THETAをカスタマイズしよう。プラグインストアで性能を底上げ

筆者:阿久津 碧

リコーが販売する全天球カメラ「THETA」シリーズの中には様々な価格帯のものが存在し、初心者向けのものから上級者向けのものまで幅広く取り揃えています。その中でもミドルレンジモデルに位置する「THETA V」には他の機種には存在しないプラグインストアが存在します。THETAにおけるプラグインストアの意義や、その活用方法にはどういったものがあるのでしょうか。

2018年の6月からプラグインストアを開設

実はリコーは、THETA V向けのプラグインストアを2018年の6月28日に開設していました。既に開設から一年近くが経過していますが、改めてその概要を見ていきましょう。

プラグインストアの正式名称は「RICOH THETA プラグイン パートナープログラム」というもので、プラグインの開発や登録を行う場合には登録が必要となります。全く出所が分からないプラグインが横行するよりも、各々の開発者がはっきりしている方が利用者も安心ですよね。

RICOH THETA Plug-in Partner Programhttps://api.ricoh/products/theta-plugin/

※上記はユーザーではなく、開発者向けのページとなります。

冒頭でTHETA Vはミドルレンジモデルだとご紹介しましたが、元々はリコーが手がける全天球カメラの中では最上位の機種でした。10万円を超えるモデルとしてTHETA Z1が発表されて以降、必然的に中級機となりましたが、その性能は折り紙付きです。

Z1もプラグインには対応しているので、正確にはTHETA VとZ1向けのプラグインストアという表記が好ましいのかもしれませんが、当初はV向けに開設されたストアであることから、そのように表記しています。

ショップで購入したカメラが、パソコンやスマートフォンのように機能を追加できるというのは画期的なことだと思います。AndroidベースのOSを採用したことで、自由度の高い仕上がりになったTHETAだからこそできるサービスといえるでしょう。

プラグインをインストールするのは、本体そのものをアップデートするのとは意味が異なりますが、実質的な底上げがなされるということに違いはありませんし、THETAユーザーの人からしたらメリットしかありません。

開発者を支援する目的でストアは用意されていますが、リコーがリリースしている純正のプラグインも勿論存在します。いきなり知らない開発者のプラグインを使うことに抵抗があるという方は、先ずはそちらから利用してみるのも良いでしょう。

パートナープログラムへの登録方法

プラグインの開発者としてパートナープログラムに参加するためには、まず開発用のTHETAを用意する必要があります。THETAの本体にシリアル番号が記載されているのですが、申請にはその写真が必要になります。

それを経てリコーによって審査が行われ、認定されると晴れて登録完了となります。プログラム開発に際してリコーのオンラインサポートというのが利用可能になるのですが、登録したTHETAは通常のサポートからは外れるので、その点には注意が必要です。

プログラムの開発にあたって、開発用のTHETAには実験的に様々な変更が加えられることになるので、仕方ないともいえるでしょう。

プラグインのインストール方法

プラグインのインストール方法はTHETAのサイトでも確認できますが、とても簡単です。最初に付属のケーブルを使って、PCとTHETAの接続を行います。次にプラグインストアへとアクセスし、インストールしたプラグインの「ダウンロード」ボタンを押して、パソコン上に入れましょう。

RICOH THETA Plug-in Storehttps://pluginstore.theta360.com

この際、対応している機種がプラグイン毎に異なるので、自分のTHETAのモデルが目的のプラグインに対応しているか、確認してください。特に問題なければ自動的にパソコン用の基本アプリ「RICOH THETA」が起動します。

ここまでできたら、後は画面の案内に従って操作を行うだけです。インストールにはアプリのバージョンを3.6.0以上にしておく必要があるので、事前に済ませておきましょう。

リコー純正のプラグイン

開発者が提供しているもの以外に、リコーが提供している純正のプラグインが数種類ありますが、その内容を見ていきましょう。

Self-timer locked(セルフタイマー固定)

セルフタイマーに関連するプラグインです。電源を入れた状態でモードボタンを長押しすると、静止画・動画をセルフタイマーで撮影することができるようになります。

本体が剥き出しの状態だけでなく、別売りの水中ハウジングケースTW-1を付けた状態でも撮影モードの切り替えが行えます。

Wireless Live Streaming(無線ライブストリーミング)

Wireless Live Streamingを用いると、無線LANアクセスポイントに接続すればパソコンを使わずにライブストリーミングが行えます。

出先で映像の配信を行いたいと思っても、通常はパソコンなどの機材を別途用意する必要があります。ですがこのプラグインを用いれば、THETA一つでどこからでもライブストリーミングが行えてしまうのです。

パソコンが必要ないだけでなく、スマートフォンなどの端末も必要としないため、文字通りTHETA一つで完結します。配信場所に無線環境が整っていない場合には別途ポケットWi-Fiなどを準備しなければいけませんが、荷物が大幅に減ることは間違いありません。

Automatic Face Blur BETA(自動顔ぼかし β版)

個人的にはこの機能が一番魅力的だと思いました。自動顔ぼかしのプラグインは、撮影画像に映り込んでいる人物の顔を認識し、自動でぼかしを入れてくれるプラグインです。

観光地などで全天球画像を撮影する場合、不特定多数の観光客が映り込んでしまいますが、その一つひとつにモザイクを入れていく作業は地味に面倒なものです。

このプラグインがあればその手間は大幅に減りますし、不特定多数のプライバシーを守ることができます。また、自分の顔をネット上にアップロードしたくないという人にとっても、このプラグインはぴったりです。

特に全天球カメラの場合、セルフタイマーなどを用いない限りはほぼ確実に撮影者の顔が映り込んでしまいます。撮影場所の紹介はしたいけれど、自分の顔はSNS上などに見せたくないという人は、是非このプラグインを利用してみてください。

Remote Playback(リモート再生)

リモート再生のプラグインを入れれば、THETA本体をリモコンにして、撮影データをテレビなどのモニタで楽しむことができます。全方位をダイナミックに撮影した動画や写真を、携帯の中だけに置いておくのももったいないですからね。家族や親戚などが集まったときに、皆で想い出を振り返るのもいいかもしれません。

USB Data Transfer(USBデータ転送)

これもTHETAの操作性を大きく向上させる画期的なプラグインです。THETAはシリーズを通して内部メモリを採用しているのですが、これを面倒に感じているユーザーも多いのではないでしょうか。

メモリーカードを用意したり、紛失したりすることがない点は非常に便利なのですが、代わりに本体からスマートフォンやパソコンにデータを移動させなければいけないという手間が存在します。

USB Data Transferを利用すれば、本体の写真をUSBメモリに移動・コピーすることが可能になります。無線LANを用いてスマートフォンに転送したり、いちいちパソコンにバックアップを作成したりする手間がなくなるので、出先などでもスピーディーに本体の空き容量を確保することが可能になります。

上記は純正のものになりますが、これ以外にも様々なプラグインが用意されているので、興味がある方はそちらも確認してみてください。「THETAは魅力的だけど、この機能がないから購入に踏み切れない」という、あと一歩を解決するプラグインも存在しているかもしれません。

終わりに

多くの全天球カメラの中でも、これほどオリジナリティの高いカスタマイズが行える製品というのは、国内外を見ても珍しいのではないかと思います。既存の製品に概ね満足ではあるけれど、細かい不満を感じている。あと少し改善されれば完璧なのに。そう感じている人にとって、プラグインストアの存在は非常にありがたいものなのではないかと思います。様々なプラグインを吟味して、自分にマッチしたものを入れながらTHETAをカスタマイズしてみてください。

Like@Wrap
Follow@Wrap

スポンサーリンク