熱気はそのままに体験する阿波踊り。徳島をVRで覗く「踊る阿呆」
阿波踊りと言えばその名の通り、阿波を発祥とする踊りのことで、現在の徳島県に位置する場所から広がった盆踊りを指します。私はこの目で実際の阿波踊りを見たことがあるわけではないのですが、これからはどこにいてもリアルな阿波踊りを見て、体験できるような時代が訪れるかもしれません。今回はそんな予感を抱かせるサービス、「VR阿波踊り」をご紹介します。VRに馴染みがない人も、阿波踊りを見たことがない人や、逆に大好きな人、全員が楽しめるコンテンツとなっているので必見です。
本記事の内容
日本の伝統芸能、阿波踊り
日本人であれば阿波踊りの名前くらい、一度は聞いたことがあると思います。日本三代盆踊り、四国三大祭りの中でも代表的な存在である阿波踊りは、日本を代表する伝統芸能です。その歴史は相当古く、始まりは400年前だとされています。江戸時代から脈々と続いている阿波踊りの歴史をまずは見ていきましょう。
阿波踊りは毎年一回、決まった日に踊られると思われがちですが、実はそんなこともありません。かつてはそうだったのかもしれませんが、ある時期を境に阿波踊りの自由度が増したのです。その理由は改暦です。明治5年に改暦が行われたことをきっかけに、お盆の時期が曖昧となり、それが阿波踊りにも影響を与えました。
元々お盆に開催されるものであった阿波踊りは、旧暦のお盆に開催する場合、新暦に合わせる場合、他にも月遅れや週末、果ては任意の日付に開催するなど、地域によって差が出てくるようになりました。こうしてみると「どうしてもこの時期に踊らなくてはいけない」という圧力が存在しなかったのも、阿波踊りの広がりを助長したのかもしれませんね。
当然そうなるにつれて、阿波踊りとお盆の関連性も薄くなっていくのですが、結果的にはそれが阿波踊りの普及に貢献した面もあります。また、阿波踊りという名前ではありますが、開催される場所も阿波以外に広がっていくこととなります。
今では東京都でも大規模な阿波踊りイベントが開催されるようになり、徳島の伝統芸能でありながら、国民的な踊りにまで成長したのです。今後は日本全土に留まらず、世界にも阿波踊りが広がっていくかもしれませんね。
阿波踊りを体験できるVR
そんな阿波踊りをVRで体験できるコンテンツが登場しました。場所は徳島市にある「阿波おどり会館」で、本格的な阿波踊りをアトラクション感覚で楽しめます。VRで体験できる阿波踊りの映像は2019年の8月に開催された実際の阿波踊りで、映像は4Kのスペックを有する360度カメラで記録されたものを使用しています。
体験者は3種類用意されている映像の中から一つを選び、ヘッドセットを装着してVR体験をします。時間は短いもので2分、長いもので4分ほどとなっています。混雑していなければ、全ての映像を体験してみたいですね。「阿波おどり会館」の入場料は一般が300円、小学生以下は無料です。
映像は外国人も楽しめるように、日本語の他、英語、中国語、韓国語にも対応しています。VR映像で予行演習をした後、本物の阿波踊りを体験すれば二倍楽しめそうです。VR動画で細かい動きを間近で観察することができるのも嬉しいポイントです。踊りたいけれど動きが分からないし恥ずかしい、という方は、是非このVR映像を参考にしてみてください。
伝統芸能をVRにする意義
今回のように、伝統芸能をVRコンテンツとして発表することには様々な意義と意味が存在します。それらは企業にとっても個人にとっても大きな価値をもたらすものですが、いくつか具体例を考えてみましょう。
周知としてのVR
伝統芸能を周知する上で、VRは有効な手段です。データとして存在するものなので、海の向こうの人や地域にも簡単に届けられますし、存在を知ってもらうことができます。北海道に住んでいたら知れなかった沖縄の伝統芸能も、ヘッドセット一つで体験できるわけですから、その周知能力は相当なものです。
観光PR
人に知らせる力や届ける力が強いVRコンテンツは、観光PRにも向いています。この記事でご紹介している阿波踊りVRなどは、まさにそういった使い方の一例ではないでしょうか?
また、VRコンテンツの凄いところはそれだけではありません。VRという手段がPRの役割を果たすと同時に、一つのコンテンツとしてそれ自体が集客力を持つのです。ポスターやCMを作るよりも効率的で、尚且つ経済的でもあります。
時期に関係なく体験できる
一度VRコンテンツとして作成した映像は、当然通年で楽しめます。シーズンオフや仕事の休日、住んでいる場所などにも左右されることがないので、とにかく自由度が高いです。
VRコンテンツの中にはYouTubeのような動画サイトで無料公開されているものもあるのですが、そういうものであれば、ネット環境とヘッドセットさえあれば、それだけで完結します。
技術の記録
360度カメラで撮影された映像を体験できるVRは、技術の記録にも役立ちます。過去には以下のような試みも行われています。
伝統芸能を技術で後世に残す。人間国宝も協力する一大プロジェクト
上記は複数の4Kカメラを駆使して一枚の広角映像を作り出すプロジェクトで、人間国宝の野村万作さんも協力しました。VRでも同じように、様々な角度から技術の記録を行うことができるので、記録映像作りとの相性は抜群です。
後世への継承
能や歌舞伎、踊りなど、伝統芸能と呼べる技術は後世に託す価値があり、それは現代を生きる人々の使命でもあります。高い精度で記録し、作成されたVRコンテンツは後世への技術継承に必ず役立つはずです。
VR映像は教材としての力も発揮してくれるので、紙面や口頭で教わるよりも大きな成果が期待できます。また、周知の部分と重複しますが、距離の影響を受けないので、全国にいる人を対象に指導を行えます。
上記は一例で、伝統芸能の種類や環境によっては、更に多くのメリットが考えられるかもしれません。
VRが地方を救う鍵になる
日本にはまだまだ我々が詳しくは知らない伝統芸能や行事が存在します。そういった出来事を阿波踊りのように360度カメラで撮影し、VRコンテンツとして配信すれば、一つの観光資源として機能するのではないでしょうか。
どれだけ素晴らしい行事や祭事であってもそれが知られていなければ集客材料にはなりませんし、いずれは廃れていってしまいます。そんな悲しい結末を防ぐ上で、VRは一つの鍵になるのではないかと思います。
まだまだVRや360度カメラというガジェットの認知度が行政単位では不十分だからこそ、新鮮さを演出することも可能です。今後は全国で様々なVRコンテンツが増えていくかもしれませんが、それに合わせてVRコンテンツ巡りを目的とした旅も流行るかもしれません。
北海道では実際にそういったコンテンツが既に登場していますし、そのことについて当サイトでも過去にご紹介しています。
VRで旅行のプランニング。北海道の絶景を家でも楽しめるサービス
都内一局集中が問題視されている今の状態を打開するためには、色々な試みが必要になってきますが、その上でVRは重要な役割を担うことができると思います。北海道以外でも、どのように今後活用されていくのか、とても楽しみですね。
終わりに
阿波踊りは日本が誇る伝統芸能ですが、それがVRという形で体験できるのは非常に興味深いことです。日本には他にも魅力的な伝統芸能が沢山あるので、そういったものもVR体験できるようになったら、伝統芸能もVRも、両方が盛り上がるのでは無いでしょうか。日本人だけでなく、訪日外国人に対しても有効なアプローチですし、我々が海外に行ったとき、同様のコンテンツがあっても楽しめると思います。
スポンサーリンク