格安でスマートフォンを全天球カメラに変身させる『ぐるっ撮360°』

筆者:阿久津 碧

iOSやAndroidのスマートフォンは、そのままの状態では全天球画像を撮影することができませんでした。そのため、360度を撮影することのできる全天球カメラや、スマートフォンに装着するタイプの360度カメラを使うことでこの問題を解決していましたが、2020年1月、新たに国産の装着型360度カメラが発表されたので、今回はその概要を見ていきましょう。

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スマホに装着できる360度カメラ

スペックコンピューター(代表取締役社長:永山久、福岡県福岡市)はスマートフォンに装着して使うタイプの360度カメラ『ぐるっ撮360°』を発表しました。発売は2020年1月31日からとなっており、『スペックダイレクト』の本店やヤフー店、大手通販サイトのAmazonで購入することが可能となっています。対応機種はiOSで、その中でもiPhone7/8、7Plus/8Plus、X/XSの6機種に対応しています。

1枚で伝わる、感動と臨場感。『ぐるっ撮360°』

気になる価格は現在税込4,378円となっていますが、公式サイトでは【数量限定価格】とも書かれています。一般的な360度カメラと比較すると破格の値段設定になっているので、気になる方はこの機会を逃さないようにしましょう。

本体はスマートフォンに取り付けるスタイルとなっており、iPhoneに搭載されている前後のカメラレンズを『ぐるっ撮360°』が覆うような形となっています。セット内容は以下の通りです。

・本体ケース
・ヘッドパーツ(通常使用)
・ヘッドパーツ(レンズ取付用)
・Coolpoレンズ2個(レンズキャップ付)
・スマホホルダー
・収納ポーチ
・取扱説明書

通常の360度カメラ同様、前後に付いている広角レンズでそれぞれ個別に撮影を行い、出来上がった二枚の広角写真を合成して一枚の全天球画像を作成する構造となっています。

低価格でもハイテクな360度カメラ

『ぐるっ撮360°』は驚きの安さが特徴ですが、製品仕様は本格的です。まず撮影画像の編集は専用アプリ「Coolpo」から行うことができ、360度カメラではお馴染みのリトルプラネットなどもこちらから行うことができます。アプリは無料なので、『ぐるっ撮360°』を購入した方は忘れずにインストールしましょう。

また、スマートフォンで撮影を行う場合手持ちが基本となるので、どうしても手ブレが心配になってしまいます。しかし『ぐるっ撮360°』はその点も安心で、搭載されているスタビライザー機能のおかげで揺れがかなり軽減されています。

『ぐるっ撮360°』で動画を撮影中、iPhoneのジャイロスコープデータを収集し、そこからEKFアルゴリズムに従いながらジャイロスコープデータと動画データを結合することで手ブレ防止を実現しているそうです。※スタビライザー機能使用時は、最大60秒までの動画が撮影可能となっています。

アクションカメラ顔負けの手ブレ補正機能なので、歩きながらの撮影や不安定な足場での記録にも適していますね。スマートフォンによる撮影だとどうしても映像が揺れてしまい、せっかく撮影したのに、後で見返したら上手く撮れていなかったということも珍しくありませんが、『ぐるっ撮360°』であればその心配もありません。

撮影した映像や写真はそのままSNSサイトに投稿することもできます。LINEやInstagram、Twitter、Facebookといった主要なSNSには全て対応しているので、記録した思い出をすぐにシェアしたい方にもおススメです。

iPhoneで超広角を実現

『ぐるっ撮360°』は360度カメラとしても勿論優秀ですが、実は広角レンズとしても重宝する存在となっています。フロントカメラに装着しているレンズを利用して撮影を行えば、今までは撮りきれなかったような被写体でも、一枚の写真の中に美しく収めることができます。

上の写真は公式サイトに掲載されていたサンプル画像ですが、その違いは一目瞭然です。これまではツリーの一部分しか撮影できなかったのが、ツリー全体だけでなく、周囲の景色や人々の様子までフレームに捉えています。

これによって写真の情報量もぐっと増しますし、見た人に与える印象も大きく変わるのではないでしょうか。iPhoneには「ポートレート」という、被写界深度エフェクトを盛り込んだ人物撮影用の撮影モードがあるのですが、反面広角の撮影には弱い印象を受けます。

