一休が「THETA 360.biz」を導入。観光資源や施設の宣伝に

筆者:阿久津 碧

旅行でホテルや旅館を予約する際、写真と実際の建物にどれくらいの違いがあるのかという点は、誰しも少なからず気になるのではないでしょうか。「写真で見た感じと、実際に見た建物が全く異なるものだった」、「想像以上に汚かった(綺麗だった)」ということを体験したことのある人も多いはずです。そんなイメージと現実のギャップを、全天球カメラが埋めてくれるかもしれません。

「THETA 360.biz」と一休の共同制作コンテンツ

株式会社リコーが販売する全天球カメラ、THETAを利用したクラウドサービス「THETA 360.biz」が宿泊予約サイトの「一休」に提供されることが2019年の4月に決まりました。
参照元:
https://www.theta360.biz/news/2019-04-23-638/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000128.000003544.html
利用先としては、株式会社一休が運営しているWEB型のトラベルマガジン「一休コンシェルジュ」の名前が出ており、特集として【「一休コンシェルジュ」×「RICOH THETA」こころに贅沢な絶景時間】という企画が4月23日より配信されています。

既に第一弾は公開されており、屋久島のリゾートホテル「sankara hotel&spa 屋久島」が取り上げられました。後述しますが、この企画ではホテルや旅館などの施設だけではなく、全天球カメラによる観光スポットの撮影も行われています。

今後更に多くの企画が組まれることで、全国にある高級ホテルや旅館、観光スポットの魅力が多くの人に伝わることに期待したいですね。

撮影者には女性インフルエンサーを採用

今回の企画を行うにあたって、カメラの撮影者には人気女性インフルエンサーを採用するという試みを行いました。360度画像という旬な題材を、WEBマガジンというネット上で扱うからこそ、インターネット上での知名度が高い女性を採用したのかもしれません。

屋久島の記事では滝口杏耶さんという、読者モデルとしても活躍しているインフルエンサーライターの方が担当しましたが、第二弾、第三弾でも同じ方が担当するのか、別のインフルエンサーライターが出てくるのかというところにも注目です。

第一弾の企画に関しては以下のページから見ることができるので、是非そちらもチェックしてみてください。

【滞在記】屋久島の自然に癒される贅沢なリゾートステイ | 一休コンシェルジュ:https://www.ikyu.com/concierge/33480

記事を見ていただければ分かりますが、全ての写真が全天球カメラで撮影されているわけではなく、要所要所で360度画像を用いるという方法を採用しています。

そのおかげで、重要な写真や見ごたえのある写真を一目で判断することができます。客室の様子が分かる写真と、自然豊かな観光地の写真。最初の記事ではその二つだけが全天球カメラで撮影されていますが、読者にとってもこの二つが最も知りたい部分であり、360度で見たい箇所だと思います。

的確なタイミングで的確な枚数の全天球画像を盛り込むということは、記事そのものの美観を損ねないという意味でも、ピンポイントで有効なマーケティングを行うという意味でも非常に有効なことなのでしょう。

周辺観光施設の全天球画像も掲載

一休コンシェルジュの企画では、ホテルや旅館といった宿泊施設だけではなく、周辺にある観光スポットの紹介も行なっています。第一弾では、ガジュマルや白谷雲水峡など、屋久島の自然が迫力のある写真とともに紹介されました。

宿泊施設の情報にとどまらず、周辺情報も網羅されていることで、ホテルを予約する側の人にとっては参考になる部分も多いのではないでしょうか。どこかへ旅に出たいけれど、具体的な場所や、それぞれの土地の観光資源が分からないという人にとっては、とてもありがたいことだと思います。

今後記事が増えていく中で、都道府県別や、ジャンル別で観光地を見られるようになったら、更に使い勝手や見ごたえもアップしそうですね。豊かな自然だけでなく、寺社仏閣など、建築物を全天球カメラで紹介する様子にも個人的には興味があります。

「THETA 360.biz」の新しい需要

これまで「THETA 360.biz」は不動産業界を中心に使われており、物件情報を360度のパノラマ画像で見ることができたり、VR内見をしたりといったサービスを展開してきました。ですがリコーは今回の技術提供をきっかけに、今後は積極的に宿泊業界への導入も進めていきたいという考えを発表しています。

利用者に対して旅行に関する情報をあらかじめ見られるようにすることで、旅に出るハードルを下げる効果も出てくるはずです。今回の企画では一休との共同制作コンテンツということもあり、主に高級ホテルや旅館を対象としていましたが、ビジネスホテルなどにも需要があるのではないでしょうか。

ビジネスホテルなどは価格も安く泊まれることから、画像と現実のギャップが生まれやすくもあります。そのような悪い意味でのギャップを少なくするために、360度カメラは大いに役立ってくれることでしょう。一休のような宿泊予約サイトだけではなく、個々のホテルにも「THETA 360.biz」を採用してもらえれば、全天球画像を見かける機会はもっと増えていくかもしれません。

もしそうなれば、360度カメラが業界を盛り上げる役目を担うということも今後は増えていくでしょう。その副産物として、360度画像を見た消費者が全天球カメラに興味を抱くということも出て来るでしょうから、製品や性能を知ってもらう意味でもプラスになるはずです。

ホテルや旅館はごまかしが難しくなる

宿泊業にとっては、全天球画像の導入が全て良い方向に進むというわけではありません。「THETA 360.biz」を導入することで、ホテルや旅館はごまかしが難しくなるからです。これまでは撮影の角度などで客室を大きく見せたり、意図的に一部分を撮らなかったりすることで、都合の悪い部分を隠すことができました。

もちろんごまかすという行為はいいことではありませんが、集客を図るためには仕方のない部分もあります。しかし全天球カメラを使うとなると、そのごまかしは効きません。

絶景スポットなどであればいいですが、古いビジネスホテルなどにはこの点がデメリットになってしまう恐れがあるのでしょう。隠したい場所、古くなって傷んでいる場所が全て全天球画像に映り込んでしまうからです。穿った考えをするなら、誤魔化しをする必要がないからこそ、今回の一休の企画は高級ホテルや旅館が対象になったのかもしれません。

反対に利用客としては、大変なメリットとなるでしょう。考え方によっては、「全天球画像を掲載しているホテル=正直なホテル」になる可能性もあるでしょうし、そうなれば全天球画像を掲載していることで信用される時代が来るかもしれません。

旅行者にとっては、様々な情報を事前に知ることができるのはメリット以外の何者でもありませんが、経営者にとってはメリットだけで済まされない部分というものが出てきます。これらは仮定の話ではありますが、もしも実現したら、ホテルの生き残り戦争も激化する可能性があるかもしれないですね。

終わりに

せっかくの旅行だからこそ、ホテルや旅館選びでは失敗をしたくないですよね。その上で、今回ご紹介したようなサービスは、旅行者の不安を和らげるのに大いに役立つのではないかと感じました。宿泊施設側にとっても、物件や周辺観光地の魅力をこれまで以上に伝えられる手段となるので、プラスの影響を与えてくれるはずです。全天球カメラ×宿泊業界は、今後の東京オリンピックなどに対しても、追い風を巻き起こしてくれることでしょう。

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