配達の未来が変わる。360度カメラを搭載した配達ロボット

筆者:阿久津 碧

カメラの進歩は目覚ましく、カメラアプリや一眼レフ、スマートフォン、360度カメラなど、日々目にして、手に取るツールを例にしてみても、その成長を感じられます。日本以外の国にも目を向けてみると、国外でも様々なシーンで360度カメラが活躍しているのが分かります。今回はその中でも『電子国家』として注目されているエストニアの360度カメラ事情をご紹介していきます。海外で採用されている360度カメラのアイディアが、日本でも将来的に役立つかもしれません。


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エストニアは独立当初から電子国家

エストニアは正式名称をエストニア共和国といい、ラトビア、リトアニアと合わせてバルト三国と呼ばれる国の一つです。日本人には正直あまり馴染みのない国かもしれませんが、元大相撲力士、把瑠都の生まれ故郷だったり、インターネット電話サービス『Skype』を発明したりということを聞くと、グッと親しみが湧くかもしれません。

電子国家の名は伊達ではなく、海外のIT企業が進出したり、ソフトウェア開発が盛んだったりと、とにかく勢いのある国です。一方でその歴史は苦難の連続で、地理的に争いに巻き込まれやすいのかもしれませんが、デンマークやスウェーデン、ロシア帝国などに支配された暗い歴史もあります。

ここ百年余りで見ても、1918年にロシア帝国から独立したかと思うと、その後は1940年にソビエト連邦に再び占領(バルト諸国占領)、翌年にはナチス・ドイツによる占領を受けたかと思うと、44年には勢いを盛り返したソビエト連邦により再占領・併合されるなど、落ち着く暇がありません。

91年に、ソ連崩壊の流れに乗って独立を回復することに成功するのですが、驚くことにエストニアはこの頃から既に電子国家の片鱗を見せていたのです。日本でインターネットが普及するのはまだまだ先のことですが、91年頃のエストニアには早くもインターネットが存在していました。この時点でエストニアはインターネットの可能性や、そこに眠るビジネスチャンスに注目していたのでしょう。

現在に至るまでその方針は一貫しており、ITに対する興味や取り組みは並大抵のものではありません。国内ではブロックチェーン技術を用いて、行政サービスのほぼ100%を電子化し、紙による手続きをほぼ完全に廃したほどです。世界的にもIT化が進んでいる今、本来はエストニアの姿勢が普通のものなのかもしれませんが、実際運用化に踏み切れるのは流石電子国家という他にありません。

エストニアの宅配事情

そんなデジタル先進国であるエストニアで注目したいのが、宅配サービスです。エストニアのタリンでは、アメリカのサンフランシスコにあるStarship Technologies社のエンジニアリング事業が展開されており、同社製の自動運転ロボット配送車両が街中を走っています。

Starship公式サイト(英語)

上記のリンク先は海外サイトなので内容は英文となりますが、ロボットのデザインを確認することができます。本体は某SF映画に出てきそうな可愛らしいデザインで、丸みのあるボディには走行用に6つの車輪が装備されています。

ラジコンのような見た目ですが性能は侮れません。中には360度カメラと超音波センサー、GPSなどを搭載しており、人の多い市街でも通行人との衝突を避けることができます。実際走行するのは歩道なので速度は時速6kmとゆっくりですが、荷物を目的地に運ぶ上で遅すぎるということもありません。

大型の荷物は人間が配達する必要がありますが、小包や軽い荷物であればロボットによる配達が可能です。エストニアは人口が約130万人と少なく、荷物の流通センターや配達員の人数も限られているため、このロボットは人々の負担軽減に大いに役立っているのではないでしょうか?

小型ロボットとはいえ、GPSや誘拐防止の防犯アラートなど、本体には警備システムもしっかりと備わっています。そのため、街中でロボットがさらわれる心配もありませんし、緊急時におけるサポート体制も整っています。大切な荷物を届けるからこそ、こういった点にも徹底しているのはありがたいですね。

不在でも荷物を受け取れる

ロボット配達の強みは配達する人間の負担を軽減することだけではありません。エストニアにはロボットポストと呼ばれる、ロボットが荷物を入れる用のロッカーがあります。スーパーなどの横にあるそのロッカーにロボットが荷物を入れると、届け先の住人に、スマートフォン経由で通知がいく仕組みとなっています。

その通知にはロッカーを開ける暗証番号も記載されており、本人以外は開けられないようにもなっています。ベースとなるのはコインロッカーのような既存の設備ですが、電子化をすることによって受け取る人の負担も軽減することに成功しました。

この方法であれば、荷物が届く予定があっても在宅している必要はありませんし、仕事帰りにでも簡単に宅配便や小包を回収することができます。現在はこのようなサービスがエストニア全土にあるわけではなく首都のタリンを中心に普及しているだけですが、将来的にはサービスエリアが更に拡大するかもしれません。

他にもエストニアでは荷物を運ぶ自動運転車やロボットポストなど、いよいよもって近未来的な物流サービスが導入されていますが、その随所で360度カメラが役立っています。死角のない360度カメラは、自動運転や無人ロボットの運用には不可欠なアイテムで、今後も至る所で見かける機会が増えていくのではないでしょうか。

ロボット配達は日本でも通用する

エストニアで導入されているような宅配サービスは、間違いなく日本でも通用するものだと思います。むしろエストニアよりも人口が多く、配達物も43億個以上(2018年度)ある日本の方が、こういった無人宅配システムを求めていると言えるでしょう。

国内ではリコーが360度カメラ開発に力を入れているので、今後民間の宅配業者などと協力して、360度カメラを搭載した無人配達ロボットの開発が行われるかもしれません。あるいはエストニアで導入されているロボットが日本の街中を走るということも考えられるでしょう。

陸路だけでなく空路にも無限の可能性があります。代表的なものではドローン宅配便があり、こちらは既に多くの国で実証が行われ、実用段階に入っています。何億もの宅配便をドローンと人間だけで何とかするとなれば、頭上はドローンだらけになってしまいますが、両方の方法を組み合わせれば、そこまで極端な事態は避けられます。

今後も益々配送する荷物が増える中で、配達員の負担が懸念されていますが、360度カメラを導入したロボットは、その問題を解決する救世主になるかもしれません。人間による配達が完全になくなるのはまだ先のことかもしれませんが、高齢者の安否確認や人同士の交流という側面を考えると、人間による温かみのある配達も、まだ暫くは続いてほしい気もしますね。

終わりに

私自身楽天やAmazon、ヨドバシ.comなど、インターネットの通販サービスを日常的に利用するので、こういった宅配システムには強い関心を抱きました。荷物の配達指定をしているから外出できないときや、小さな荷物で人の手を煩わせるのが申し訳ないような場合には、ロボット配達があると多くの人が助かるのではないでしょうか。360度カメラやドローン開発に力を入れている日本でも、無人宅配サービスは近い未来、実用化されるかもしれませんね。


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