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聴いても見ても動かしても楽しめる360度カメラで撮影されたMV

好きなアーティストが新曲を出したら、それを聴くのも勿論喜びですが、一緒に公開されるMV(ミュージック・ビデオ)を見るのも楽しみですよね。アーティストが出演しているタイプのものや、ドラマやアニメ仕立てなど、楽曲の個性や世界観が反映されるのがMVです。そんなMVも、これからは見るだけでなく、動かして、体験するのが主流となるかもしれません。


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360度MV

海外を中心に今注目を集めているのが、360度カメラで撮影された全天球MVです。従来のMVは平面的な映像だったので、テレビ画面やパソコン画面で視聴するしかありませんでしたが、ところが今、360度カメラの登場により、この常識が変わろうとしています。360度カメラで撮影された映像は、VRに対応しているものであれば、ヘッドセットを通して立体的に体験できます。その感覚は平面的な画像とは雲泥の差で、自分も登場人物の一人か、あるいはカメラマンとして実際の現場に降り立ったような没入感を味わえるのです。

VRヘッドセット自体は様々な価格帯のものが展開されていますが、安いものであれば数百円でも売られているので、簡単に手に入れられます。今後MVに限らず、無料で楽しめるVRコンテンツが増えていくことを想定すると、一家に一台。いや、一人一台持っていてもいいかもしれません。音楽プロデューサーとしても有名なスウェーデン出身のアーティスト、AviciiもVRMVを制作しました。グラミー賞にも二度ノミネートされたことのある彼は、2018年に急逝してしまいましたが、MVの中では本人の動いている様子も数秒見られます。

Avicii – Waiting For Love (360 Video) – YouTube

※本人は1:15~、左から2番目の扉より登場。VRヘッドセットがなくても、マウスでドラッグしながら画面を動かすと、360度映像を楽しめます。

他にも試しに「360度 PV」や「VR MV」などのワードでYouTubeに検索をかけてみると、日本でも倉木麻衣さんやモーニング娘。などが公開しているVRMVがヒットします。アイドルやKPOPなど、アジア周辺でも注目されているようなので、今後は更に数が増えていくかもしれませんね。

MVとPVの違い

アーティストの楽曲に付随して作られる映像には、MV(ミュージック・ビデオ)とPV(プロモーション・ビデオ)の二種類がありますが、両者は似ているようで微妙に違います。MVは楽曲に合わせて作られるもので、冒頭で述べたように、音楽の世界観や表現したいことを補完する目的で制作されます。音楽だけで楽しんでもいいけれど、一緒にMVも再生することで、より一層曲に対する理解が深まったり、音楽にのれたりするといった感じですね。

対するPVはプロモーションを目的としているので、限られた時間の中で音楽の魅力を伝えられるような仕上がりとなっています。バラエティや音楽番組の中で新曲を宣伝する場合、MVを丸々流すわけにはいきませんし、通常は15秒、長くても30秒程度の宣伝時間が与えられるだけです。その時間に合わせて、ワイプのような形で一緒に流されるのがPVの主な使われ方です。

他にもテレビCMやCDショップに置かれているテレビなどでも流されますが、PVと比べると、格好よさやキャッチーさ、勢いなどが重視される傾向にあります。今までMVとPVの違いを曖昧に理解していた方も、これを機に使い分けてみることで、ちょっと音楽通らしくなれるかもしれません。

SNS時代のマーケティング

プロに限らず、インディーズやアマチュアのアーティストでも、SNSを活用すれば自分自身を誰でも気軽に、低コストで売り出せるようになりました。SNSで発見されてデビューするようなアーティストや作家、デザイナーや漫画家も増えており、エッセイ漫画などは一ジャンルを築いたほどです。それくらいSNS時代のマーケティングやセルフプロモーションには夢があるわけですが、音楽業界の場合、自作MVも武器の一つになるのではないでしょうか。

予算がなくても、360度カメラさえ用意すれば、誰でもカッコいいMVやPVを撮ることができます。高いものを買おうとすれば数十万、数百万単位になってしまいますが、最近の360度カメラは、エントリーモデルであってもハイクオリティの動画撮影が行えます。日本のメーカーではリコーが出しているTHETAシリーズが有名ですが、操作も簡単で、ハイエンドモデルでも10万、ミドルレンジであれば5万円くらいで購入できるので、360度カメラ初心者の方にもオススメです。

衣装や演出に固執せずとも、ただスタジオで収録している風景をMVにするだけでも、没入感があるので楽しめます。このように、平面的な映像だと味気なかった動画でも、たちまち魅力的な動画に変えてしまうのが360度カメラの強みです。プロのアーティストに愛用されるのは勿論のこと、今後は自作の360度動画市場も活発になることが予想されます。技術が安定していくことで、そのうちプロ顔負けのMVも沢山出てくるかもしれませんね。

アーティストに広がるVR旋風

現在世界的に流行しているコロナウィルスの影響を受けて、様々なイベントやアーティストのライブは大打撃を受けています。政府による正式な自粛要請もこの状況を後押ししています。とは言え、濃厚接触を避ける意味ではこの判断も仕方がないですし、無理にライブやイベントを敢行することで、大規模な感染事故を引き起こす恐れもあるので、耐えるしかないのも事実です。

しかし中には無観客ライブを行い、その様子をSNSサイトや動画サイトに配信することで、ファンにパフォーマンスを届けているアーティストもいます。その中には、VRライブという手段を取ったグループもありました。この方法であれば、ファンは感染のリスクを完全に防ぎながらも、アーティストと間近で触れ合っているかのような感覚で映像を楽しめます。

自粛ムードが広がる今の状況は、出かけられない人々や、大規模なイベントを実施できない主催者、双方にとっては苦しい一方、VRや360度カメラという別の選択肢に目を向けるきっかけとなったのかもしれません。

新しいCD特典としてのMV

歌手やアーティストの間で注目を集めているVRMVですが、今後更に制作が活発になる中で、CD特典としての役割を果たす可能性もあります。本にしろCDにしろ、全体的に消費が落ち込み、中々買われなくなっているのが今の流れです。音楽はダウンロードするのが当たり前ですし、酷い場合では海賊版や違法ダウンロードといった犯罪手段を取る人も存在します。

そんな消費傾向の波を変えるために、VRMVをCDの特典とするのは面白いのではないかと思いました。一昔前だと、アイドルが握手券をCDに同梱するといった商法が流行りましたが、それよりも健全な気がします。アルバムの初回限定版に、MVを収録したDVDが付属することはこれまでもありましたが、そのVR版という認識です。住み分けとしては、例えばYouTubeの公式チャンネルには通常のMVを公開し、CDには360度版を収録するなどの方法が考えられます。

アルバムを買わなくてもMVは見られるけど、買うことで360度VRのMVを見られるとなれば、コアなファンの購買意欲は刺激できるのではないでしょうか。尤も、そんなことをしなくてもコアなファンはアルバムを購入するとも思うので、中々握手券のようにはいかないかもしれませんが、工夫次第で360度コンテンツには、いくらでもビジネスチャンスがある予感がします。

終わりに

昔からファンだったアーティストのMVの変遷を見ると、その違いにも驚きます。今ならばちょっとダサいと思うような演出も、当時はうけていたのかと思うと、時代の流れも感じられますし、そういう見方も中々面白いです。そして今、MVは360度コンテンツという、次の時代へ進もうとしているのかもしれません。少しずつ手段は変わっていきますが、360度の舞台でも、それぞれのアーティストがどのようにファンを魅せてくれるのか、とても楽しみですね。


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阿久津碧: