iPhoneが360度カメラになる?全天球画像撮影アプリ「くるみる」

筆者:阿久津 碧

360度、全方位からの写真を撮影する場合、全天球カメラを用いて撮影を行うのが一般的です。別途全天球カメラを用意せずとも、簡単に誰でも360度カメラを撮影する方法があるとしたら、とても興味深いですよね。今回はそんなアプリ「くるみる」をご紹介します。

スマホで360度写真が撮影できるアプリ

「くるみる」はクラウドファンディングによって資金調達を行ない、製品化したアプリです。専用のターンテーブルにiPhoneをセットし、「くるみる」のアプリを起動します。

写真を撮影しながら、セットしたスマホをターンテーブルの周りで移動させると、あっという間に被写体を360度から撮影することができます。

公式動画はコチラ

およそ30秒で撮影は完了し、ウェブへのアップロードも簡単です。アップロードした画像は自由に回転させ、ピンチイン、ピンチアウトも自由自在となっています。

価格は29,700円と少々高めですが、撮影枚数に制限はありませんし、ランニングコストがかからないことも考えると妥当かもしれません。個人の利用も想定できますが、通販サイトなどの商品掲載で活躍してくれそうな一品ですね。

実際販売元もそういった用途を想定している部分があり、法人からの需要を期待しているようでした。

残念ながら現在はサービス終了

残念ながら「くるみる」のサービスは現在終了しており、利用できない状態となっています。既に購入していて、過去のバージョンでアプリをインストールしている場合には継続して利用することが可能ですが、今後の動作保証はしていません。

qulmil | お知らせhttps://www.qulmil.com/notice

こういった製品は新鮮ですし需要が期待できそうだったのですが、残念ながら市場ウケはあまり良くなかったようです。「くるみる」が特に秀逸だったのは、撮影者を軸に360度を撮影するのではなく、被写体の周りを撮影者が回るように全方位を撮影できるということです。

一般的に全天球カメラと呼ばれているものも、基本的には全て撮影者の周りを360度撮影するものなので、「くるみる」のような撮り方ができる製品は多くありません。

iPhoneで利用できる類似の撮影機能としては「パノラマ」がありますが、こちらもやはり撮影者が軸となっているので、毛色が異なります。

CtoCの時代にこそ求められるアプリ

「くるみる」はリリースされた時期と価格が大きな問題だったのではないかと私は考えています。昔からある「ヤフオク」などに加えて現在は「メルカリ」や「ラクマ」など、個人間での売買が一層活発になっています。

インターネット環境が当たり前になって、誰でも気軽に顔の見えない相手と取引が行えるようになった今こそ、こういったアプリの需要は上がっていくのではないかと思います。

当初「くるみる」は法人をメインターゲットとして据えられていましたが、商品をいかにして魅せるかというのは個人の売り手にとっても大きな問題となっています。個人同士の取引であっても、お店で起こるようなトラブルは当たり前に発生します。

「商品と写真が違っていた」

「見たい角度の写真が掲載されていない」

「思っていたものと違った」

上記のようなクレームは個人間の取引でも耳にしますし、そのトラブルの解決を運営が全て行ってくれるというわけでもありません。そうなると、そもそも問題が起こらないように努力しなければいけないわけですが、その上で重要なのは以下の二点です。

⑴詳細な商品説明

⑵分かりやすい商品の画像

商品説明に関してはオリジナルの販売サイトや、製造元の文章をコピーして掲載している人が多いですが、商品画像に関しては宣材写真を用いるというわけにはいきません。仮に未開封であっても中古品という括りになるわけですから、新品の宣材写真を載せたのでは、それこそトラブルに繋がりかねません。

そこで個人の売り手は写真の撮り方を工夫したり、買い手に委ねたりするわけです。委ねるというのは、「別の角度からの写真が見たいという方はお問い合わせください」というようにすることです。

しかしそれも手間はかかりますし、全方位の写真をワンショットで撮影することができれば、それが理想なのではないでしょうか。「くるみる」はそんな個人の要望を見事に満たした製品だといえます。

ですがBtoC向けに販売されていた「くるみる」は、ニーズがあっても価格という面で市場に受け入れられなかったのかもしれません。自宅にある不用品を売って利益を得ようとする場合、3万円近くする「くるみる」の設備投資費用は安くはなく、魅力的に思っても、そこから導入に踏み切る人は限られるでしょう。

アイディア自体は本当に素晴らしいものでしたが、法人・個人の両方をターゲットとして据えて、価格を更にリーズナブルにすることができれば違った結果があったのかもしれませんね。

外注で360度を撮影するサービスも

「くるみる」は自宅や好きな場所をスタジオにできる設備というサービスでしたが、現在はそれらを丸ごと外注するという選択肢も存在しています。例えば物撮り本舗というサイトでは、1商品の360度撮影を2,980円で受け付けています。

『物撮り本舗 | オプション込み込み、最短1営業日で納品! 物撮りサービス』

10商品でおよそ3万円なので、誰もが気軽に利用できるサービスというわけではありませんが、自社や個人で撮影する環境が整っていないという人にとっては魅力的なサービスだと思います。

また、法人化しないまでも、ある程度ネット上における商品の売買で生計を立てているという人にとっても、こういったサービスはありがたいと思います。撮影機材を用意したりスタジオを借りたりするとなると、どうしても手間と時間がかかってしまいます。

かといって商品写真を適当なものにしてしまえば、売り上げや信用の部分にも傷が付く恐れがあります。物撮り本舗のようなサービスは「くるみる」のような製品と程よく折り合いをつけた結果なのかもしれませんね。

これ以外にもフォトシミリというサービスも存在します。こちらは物撮り本舗と違い、360度写真の製造を内製化するというコンセプトのサービスになっています。そのためターゲットも完全に法人へと絞っているように見受けられます。

商品撮影は社内で出来る – フォトシミリhttp://www.photosimile.jp

商品撮影を自動で行うスタジオ型の機械であり、「くるみる」の業務用バージョンといった印象です。撮影できる物の大きさは商品によっても異なりますが、大型のものであれば人間のモデルを360度撮影することも可能なようです。

近年はネットのショッピングサイトなどでも、製品を360度観察できるところが増えてきましたが、そういったサイトの運営企業は、このような設備を自社に有しているのかもしれません。

ファクシミリを捩ったような製品名はコミカルですが、その機能は本格的です。ネット経由での消費が加速する現代において、物体を全方向から撮影できるサービスの需要は今後も加速していきそうですね。

終わりに

「くるみる」は既にサービスを終了してしまいましたが、再度こういったアプリや製品がリリースされれば、今でも一定の需要は見込めるのではないかと思います。むしろ、文中でも述べたように、今の方が利用する層は多いかもしれません。ただそこで課題になってくるのは、やはりコストの部分でしょう。最近は無料のアプリでも便利なものが増えており、有料としてリリースする場合も値段設定がシビアな問題になってきます。誰でも会社を作り、物を気軽に売れる時代だからこそ、その問題を見事に解決した製品やサービスが生まれてきてくれることを祈りたいですね。

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