増進堂・受験研究社とリコーが実施した360度カメラを用いた検証
株式会社増進堂・受験研究社(大阪市西区、代表取締役:岡本明剛)が3月下旬に発表したプレスリリースによると、同社は株式会社リコー(東京都大田区、代表執行役員 社長執行役員:山下良則)と協力して、発見型教材を開発したそうです。そこでは360度カメラも大きな役割を果たしたようですが、一体どのような教材が生まれたのでしょうか。
本記事の内容
子どもが自主的に学ぶ力を養う
株式会社増進堂・受験研究社(以降、増進堂・受験研究社)と株式会社リコー(以降、リコー)が共同開発した教材は「子どもが自主的に学ぶ力を養う」ということをコンセプトにしています。
その上でリコーが製造・販売している360度カメラ「RICOH THETA」が用いられ、実際に実証実験も行われました。両社は「発見型教材を使った教材の可能性を拓く有益な実証結果が得られた」と発表する一方で、詳細については「学術的な研究発表の場で行う」としているため、詳細については明かされていない部分も多くあります。
実証実験の対象者は加藤学園暁秀初等学校の小学校6年生36名で、2019年3月5日と12日の2日間に実験が行われました。THETAには様々なモデルが存在しますが、今回はミドルレンジモデルの「THETA V」が使用されています。
内容はプレスリリースによると「RICOH THETA Vで撮影した理科実験中の間違い探し静止画(協力:東京理科大学 理学部物理学科 川村康文研究室)」となっています。
間違い探しと聞くとポップな響きですが、内容は教材らしく、とても真面目なものとなっています。教材の全天球画像には数名の理科実験者が写っており、彼らの中から誤った実験をしている人を見つけ出す、という趣旨のものになっています。
また、その対象者を見つけて終わりではなく、正しいアプローチを対象の実験者に対してアドバイスするという部分までが課題に含まれています。具体的なアドバイス方法については別紙のワークシートに記入し、それとは別にディスカッション形式での授業も行われました。
出典
「増進堂・受験研究社とリコーはRICOH THETAで撮影した360度の画像を使った発見型教材の教育的効果検証を実施|株式会社増進堂・受験研究社のプレスリリース」
実証実験教材の目的は子どもたちの「気付き」
増進堂・受験研究社とリコーの開発した教材は、子どもたちの「気付き」を重視した内容となっています。まず誤った実験方法に取り組んでいる理科実験者の存在を見つけ出し、気付きます。
そして、その対象者に対してどのようにアプローチするべきかという方法について気付きます。そして最後に、他の生徒とそのことを議論することで、別の人の新しい視点・方法に気付くことができます。
目で見て、文章でまとめて、話し合いで伝える。これらは全て深く結びついており、総合的な「気付き」に対して働きかけているのではないかと私は思いました。
実際、学習観や学習方略観の変化については、今回の「気付きを要求される観察・実験」と従来型の観察・実験を主とする教材で学習姿勢に差異が生じていると発表がされており、実証実験で用いられた教材は、これまでの教育現場にはあまりなかった類のものであることがうかがえますね。
そのことによる難しさというのも当然存在するのでしょうが、反面自分で考えて気付くことにはある種の快感のようなものがあり、苦労の先には「楽しさ」、「気付き」、「達成感」といったものが待っているのかもしれません。
二回の授業を受けた生徒計32人には5段階評価のアンケートを実験前後に計2回実施しているのですが、全体の80.6%に相当する25人の生徒が「再度受けたい」という回答をしており、授業そのもののクオリティという意味でも高く評価できる結果となりました。
活躍の場を広げる「THETA V」
実証実験で用いられたのは「THETA V」という機種ですが、この全天球カメラは他のシーンでも活躍している姿を度々目にします。当サイトでもその一部をご紹介していますが、個人のユーザーだけでなく、法人からも信頼されている機種で、確かな性能を誇っています。
例えばプレスリリースを掲載しているサイト「PRTIMES」では、プレスリリースに全天球画像を組み込むために「THETA V」の貸し出しを行っています。※全天球画像を入れ込むためには有料プランへの加入が必要。
この他にも報道機関や不動産業界、宿泊業界でも利用事例が多数あり、確かな実績と性能は着実にファンを増やしています。全天球カメラの活躍を追うのであれば、「THETA V」の動きを追うのが確実かもしれませんね。
THETAに果たせる様々な役割
今回の開発では教材作りにTHETAが活躍しましたが、他にも様々な「学び」のシーンで360度カメラは活躍できるはずです。実際に導入されているものも含めて、THETAが果たすことのできる様々な役割について考察してみました。
擬似的な体験授業
VRなどと組み合わせることで、擬似的な体験授業のようなものも行えるのではないかと思いました。私の時代は小学校の修学旅行は日光、中学は京都、高校は沖縄という感じでしたが、それぞれで日本の歴史を学ぶ時間がありました。
歴史の勉強という意味でも集団行動という意味でも有意義な体験でしたが、修学旅行にはお金と時間がかかりますし、小学校六年、中学・高校三年間のうちに何度も実施できるものではありません。
しかし全天球画像や映像を用いたVRでの体験授業、擬似修学旅行であれば実施のハードルはぐんと下がります。簡単には行けない海外も、VRでなら気軽に訪問できるでしょう。このような、360度カメラとVRを組み合わせた歴史の体験授業があれば、子どもたちも楽しく学べるのではないでしょうか。
リハビリ
身体に怪我を負ったなどしてリハビリが必要な人にとっても、全天球画像を用いたアプローチは有効かもしれません。病院の中にある見飽きた治療室も、VRヘッドセットを装着すれば様変わりします。
視界が完全に奪われることになるので、全ての人にオススメできる方法ではありませんが、リハビリに辟易している老若男女の気分を紛らわせてくれるかもしれません。
スポーツなどの練習
スポーツ学習などにおいても360度カメラは活躍してくれるはずです。個人の身体の動きを一人称、三人称の両方で撮影できるというのも大きな強みですが、チーム練習などにおいても360度カメラは活躍してくれるのではないでしょうか。
昨今は首に引っ掛けるタイプのハンズフリー360度カメラというのも登場していますが、こういった商品を選手に付けてもらうことで、チームワークに影響を与えたり、細かい動き、課題といったものが洗い出せたりするかもしれません。
認知症などの予防
学びや学習とは趣旨が異なりますが、認知症などの抑止力としても360度画像は役立つかもしれません。増進堂・受験研究社とリコーが開発した教材は間違い探しでしたが、こういった教材は考える力、見つける力を養うので、脳に対しても良い影響を与えるのではないでしょうか。
そのまま流用することはできないかもしれませんが、医療方面に特化した形で新しいものを開発すれば、将来的には有効な対策手段として活躍してくれるかもしれません。
上記は一例で、360度カメラが世の中に対して働きかけることのできるシーンというのはまだまだ無数にあります。これまではどうしようもなかったことや、無意識的に諦めていたことでも360度カメラが、THETAが解決してくれた。そんな出来事が増えていくかもしれませんね。
終わりに
360度カメラ単体でもそうですが、VRなどの機器と組み合わせることで、その可能性は無限に広がりを見せてくれます。今後も学校教育やリハビリ、技術習得などのシーンで360度カメラやVRが活躍する余地は十二分にありますし、どのように我々を驚かせてくれるのか、とても楽しみです。
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