THETA「V」と「Z1」のファームウェアにアップデートが登場
リコーが販売している360度カメラ『THETA』の中でもミドルレンジモデルに当たる『THETA V』と、ハイエンドモデルの『THETA Z1』のファームウェアにアップデートが登場しました。今回のアップデートでどのような機能が追加されたのか。また、アップデートの手順などについてご紹介していきます。
本記事の内容
手持ちHDRへの対応
アップデートが登場したのは2019年の10月24日で、冒頭でも述べた通り、対象となる機種は2機種となっています。アップデートを有効にするためにはTHETAのスマートフォン向けアプリのバージョンを最新にしておく必要があるので、先ずはこちらを済ませておきましょう。
アプリのアップデート方法はiOSならAPPストア、Android端末ならGoogle Playから行うことができます。iOSが『2.8.0』以上で、Androidが『1.26.0』以上にアップデートしなければいけないので、自分のアプリが最新の状態になっているかを確認してみてください。
アップデートの内容としては、バグ修正の他に手持ちHDR機能の追加というものがあります。アプリ側のアップデート内容についても後述していきますが、このHDR機能とはどのようなものなのかについて、まずは触れていきます。
HDR機能とは
HDRとはHigh Dynamic Range Imageを略した言葉で、HDRIとも呼ばれることがあります。概要としては輝度幅の高い画像を指しますが、これだけではちょっと分かりにくいかもしれないので更にざっくり言うと、「目で見た感覚に近い仕上がりの写真」という認識になります。
仕組みとしては、明るさが異なる複数の写真を組み合わせて、理想的な明るさとなっている一枚の画像を作り出すというものです。通常、一つの場所にピントを絞ると白飛びしたり黒つぶれしたりするような構図でも、HDRを使えば、より完成度の高い一枚を撮りやすくなります。日差しの強い場所や光が反射する場所、屋内から屋外を撮影する場合などにHDRは活躍してくれます。
先述した通り、HDR機能で撮影した写真の仕上がりは肉眼で見た映像に近いものとなり、全体的に落ち着いた感じになります。スマートフォンのカメラ機能でもHDRを搭載している端末は昨今増えてきているので名前を見たことがある人も多いと思いますが、撮影時に若干もっさりとするため、嫌って使わなかったという人も多いのではないでしょうか?
動きがもっさりする原因は複数枚の写真を一瞬で撮影して組み合わせているからですが、そうだと分かれば、これからは適切に使えるようになるかもしれません。ただし、その特性故にやはり不向きな構図や被写体も存在します。
肉眼で見た映像に近い仕上がりになるということは、肉眼で見た感じとは異なる仕上がりを目指しているときには向いていないということでもあります。人物写真で実物よりも美しく、綺麗に撮りたいと思っても、HDRだと実物に近い形で出来上がってしまいますし、色鮮やかな花や料理も、発色が抑えられてしまう傾向にあります。
複数枚の写真を組み合わせる仕組み上、動きのある被写体にも不向きです。動きのないものを撮るときも、なるべく三脚を使ったり、カメラを動かさないようにしたりといった部分を意識してみると良いでしょう。上記のようなHDRのメリットやデメリットを理解しておくことで、シーンに合わせて適切にHDR機能を活用できますし、THETAに搭載された手持ちHDRも上手に使いこなせるのではないでしょうか。
オート撮影と手持ちHDR設定撮影の比較
それでは、手持ちHDR設定で撮影すると、通常の撮影(オート)とどのような違いがでてくるのか見てみます。
▼オート撮影
▼手持ちHDR設定撮影
上の写真がオート撮影、下の写真が手持ちHDR設定で撮影したものです。
オートで撮影した写真は、背景の空や海が白飛びしてしまっているのに対し、手持ちHDR設定で撮影したものは空と海がはっきりと分かるように写っています。
▼オート撮影
▼手持ちHDR設定撮影
こちらは夜に撮影したものです。
手持ちHDR設定で撮影したものは、影になっている子供の服の色や、背景のビルの証明、空の雲などがはっきりと写っています。
公式アプリのアップデート内容
