リコーTHETAにビジネスモデルが登場。製品概要や機能を紹介
リコー株式会社が製造、販売している360度カメラシリーズ「THETA」は国内外を問わず人気を集めていますが、今回同シリーズに新たな動きがありました。これまでは一般の消費者も法人も同じTHETAを使っていたのですが、何と新しく、THETAのビジネスモデルが登場しました。通常モデルとの違いや、どのような法人を対象にしているのかなど、気になる部分を徹底的に掘り下げていきます。
本記事の内容
ビジネス利用に特化したTHETA
新たに販売されることになるビジネス向けTHETAには、「RICOH THETA SC2 Business」という名前が付けられています。
予定では2020年の3月中旬から発売されることになっており、カラーはグレーと、とてもシックな仕上がりになっています。その名の通りSC2 BusinessはTHETAのエントリーモデル、SC2をベースにして作られています。そのため静止画や動画を撮影する際の画質もSC2と同じで、基本機能面での大きな変化は見られません。
ただしBusinessと名付けるだけあって、違いも存在します。その一つが「room」と呼ばれる機能です。これは室内・車内など、光量が限られている現場で撮影を行う際、HDR撮影の設定ができるプリセット機能です。「room」を使用中は、フロントレンズとリアレンズで時間差(Time Shift)をつけてシャッターが切れる、セルフタイマー機能も使えるのが大きな特徴です。
この機能を利用すれば、特定の空間を撮影する際に、撮影者の写り込みを容易に回避することができます。一般利用であれば記念撮影や人物撮影など、人が写っている写真を撮る機会の方が多いかもしれませんが、極力無駄なものを写り込ませないようにするビジネスユースでは、この機能はかなり役立ちそうですね。
ただしSC2と変わったマイナス部分もあります。SC2に搭載されていた顔モード、夜景モード、車窓モードといった撮影スタイルが、SC2Businessでは使えなくなっているのです。もっとも、ビジネス特化モデルなので、仕事として撮影する分には使わない機能ですし、備わっていなくとも問題はないと思います。
スマートフォンとの接続もBluetoothを介して簡単に行えるので、撮影したデータを出先ですぐに転送できます。他にも、無線LANによる接続であれば、ライブビュー表示や画像転送などの操作も可能なので、パソコンなしで全ての作業を完結させられます。既に予約受け付けは開始されており、価格は税込みで39,800円となっています。
THETA360.bizとの併用にも期待
ビジネス向けのTHETAと聞いて、真っ先に思い浮かんだのがTHETA360.bizとの併用です。同サイトはリコーが提供しているビジネス向けクラウドサービスで、360度コンテンツの制作・公開が簡単に行えるのが魅力です。
当然THETAとの相性は抜群ですし、プラットフォーム自体も360度カメラを用いたビジネスコンテンツ制作を支持しているので、ストレスフリーでコンテンツの制作ができてしまいます。
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こういった流れから推測すると、リコーの今後の戦略として、ビジネスシーンでの需要をかなり重視しているのかもしれません。企業は自社のコンテンツや商材を手軽に、それも魅力を最大限に引き出しながら発表することができますし、リコーとしてもそれによってTHETAの露出が増えるので、互いに利益のある関係性を築くことができます。
それにTHETAは日本の360度カメラ市場のパイオニアとも呼べる存在で、業界の中でもかなり大きなシェアを誇っています。最近でこそ他社も様々な360度カメラを発表していますが、それでもリコーの人気は圧倒的です。それに合わせてビジネスシーンともなればブルーオーシャンなので、早い段階で環境や製品を整えられたリコーの体制は盤石なものとなっています。
今後は企業の360度カメラ利用と、THETA360.bizによる発表を目にする機会が更に増えていくかもしれません。3月以降もそういったニュースがあれば、当サイトでも積極的にご紹介していきます。
SC2 Businessとマッチする業界
SC2 Businessは法人に特化している機種ではありますが、あらゆる企業や業種にマッチするというわけではありません。ではどのような業界であれば360度カメラの恩恵を最大限に受けられるかを考えてみると、一例としては以下のような業種が挙げられます。
不動産業界
当サイトでも不動産業界が360度カメラを利用しているニュースを何度か取り上げていますが、やはり空間を紹介、販売する業界と360度カメラの相性は抜群です。
360度THETAで物件を撮影して早期売却!みずほ不動産販売(株)でVRステージングを採用
内見は自宅で!VR利用で広がる不動産の新しい仕組み
物件の撮影を行う際、撮影者を写り込ませたくないような場面では「room」が活躍しますし、室内撮影ではHDR撮影がマストですから、かなり使い勝手がいいのではないでしょうか。既に360度カメラを導入している不動産会社でも、Businessに買い換えるメリットは十分あると思います。
自動車業界
空間を見せて販売するという意味では、自動車業界も共通します。車内の内装や外観、どちらの撮影も360度カメラがあれば手軽に行えますし、サイト上に掲載するのも簡単です。物件の内見はVRで済ませるという人も増えてきていますが、今後は車の購入もVRや全天球画像で、というのが常識になるかもしれません。
宿泊業界
一休が「THETA 360.biz」を導入。観光資源や施設の宣伝に
宿泊業界と360度カメラの相性も紹介しておかなければなりません。上記の記事では宿泊サイトの一休が、360度カメラを活用している様子をご紹介しています。ホテルや旅館の外観だけでなく、客室や周辺施設、大浴場などを紹介する上でも、360度カメラは役立ちます。
「客室の写真は綺麗だったけど、実際足を運んでみたら思った以上に古めかしい雰囲気だった」ということは誰もが一度は経験したことがあると思うのですが、360度カメラによる施設紹介であれば、その心配もありません。今後は、全天球画像による施設紹介の有無が、宿選びの基準になるかもしれません。
上記は本当に一例で、他にも360度カメラと相性のいい業界はたくさんあります。紹介したい空間や場所があったり、平面画像では伝えられない魅力的な被写体を扱ったりしている業界であれば、THETAは必ず活躍してくれる全天球カメラなので、その活かし方を考えてみるのも面白そうです。
THETA Vとの住み分け
これまでビジネス利用されてきた360度カメラというと、やはりリコーの製品であるTHETA Vが浮かびます。ハイエンドモデルのZ1ほど高額でもなく、エントリーモデルよりも高いスペックを有していることから、多くの企業や行政での導入実績があり、当サイトでも度々その様子をご紹介しています。SC2はVに比べて更に安価で、尚且つビジネス特化の機能も備えていますが、画質の面ではどうしてもVに軍配が上がります。
プラグインなどを駆使すればVでもビジネス仕様に仕上げることは可能ですが、正直どちらも撮影する上では不自由しませんし、値段やビジネス向け機能を選ぶか、シンンプルな性能を選ぶかの選択になってくるかと思います。SC2 BusinessとTHETA V、二機種の住み分けと市場の評価の部分も、個人的には大変興味深いところです。
終わりに
Insta360やGoProなど、大手競合他社も日々新しい360度カメラを発表していますが、その中でビジネスモデルをリリースするというのは斬新な発想だと感じました。世界的なシェアや認知度だけでなく、日本国内における社会性や実用性といった部分にも目を向けたリコーの着眼点は見事としか言いようがありません。間も無く発売となるSC2 Businessですが、その登場が待ち遠しいですね。
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