新しい観戦方法が誕生?次世代のスポーツ観戦はVRでどう変わるのか

筆者:阿久津 碧

スポーツ観戦と言えば、試合会場に直接赴くか、テレビ中継されているのを見るのが当たり前でした。しかし今、スポーツ観戦に新たな選択肢が加わろうとしています。5Gを活用したVR技術によって、仮想現実の世界でもスポーツ観戦ができるようになったのです。

ソフトバンクのVR野球観戦

ソフトバンクは今年、福岡のヤフオクドームにて、抽選で選ばれた10名を対象に、5Gを用いた野球のマルチアングルVR観戦の実証実験を行いました。選ばれた10名は福岡ソフトバンクホークスのファンクラブから選出され、その他にも球場に招かれたメディア関係者が試合をVRで観戦するという体験をしました。

次世代移動通信システム、通称5Gの商用サービスが2020年に開始されると言われている中、ソフトバンクも後れをとらない姿勢を見せています。VR観戦の対象試合となったのは、広島東洋カープVS福岡ソフトバンクホークスのオープン戦です。

VR空間でも他の観客の歓声や、球団の応援歌などが大迫力で味わえたそうです。さらには「マルチアングル」VR観戦ということで、ユーザーは様々な角度から野球を楽しむことができました。バックネットや一塁側、三塁側、ライトスタンドと4視点を自由に変えることができ、従来のスポーツ観戦では不可能なことを5GとVR、2つの技術を使うことによって可能にしました。

試合の映像は5Gを用いてVRヘッドセットに伝わります。臨場感を壊すことなく、さらには視点を変えて観戦することができるので、野球好きにはたまらない空間であることは間違いないでしょう。さらにVR空間に再現されたのは、VIP専用の観覧席である「スーパーボックス」です。

VR空間内では複数人が同時にスポーツ観戦することができます。今回の実証実験ではVR空間内に5人が同時にアバターとして出現し、コミュニケーションを行ったり、野球観戦を楽しんだりしました。VR空間でのスポーツ観戦が主流になれば、離れた場所にいる人物同士がVR空間で同じ時間を共有し、野球やサッカーなどのスポーツ観戦を行えるようになるのではないでしょうか。

今回の実証実験で使用されたカメラはパナソニックの「LUMIX GH5」です。視点の切り替えが可能な4カ所に、それぞれ2つ設置されたカメラは右目用と左目用の映像を分けて撮影しています。生で見るときと同じようなリアリティを再現するために、こういった小さな点にもこだわりが感じられます。

従来の観戦方法とは違い、選手との距離も近くに感じられるので、より迫力や緊張感のある観戦になったのではないでしょうか。

VRスポーツ観戦の見所

ソフトバンクのVR野球観戦の概要をご紹介しましたが、その中でも多くの魅力的なポイントが発見できたかと思います。ここでは更に、範囲をスポーツ全体と広く設定し、VRを活用することで野球以外のスポーツ観戦はどのように変わるのか、その見所を考察していきます。

今までにはない視点で観戦できる

従来は試合会場の特定の席に座って観戦するのが普通でしたが、VRスポーツ観戦では様々な視点から観戦を楽しむことができます。ソフトバンクの例でもありましたが、カメラがいくつかの場所に設置されているため、好きなときに視点を切り替えて、今見たい瞬間を目に焼き付けることができるのです。

席に座って全体を見渡すのではなく、より選手と近い距離で試合を楽しむことができたら、もっとスポーツ観戦が盛り上がりそうですね。テレビ的な部分と現地的な部分をいいとこ取りで楽しめるので、スポーツ全体の振興に大いに役立ちそうです。

じっくりと選手を観察できる

様々な視点から観戦を行えるようになることで、選手の動き一つひとつも今までよりじっくりと見ることができるようになるでしょう。ソフトバンクの実証実験では、選手の球筋が見えたというファンの方もいたそうです。選手のボールの打ち方や投げ方がまじまじと観察できるのはファンとしてとても嬉しいことですよね。体操やサッカー、その他のスポーツでも、プロの技術を心ゆくまで堪能できるに違いありません。

遠方の試合も見に行ける

試合会場が遠方でどうしても行くことができない。テレビで中継を見るしかない。そんな場合でも将来的にはVRを使えば、どこでも臨場感のある試合を観戦することができるようになるのではないでしょうか。先にも述べましたが、技術の進歩によって遠く離れた場所にいる人とも、一緒にスポーツ観戦が楽しめるようになると思います。5Gの普及とVRヘッドセットの一般流通がもっと盛んになれば、最終的には家にいても、離れた場所に住む友人と大迫力のスポーツ観戦ができるようになるかもしれません。

ソフトバンクの実証実験では、VR観戦のために女性のナビゲーターが登場しました。将来的にはAIやARの技術を使ったキャラクターやキャスターなんかが出てきてもおかしくないでしょう。VRを使うことに不安や抵抗感のある人にとって、ナビゲーターは重要な役割を果たしてくれそうです。

終わりに

VRスポーツ観戦はまだまだ進化するはずです。今は研究開発が進められている段階なので、5Gの不安定さや臨場感の追究、VR酔いの予防策など、課題点も多くあります。着実に実用化へと研究開発が進んではいるものの、5GやVRヘッドセットをどのように一般家庭へ定着させていくのかも課題です。少しずつ変わっていく日常に対して、人々がどういった反応を見せるのかも含めて、注目していきたい開発テーマですね。

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