HDRについて解説したところで、THETAのアプリ側でどのようなアップデートが行われたのかを見ていきましょう。
THETA for Androidアップデート内容
・RICOH THETA V、Z1と接続時に静止画撮影で「手持ちHDR」のオプションを設定できるようになりました。
※カメラのファームウェアを最新にする必要があります。
THETA V バージョン10.1以上、THETA Z1 バージョン 1.20.1以上
・お気に入り画像を登録できるようになりました。
デバイス内画像の一覧表示で静止画、動画、お気に入り画像を絞り込むことができます。
・theta360.com投稿時にプライバシー設定ができなくなりました。投稿した画像は公開されるようになります。
・バグ修正
手持ちHDR機能の他にも、お気に入り登録機能が追加されました。絞り込み検索もできるので、自分が撮影したデータの中からお気に入りのものだけを見たいときには重宝しそうですね。その他に、プライバシー設定の廃止も注目したいところです。投稿画像は自動的に公開されることになるので、これまでとは仕様が異なることを意識した上で撮影データを投稿するようにしましょう。
ファームウェアのアップデート方法
続いてTHETAのファームウェアをアップデートする方法について解説していきます。アップデートにはパソコン用基本アプリが必要となります。まだアプリをパソコンに入れていないという方は、以下のページから最初にダウンロードしてください。
それが済んだらアプリを起動して、メニュー画面から[ファイル]→[ファームウェアアップデート]の順番で操作していきます。すると画面に指示が出てくるので、それに従いながら付属のUSBケーブルでTHETAとパソコンを接続してください。
接続が完了したら[次へ]を選択し、現行のバージョンと、アップデートが可能なバージョンを確認してから[次へ]をもう一度押します。ここまで操作すると、カメラ側にファームウェアが転送され、後は自動でアップデートが実行されていきます。
全ての処理が完了すると[ファームウェアアップデート:完了]という表示が出てくるので、それを確認したらパソコンからUSBケーブルを取り外して、アップデート完了です。ここまでの流れはTHETAのサイトでも図解付きで見ることができるので、難しいと感じたらそちらを参考にしてみてもいいかもしれません。
三脚と組み合わせて撮影の幅を広げよう
手持ちHDRの最大の利点は「三脚を使わなくてもきれいに撮れる」ことです。
一方、普通のHDR合成で撮影したいときは三脚が必須となります。カメラに伝わった僅かな振動でも写真の仕上がりに影響してしまうことは珍しくなく、せっかく完璧な構図だったのに、若干ブレてしまった、なんていうこともあるかもしれません。
撮り直しのできる被写体であればそれでも構いませんが、一度きりのチャンスや、動きのある動物写真だとそうはいきません。そんな後悔やリスクを軽減してくれるのが三脚です。三脚といっても本格的なものを持ち歩く必要はありません。
THETAのような360度カメラは本体が小型なので、三脚もデジカメ用の軽いものや、携帯性の高さを重視してください。最近は百円ショップでも小型の三脚が売られていますし、ちょっとした撮影だけであれば、そういうものでも必要十分です。
ネットショップでも安い三脚は手に入りますし、バルブ撮影とは違うので足場によっては一脚でも十分でしょう。THETAのアクセサリーストアでもいくつか良さそうなものが売られているので、そちらもチェックしてみてください。手持ちHDRを使えるようにして装備も整えたら、存分に屋内外の写真を綺麗に撮る楽しみを味わいしましょう。
終わりに
スマートフォンの進化が止まらない今、360度カメラやデジカメにとっての最大の敵は他社製品ではなく、スマートフォン内蔵型のカメラなのかもしれません。その熾烈な戦いを勝ち抜くためには、スマートフォンのカメラに搭載されている機能を最低限カバーする必要があるのは間違いないでしょう。今回の手持ちHDR機能追加は、その上で大きな一歩となったのではないでしょうか。今後もTHETAのファームウェアにどのようなアップデートが追加されていくか、引き続き注目していきましょう。
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