Insta360がMatterportと提携。撮影画像を3D化する技術を開発

筆者:阿久津 碧

法人だけでなく個人でも気軽に360度カメラを所有できるようになったことで、一昔前では考えられなかったようなことも、当たり前に実現することが多くなりました。元々VRなどとも親和性が高く、様々な方面、事業での活躍が期待されていましたが今回は新しく、360度カメラで撮った写真を3Dモデル化するという技術のニュースが入ってきたので、そのことについてご紹介していきます。

360度カメラで撮影した建物を3D化できる技術

3Dモデル化で採用されたカメラはInsta360という全天球カメラです。日本では全天球カメラといえばリコーのTHETAシリーズが有名ですが、国内でInsta360シリーズを使っているユーザーも多く、海外などでも多く見かける有名な機種です。

そんなInsta360を販売している中国のShenzhen Arashi Visionとアメリカのサンフランシスコにあるベンチャー企業Matterportがタッグを組み、全天球カメラで撮影した画像を3Dモデル化するという技術を開発しました。

両社はこの提携を足がかりに「バーチャルツアー制作を推進していく」という発表を行なっています。バーチャルツアーがどういったツアーなのかは後述するとして、電話注文のみになりますが、日本のユーザーもMatterportを購入することは可能となっています。

「3D Camera and Virtual Tour Platform – Matterport」

従来であればMatterportを用いて3Dのモデルを作成するためには「Matterport PRO2」という専用のカメラが必要だったのですが、今後はそのカメラに加えてInsta360も使用可能になるということになります。

ただ、サイトを見るとMatterport自体の価格は3000ドル(日本円で約30万円)弱と結構するようなので、せっかくInsta360と提携したのであれば、一般のユーザーはそちらを利用した方がコストを抑えられるに違いありません。

3Dモデル化のプロセス

実際に撮影した画像を元に3Dモデルを作製する場合、どちらのカメラを使うにしても、まずは現場の写真撮影を行う必要があります。撮影の回数やポイントというのは対象となる建物の広さや構造によっても異なるのですが、専門的な知識は必要ありません。

意外なことに「Matterport PRO2」で撮影するよりも「Insta360」で撮影を行なって3Dモデルを作成した方が、撮影時間も転送時間も早く済みます。この辺りはInsta360の技術力の高さや抜群の互換性に舌を巻くばかりですね。

撮影時間と転送時間の早さ以外にもInsta360の強みはあります。それは大きさです。「Matterport PRO2」はかなり大型の機材で、ちょっとしたパソコンくらいの大きさがあります。一度の3Dモデル作成で複数の場所へと移動させることを考えると、取り回しが結構大変です。

撮影場所へ持ち込むまでの手間なども考慮すると、公共交通機関の利用も躊躇われるところですが、対してInsta360は携帯性に優れた小型全天球カメラで、その大きさの差は一目瞭然となっています。

撮影の際にも身軽に行動することができますし、サクサクと次のポイントに移動できることでしょう。三脚などを装備した状態でも本体重量が軽いので、カメラそのものの取り回しやすさなどは文句なしです。三脚を折りたたんでバッグに入れて移動すれば、電車などの公共交通機関を利用しても撮影道具を簡単に持っていけます。

勿論「Matterport PRO2」が優れている部分もあり、完成した3Dモデルを見比べると、Insta360のものよりもメリハリがあって、色の強弱がはっきりとしています。それぞれの3Dモデルをズームインすると、画質や細かい映りの部分ではやはり「Matterport PRO2」に軍配が上がります。

コストやPRするターゲット、納期や使用方法に合わせて使い分けていくのがオススメですが、少ない装備で気軽に撮影が行えるようになったメリットはかなり大きいのではないでしょうか。

バーチャルツアーとは

「バーチャルツアー制作を推進していく」とはいうものの、「具体的にバーチャルツアーって何?」と思う人も少なくないと思います。私自身、言わんとすることは分かるけれど、定義や詳細な手段については曖昧な部分があるというのが正直なところです。

概要としては、前述したような方法で作成された3Dモデルの中を、端末操作などで進んでいくことで、擬似的なツアー体験を行うというものです。VRなどを組み合わせて更に高い没入感を味わう「3DVRバーチャルツアー」という方法もあるようですが、どちらの方法も比較的簡単に実行できそうですね。

最近は百円ショップでVRヘッドセットが売られているくらいですし、(VRに対応している)360度カメラさえ手に入れてしまえば、誰でも簡単にVRを体験できる時代となりました。今後はそれよりも更に進んで、誰でも簡単に3Dモデルを作成して、その中を探検できる時代になるかもしれません。

3Dモデルの可能性

多くの人が3Dモデルを作れるようになったことで、その利用方法も広がりを見せることになります。これまでは一部の法人や技術者、プロにしか作成できなかった3Dモデル作成が浸透することで、次のような利用方法が普及していくのではないかと考えられます。

ロケハン

ロケハンとは「ロケーションハンティング」の略称で、テレビや映画、ドラマなどの撮影を行う際、スタッフが事前に撮影に適した場所を探すことを指します。3Dモデルを利用すれば実際に現場へと赴かなくても、事前にある程度の空間情報を把握することが可能です。

最初に誰かが撮影を行う必要があるので、現地の人に協力してもらうか、徐々にデータを貯めていくなどの必要はありますが、ある程度の情報が蓄積すれば、かなり大きな情報源になるに違いありません。室内での撮影や店舗取材などの場合も同様です。

頻繁にテレビなどで取り上げられる有名店舗の場合は事前打ち合わせや店舗撮影も難しく、取材交渉自体苦戦しがちですが、一度3Dモデルを撮影させてもらうことができれば、長期間流用することができるので、制作側の負担も減りますし、店舗側としても助かります。

不動産の内覧

360度カメラが登場した当初から、不動産物件の紹介や記録という面で使い勝手が注目されていましたが、3Dモデル化でも同様です。単なる静止画の全天球画像とは違い、物件の中を自由に歩き回ることができるので、より一層リアルな空間を体験することが可能です。

店舗側の負担も大幅に軽減しますし、公式サイトなどで3Dモデルを公開していれば、実質的に24時間内覧が行えるようになります。これが一般化すれば、遠方に引っ越す人などは大いに助かると思います。

実際に物件を訪れることはできないけれど、それに限りなく近い雰囲気を味わうことができるので、引っ越した後のミスマッチも防ぎやすくなるでしょう。内覧は自宅で済ませて、店舗では契約だけを行うという時代が訪れるかもしれませんね。

ゲーム製作

個人がゲーム製作などをする場合にも3Dモデルは活躍します。実在する場所を舞台とする場合など、作成用の資料集めのために現地で写真撮影などをすることはありますが、写真では細かい部分まで記録できませんし、記憶も曖昧になってしまいます。

しかし3Dモデルであれば細かいところまで詳細に記録することができるので、資料としても十分役立つ上、インスピレーションも刺激してくれそうです。今後上手く組み合わせることができるようになれば、バーチャルツアー型のシミュレーションゲームなんていうのも出て来るかもしれませんね。

終わりに

バーチャルツアーというと聞きなれないかもしれませんが、撮影した画像や映像をVRなどで視聴するのと、基本的な考え方は同じです。その上で重要となるのは没入感ですが、高い没入感を味わうためには、自然なステッチと高画質での撮影がマストの条件でした。これまで個人用の360度カメラでそれを実行しようとすると難しい部分もありましたが、Matterportが一般にも浸透すれば、バーチャルツアーも一気に身近なものとなるかもしれませんね。

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