パノラマモードを使えばある程度の広角画像は撮影できますが、それだとどうしても独特の仕上がりになってしまう問題が拭えません。しかし『ぐるっ撮360°』のレンズであれば、画質をそのままに、自然な広角撮影を行うことが可能となっています。

最近のiPhoneは焦点距離の違うレンズを搭載するなどの工夫が見られますが、正直上の写真を見てからは、思い切ってこういった外付けのレンズを取り付けるのも悪くないなぁと感じさせられました。

Insta360との市場争い

現在景色や人物などの撮影を目的とした360度カメラには、大きく分けて三種類存在します。一つは個人向けの360度カメラで、携帯性に優れた普及モデルです。リコーが販売しているTHETAシリーズやGoProの360度カメラ、Insta360の製品など、多くのメーカーがこのモデルのシェアを争っています。

次に、業務用の360度カメラです。数十万円するモデルで、プロカメラマンや業務利用を目的とした法人向けに販売されているものがここに分類されます。中には手持ちの撮影ではなく、車両やジンバルを介しての利用を想定されているものも多く存在します。

そして最後の一つが、スマートフォンに装着して利用する360度カメラです。言わずもがな『ぐるっ撮360°』もここに分類されるのですが、ライバルの筆頭として挙げられるのはInsta360シリーズです。Insta360は今でこそTHETAのような独立型360度カメラに注目が集まっていますが、元はスマートフォンに装着して撮影するタイプのモデルに力を入れていました。

『Insta360 GO』や『Insta360 Air』、『Insta360 NanoS』など、種類も豊富です。一概には言えませんが、Insta360のスマートフォン装着型カメラは機能も充実していて、まともに勝負すると『ぐるっ撮360°』には分が悪いというのが個人的な感想なのですが、全く勝ち目がないわけでもありません。『ぐるっ撮360°』はInsta360に比べて、以下の点で大きくリードしているからです。

リーズナブルな価格

やはり何と言っても、5,000円を切る価格で360度カメラが手に入るのは大きいです。勿論高い金額を出せば高い性能を有したカメラを手に入れられますが、どれくらいのスペックを求めるかは人によって全く異なります。
「初めて360度カメラを購入するから、そもそもそこまでの高機能は求めていない」という人からすればスペックは二の次ですし、安い方が魅力的でしょう。

一方で高機能な360度カメラを探している層は、装着型ではなく独立型の360度カメラに流れていく傾向にあります。スマートフォンのカメラで満足できない人が、デジタル一眼レフやミラーレスを購入するのと同じような心理かもしれません。装着型の360度カメラ市場は、そういう隙間産業的な存在でもあるので、『ぐるっ撮360°』が入り込む余地は十分にあります。

スマートフォンの形状を大きく変えない本体

『ぐるっ撮360°』の本体も魅力的です。Insta360のスマホ装着型カメラは、画質を向上させる代わりに、レンズなども独立しており、スマートフォンから大きく飛び出す形で装着しなければいけないものが主流です。言うなれば、スマートフォンの容量とバッテリーだけを借りて、独自のレンズで撮影するようなものです。

そのお陰で高画質な写真や動画の撮影を実現している反面、ビジュアル面ではマイナスに働いてしまっています。スマートフォンに装着したままポケットに入れたりカバンにしまったりするのはちょっと手間ですし、そうかといっていちいち付け外しするのも面倒です。

対して『ぐるっ撮360°』は、元々のスマートフォンのレンズを広角に変えるようなイメージなので、出っ張りも最小限に留めています。取り外しをせずとも、付けたままで一日中自然に過ごせるような設計はユーザーにとても親切ですね。

出先で取り外すのも大変そうですし、部品も多くなりそうだからこそ、こういった面に気を配ったのかもしれません。そういった、低価格カメラでありながらユーザーファーストであることを忘れないデザインからは、国内メーカーの心遣いのようなものが感じ取れます。

Insta360と『ぐるっ撮360°』、そしてそれ以外のスマートフォン装着型360度カメラ。それぞれに強みと魅力があるので、最後は買い手が何を重視し、何に惹かれるのかが重要になりますが、今後のシェア争いには注目ですね。

終わりに

いよいよ発売が目前に迫っている『ぐるっ撮360°』ですが、市場がどのような反応を示すのか、非常に興味深いところです。知名度の面で言えばまだまだ弱いかもしれませんが、だからこそこれは購入のチャンスかもしれません。発売後にちょっとしたブームになる可能性もあるので、気になった方はお早目に予約することをオススメします。

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