THETA 360.bizの「災害クラウド(仮)」実証実験

筆者:阿久津 碧

昨今は度重なる自然災害を受けて、人々や国の防災意識も日増しに高まっていますが、その中で360度カメラにできることも徐々に増えています。360度カメラの中でも代表的な機種であるリコーのTHETAは、数ある全天球カメラの中でも国内の災害問題に対して積極的に協力しており、常に新鮮な試みをしています。

「災害クラウド(仮)」にリコーが協力

2019年4月、リコーの発表によると、一般財団法人日本建設情報総合センターに対して、自社が販売している全天球カメラ「RICOH THETA」と、クラウドサービス「THETA360.biz」の提供を行いました。

一般財団法人日本建設情報総合センターは、国土交通省九州技術事務所から委託された実証実験を行うことになったそうですが、それに際してリコーの製品とサービスが鍵となったようです。

後述しますが、災害クラウドの主な機能は、災害時に被災地の様子を迅速に、且つ正確に記録した上で多くの人に共有するという部分に重きが置かれています。その上で360度全方位を撮影できるTHETAと、その撮影画像を共有することのできるTHETA360.bizはうってつけの組み合わせでした。

「災害クラウド(仮)」とは

「災害クラウド(仮)」とは、災害に被災した際に「RICOH THETA」で現場を撮影すれば、その画像をすぐにアップロードして共有することができる防災システムのことです。

アップロードされた画像は地図上にプロットされ、複数人が同時にその情報を閲覧できるようになっています。急を要するような災害現場でも、リアルな状況を遠方の人に素早く、そして広く知らせることができるという特徴を持っています。

従来であれば電話やメールを用いて個別に状況を知らせるという方法が一般的でしたが、この方法ではどうしても対応が後手に回り、最終的な指示が下るまでにタイムロスが生まれてしまいます。

その間にも現場の状況は常に変化しますし、悪化するケースも珍しくありません。責任者が捕まらず、現場で動けないということもあるでしょう。「災害クラウド(仮)」はそれらの問題を解決する上で画期的なシステムです。

被災地の状況をメールや電話といった文章や音声ではなく、360度の写真で確認することができるのも素晴らしいですが、地域全体で起こっている問題も、地図を見れば一目で把握することができるという点が特に優れています。

これらは現場の優先順位や対処の順番を決めたり、避難や規制線を張ったりする上でも重要な判断材料となるでしょう。今回の技術提供を行うにあたって、リコーは全天球カメラ、「RICOH THETA」と「災害クラウド(仮)」の操作方法のレクチャーを行い、システムの実用化に向けて積極的に協力を行いました。

THETA360.bizとは

そもそもTHETA360.bizとはどのようなサービスなのかということについて、改めて説明していきます。THETA360.bizは2014年に株式会社リコーが開設した法人向けクラウドサービスです。リコーが販売している「RICOH THETA」シリーズで撮影した全天球画像を、顧客のサイトなどで表示するというのが主な特徴です。

THETA 360.biz|RICOHhttps://www.theta360.biz

利用企業には様々な業界が挙げられますが、代表的なものとしては不動産業界が有名です。管理、販売している不動産の室内写真を全天球画像で紹介したり、VRと組み合わせて「バーチャル内覧」を行ったりといった用途が話題となりました。

他にも、プレスリリースの配信を主なサービスとしているインターネットサイト、「PR TIMES」を運営している株式会社PR TIMESもTHETA360.bizの利用企業として有名です。

企業のプレスリリースには写真が添付されているケースが多いですが、一枚の写真から得られる情報には限りがありました。そのため、これまでは複数の写真を掲載したり、情報の取捨選択をしたりする必要がありましたが、全天球画像の登場で多くの悩みが解消されました。

製品やサービスの立体感、周囲の雰囲気まで含めてプレスリリースに載せられるようになったことで、単なる発表や告知以上の役割を担えるようになったのではないかと思います。

このように、従来は平面的にしか観察することのできなかった画像や映像を、THETA360.bizを導入することで、より立体的で、多くの情報を乗せて発信できるようになったのです。

紹介した他にも観光業界における需要も目覚ましく、サービスや施設のPRなどで用いられています。このことによって消費者が受ける恩恵も小さなものではなく、今後は益々THETA360.bizや全天球画像を暮らしの中で目にする機会が増えてくるかもしれません。

データを集めることで未来の災害を予測

「災害クラウド(仮)」は災害現場の様子を共有し、地図上で見る以外に、データを蓄積するアーカイブとしての役割も担っています。過去に災害が発生した地域の情報を整理することで、未来の災害予測を立てられるかもしれません。

現在は限定的な範囲での使用となっていますが、例えば全国規模で災害発生データを細かくアーカイブすることができれば、そこから読み取れることも必ず出てくるはずです。日本は特に地震などの災害に遭いやすい場所に位置しているため、こういったシステムの必要性はとても高いのではないでしょうか。

過去に地震が起こった地域、規模、被害というのは国や自治体の方でもしっかりと記録しているはずですが、「災害クラウド(仮)」では更に詳細なエリアに絞っている印象を受けました。

「20〇〇年に〇〇地方にある〇〇県で震度7の地震が発生した。それにより何棟が倒壊し、○人の死傷者が出た」という事実としての大枠を記録するだけでなく「〇〇町の1丁目で火災が発生し、周囲200メートルでも甚大な被害が発生した。昔ながらの木造家屋が多く、道が狭かったことで消防の到着が遅れた」などの、より地域やパーソナルな部分に寄り添った災害対策が必要なのではないでしょうか。

地図上で細かい災害や規模を記録することのできる「災害クラウド(仮)」の真骨頂は、こういった部分にあるのではないかと思います。アーカイブや情報共有という役割はTHETA360.bizが元々強みとしている要素でもあるので、今回の技術提供はまさに渡りに船でした。

THETA360.bizの可能性

THETA360.bizの強みは他にもまだまだあります。コスト削減やブランディング、プロモーションといった面に力を入れている企業は、導入する価値が十分にあるでしょう。プロモーションの例で言えば前述した不動産業界のバーチャル内覧や、株式会社PR TIMESの利用方法がまさしくそれでした。

対法人・個人を問わず、全天球画像は多くの顧客に訴求する力を秘めています。採用業界などでは、ブランディングや広報としての目的をもって利用されています。職場の雰囲気や環境を就活生に伝える上で、全天球画像が届けられる情報は平面的な写真とは比べ物になりません。

共有したい空気感をダイレクトに相手とシェアすることができるので、採用後のミスマッチを防ぎやすいという点でも非常に優れています。企業訪問や会社見学といったプロセスを省略できるので、コストの面でも変化が現れます。

何百、何千、何万人もの就活生を応対する人件費、拘束時間をカットできるので、早い段階で効果を実感できるはずです。これはバーチャル内覧にも言えることです。

このように、災害現場からBtoB、BtoC企業まで広くメリットを感じられるTHETA360.bizの可能性は大きなものだと思います。THETAだけではなく、THETA360.bizからも益々目が離せなくなる予感がしますね。

終わりに

InstagramをはじめとするSNSでの活躍が目に止まる全天球カメラですが、その性能はとても高いもので、社会に対する貢献度も相当なものです。不動産業界や建築業界で利用されているのもその一例ですが、災害対策といった面でも全天球カメラが今後益々活躍していくことで、我々の安全や安心というものが今以上に強固なものになるかもしれません。娯楽としてのカメラに止まらないTHETAの凄さが垣間見えるニュースだったのではないかと思います。

Like@Wrap
Follow@Wrap

スポンサーリンク