3Dデータ収集キット「LiDAR kit」が「CES2020」に出展

筆者:阿久津 碧

パイオニアスマートセンシングイノベーションズ株式会社(以下、PSS)は車両用3D空間データー収集ツール、「LiDAR kit」を開発し、同製品をアメリカで開催された「CES2020」に出品しました。同社はあのパイオニア株式会社の連結子会社に当たる企業ですが、本稿では同社製品LiDAR kitの使い道や概要などを中心にご紹介していきます。主に法人向けの製品ではありますが、その技術が上手く使われれば、我々の生活にも大きな変化をもたらすことになるかもしれません。


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乗用車に後付けできる3D情報収集ツール

PSSが今回出展したCESとは、ラスベガスで開催された世界的にも有名なテクノロジーの祭典です。各国から様々な製品のプロトタイプや最新モデルが出展され、多くの企業関係者が足を運びました。そんなCES2020にはPSS以外の日本企業も出展しており、360度カメラに関連する製品も多くの人々の目に止まりました。日本でも大成功を収め、海外でもドライブレコーダー市場を開拓しようと試みている株式会社カーメイトも、360度カメラ搭載型ドライブレコーダー「ダクション」シリーズを出展しており、その技術力の高さに世界中が興味を示しました。

同製品は日本のカーナビ業界を大きく変え、昨今話題となった煽り運転問題などの影響も強く受けて、瞬く間に市場に受け入れられました。ドライブレコーダーとしてだけでなく、アクションカメラとしても活用できる発想は、まさに革新的です。

「全天球ドライブレコーダーの登場で、車社会はどう変わるのか – Wrap」

一方、PSSが出展したLiDAR kitは試作モデルですが、こちらもアイディアはとても興味深いです。乗用車用製品で車のルーフに後付けするのですが、簡単な取り付けと、面倒な調整作業を必要としないところを売りにしています。ルーフに取り付けられたLiDAR kitは、周辺に存在する物体の位置、距離、形などを把握します。正確に記録したそれらのデータを基にして、3D空間データとして記録できるところがこの商品の強みで、完成したデータでは道路の凹凸や路面標識など、かなり詳しい部分まで記録されます。

本体もそれほど大きくはないので、一般的な営業用車両やセダンタイプの車であれば、容易に取り付けられる上、見た目も自然です。今回出展された試作モデルでは、前述した株式会社カーメイト「d’Action 360 S(DC5000)」がカメラ部分に使用されているのですが、高い記録力が求められるドライブレコーダーを採用するというのは、見事な発想でした。

3D-LiDARセンサーとカメラ、GNSS(全球測位衛星システム)を一体にしたハードウェアと、物体認識や位置推定、差分抽出を行なうソフトウェアアルゴリズムをセットにしたトータルソリューションによって、正確な3Dデータの作成を実現しているそうですが、様々な使い道が考えられそうですね。

「LiDAR kit」の使い道

本製品の性能やアイディアは面白いですが、実際企業が導入するとなったとき、どのような使い道があるかを具体的に考えていきましょう。

カーナビの更新

車に搭載されているカーナビは、時間経過と共に情報が古くなっていきます。新しい高速道路ができたり土地開発が進んだりすることで、ドライバーはデータを更新する必要が出てきますが、そのためにはまず、企業側が地図データの収集を行わなければいけません。

LiDAR kitは取り付けも簡単で、ただ道路を走るだけで情報収集を進めることができるので、コストもかからず、精度も確かです。道路標識などの細かい情報も漏らさず記録できるので、カーナビや地図を作っている企業とは相性が良いのではないでしょうか。

マーケティング用データ収集

「店舗を出したい」、「イベントを行いたい」などの企画や要望が上がったとき、周辺情報は重要です。せっかくイベントを開いても、車で来にくいような場所だと中々人は集まりませんし、民家や住宅街が密集している場合は、騒音にも注意しなければいけません。

店舗経営を始める場合も同様で、客入りが見込めそうな立地か、競合店舗はいくつあって、規模や客入りはどれくらいかなどの事前調査がかなり大切です。そういったマーケティング関連の情報を収集する際にも、LiDAR kitのようなデータ収集ツールは役立つでしょう。

アプリ開発

どのようなアプリケーションを作るのかにもよりますが、リアルな地図データや3Dデータを活用するゲームアプリなどであれば、LiDAR kitが役立つかもしれません。有名なところで言えば、爆発的に流行った「ポケモンGO」が挙げられます。このアプリは実際の地図データとリンクさせながら遊ぶことができたので、老若男女を問わず人気を集め、アメリカではダイエットブームも巻き起こしました。

そこまで広大なエリアを要するアプリであれば、ポケモンGOのように既存の地図データを利用すればいいですが、特定の地域や観光地、名所などを舞台にする開発を行う際には、LiDAR kitの出番です。正確な3Dデータ収集を行うことで、クオリティアップに繋げられるかもしれませんし、立体的なコース造りにも活かせます。アプリだけでなく、実際の町並みをベースにしたステージが登場する、パソコンゲームなどの開発にも役立てられそうですね。

道路管理、点検

道路は時間が経つごとに削れていくので、定期的な補修作業が必要です。冬場など、チェーンが必要な地域では、道路の破損具合も大きくなるので、雪のない地域以上に深刻な問題となるでしょう。LiDAR kitは3D空間を作り出せる以外に、細かな道路の凹凸まで検知することができるので、道路管理に利用することができます。

高速道のような、人が車から降りて目視するのが難しい場所でも、車を走らせるだけで情報収集ができるので、安全面でも申し分ありません。損傷具合に関係なく、定期的に全ての道路を補修するのではなく、こういった方法でピンポイントな作業を行えれば、コスト面でも大幅な改善が見られるかもしれません。

様々な地図データ作成ツール

LiDAR kit以外にも、地図データを作成できるカメラはいくつか存在します。当サイトでも過去にその一部をご紹介していますが、Insta360などはその先駆けだったと思います。

「自分の車をGoogleカーに!Insta360を車に乗せてGoogleカーを作ろう – Wrap」

ルーフにプロモデルのInsta360を取り付けることで、簡易的なグーグルカーを作るというアイディアですが、高精度なステッチングを実現している業務用360度カメラによる撮影はかなり本格的です。

他にも、3Dマップを作れる製品もご紹介しました。

「未来の測量。全天球カメラを使った高精度の3D地図作成が実現 – Wrap」

上記の記事では岩根研究所が開発した、3Dマップを作れるデータ収集ツール、通称IMSをご紹介しています。車のルーフに取り付けるなど、基本的な仕組みはLiDAR kitと同じです。様々な可能性を秘めている地図作成技術ですが、360度カメラの性能が上がることで、その精度も付随して上がることが期待できます。そしてそれによって、別分野の研究も飛躍的に向上するかもしれません。技術の進歩を果たす上で重要な役割を担っている360度カメラの進化に、今後も注目していきましょう。

終わりに

地図を3D情報として収集できることによって得られる恩恵は、我々が考えている以上にたくさんあります。その中でも特に夢があるのは、やはり自動運転化技術の実現ではないでしょうか。360度カメラはその夢のようなテクノロジーを実現する上で、まさに不可欠なツールです。今後も順調に画質や撮影能力、データ収集技術が向上すれば、自動運転化の実現は意外とすぐそこかもしれませんね。


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