける全天球カメラ「THETA」シリーズの最新作「THETA Z1」の発売日が、当初の3月下旬から5月24日に変更されることが発表されました。その理由と、最新型全天球カメラの魅力について、発売前に改めておさらいしていきましょう。
本記事の内容
最終調整のための発売延期
今回の発売延期に関してリコーは「予定している性能を実現するため、最終調整にさらなる時間を要する」と説明しています。
THETA Z1は従来のTHETAシリーズと比較して大幅な性能アップが行われており、企業としてもこの開発に相当力を入れていることがうかがえます。
発売日に間に合わせることも大切なことかもしれませんが、中途半端な完成度では市場に送り出せないという想いがそれに勝ったのでしょう。
一度発表していた新製品の発売日を変更するということ自体相当勇気が必要なことだと思うのですが、それだけに5月が待ち遠しくもありますね。THETAの新作を待ち望んでいるユーザーとしても、より完成度の高いものが手に入るのを楽しみにしていることでしょう。
価格はこれまでのシリーズでは最高額の11万円前後とされていますが、機能もそれに相応しいだけのものを備えています。個人のカメラファンだけではなく、テレビ番組やメディアを製作、運営しているような法人もターゲットとしたスペックになったといえるでしょう。
RICOH THETA Z1製品紹介ページはコチラ:https://thetaz1.com/ja/
「THETA Z1」の注目ポイント
これまでのシリーズで最高性能、最高価格となるTHETA Z1ですが、具体的にどのような部分がパワーアップしたのか、改めて確認してみましょう。
新開発のレンズユニット
新製品の開発に際して、リコーは新開発のレンズユニットを採用しました。これによって従来よりも大幅にゴーストやフレア、フリンジを抑制することに成功しました。
それだけではなく、23MP(メガピクセル)という高画質で360度動画を保存できるようになりました。THETAシリーズは入手しやすい低価格と引き換えに、これまでは画質の面に不安がありました。
従来の機種も決して画質が悪いということはなかったのですが、あらゆる用途に対応できるかと問われると疑問符の残るものでした。今回のZ1はその問題を軽々と吹き飛ばしたと思える画質や性能になっています。
RAW保存を実現
せっかく高画質で撮影を行うことができても、保存の際に圧縮されてしまうのでは意味がありません。Z1はシリーズの中でも初めて、RAWで保存ができるようになりました。
これによって生のデータで撮影写真を保存できるので、編集の幅が広がりますし、撮影時の美しさを損なうことがありません。
撮影データをそのまま鑑賞するのもいいですが、動画などのために編集したり、レタッチしたりするのにも適しているので、プロアマを問わず様々な用途に対応できます。
優れたデザイン性
Z1はこれまでのシリーズと比較すると、一回りくらい大きくなった印象を受けますが、大まかなデザイン性には変更がありません。
優れたデザイン性と手に馴染む曲線、直感的に扱えるボタンは健在で、初めて全天球カメラを購入するという人でもすぐに使用方法を覚えられそうな形状をしています。
素材もマグネシウムをベースにしており、有機ELパネルを採用するなど、高級感に溢れています。パネルでは撮影残り枚数や電池残量、設定などを確認することができ、操作性が向上しました。
サイドにはFn(ファンクション)ボタンを新たに採用し、セルフタイマーと通常撮影の切り替え、パネル表示や消灯・消音切り替えなどをワンタッチで行えるようになり、貴重な瞬間も録り逃すことはありません。
回転ぶれ補正アルゴリズムの見直し
これまで通りの4K撮影機能を維持しつつ、新たに回転ぶれ補正アルゴリズムの見直しが行われました。これまで以上に精密な全天球撮影を実現し、自然な360度写真を撮れるようになりました。
設定面でも絞り優先やシャッタースピード優先、ISO優先などを細かく操作できるようになり、思いのままの撮影が行えます。既に一眼レフカメラなどを所有していてマニュアル撮影に慣れている人にとっては、この機能はとても嬉しいのではないでしょうか。
全天球カメラでありながら、従来のカメラと同様に近い操作性を実現し、自由な撮影が行えるようになっているので、ワガママな要求にも応えてくれるはずです。
1.0型大型イメージセンサー
Z1は本体が大きくなっただけではなく、搭載しているイメージセンサーも1.0型と、大きなものになりました。
イメージセンサーとは、光の明暗を電気信号に変換する半導体素子のことなのですが、フィルムカメラでいうところのフィルムの役割を果たしています。
デジタルカメラではレンズの大きさとセンサーの大きさは写真の画質に直接的に関係してくるので、非常に重要になってきます。
1.0型のセンサーを搭載したZ1の場合、従来よりも大幅に画質も向上し、光量が足りない夜景などの撮影にも強くなりました。
最高ISO感度は6400を誇っており、同様に光量が少ない室内撮影などにおいてもノイズを大幅に低減してくれるようになりました。
3D空間音声
360度の映像を撮影することができても、マイクが一方向からの音声しか拾ってくれないのでは、リアリティに欠けます。「THETA」シリーズでは、今回のZ1やTHETA Vで「3D空間音声」という、4方向にマイクを採用する機構が採用されています。
映像だけではなく音声も360度からのものを正確に記録することで、よりリアルな映像体験を実現することができます。音響設備の完備された大型スクリーンや、VRヘッドセットで映像を体験する際にも、没入感の高さを味わうことができるはずです。
ハイクラス全天球カメラのパイオニア
現在の全天球カメラ市場には、今回の「THETA Z1」と同じくらいの価格帯、性能のものは国内外を問わず恐らく存在していません。高価な部類でも「Insta360」や「ダクション360」、「THETA V」の4〜5万円台といったものが一般的です。
その中で6桁台の販売価格を提示する商品を世に送り出すというところに、リコーの力の入れ具合が見えます。そして価格以上にパワーアップした性能は間違いなく業界の注目を集めるでしょうし、全天球カメラのハイエンドモデルとして、パイオニア的な存在になるはずです。
Z1の発売以前から、もっとハイクラス、ハイスペックな全天球カメラをリリースしてほしいという声は市場にありました。その中には商業カメラマンや報道関係者という、いわゆるプロのものも多く混ざっていました。
そういった層がZ1を購入し、仕事などの場面で安定的に採用してくれれば、全天球カメラそのものに対する社会の注目も上がるのではないでしょうか。海外メーカーも力を入れている全天球カメラ開発ですが、その中で国内メーカーを代表するリコーが世界に与えた影響は、大きいものとなったでしょう。
それは同じ全天球カメラに対してだけではなく、一眼レフカメラやデジカメ、GoProなどに対しても同様です。「THETA Z1」は記録するためのカメラではなく、表現するためのカメラとしての能力を十分に有しています。そのことが生み出した波紋を、カメラ業界全体がどのように捉えるのか、とても楽しみです。
終わりに
これまでのTHETAシリーズの場合、やはり画質が一つの課題だと私は考えていましたが、文中でもご紹介した通り、Z1では見事にその課題をクリアしています。その他の点でも文句のないスペックを発揮しており、本当に発売が待ち遠しい機種の一つです。Z1が様々な層に利用され、360度カメラが今以上に大きな話題を呼ぶことを願っています。
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